
日本代表チーム。左から新井麻衣女子監督代表、前島博之さん、中島梨栄さん、辻結名さん、袖山哲朗さん、渕暢之さん、野尻房男総監督。ユニフォームに身を包むと、心が引き締まる
49歳、チーム最年長の渕暢之さんは、「いよいよだなあという感じです。多少の緊張はありますが、それ以上にようやく本番を迎えられるという充実感があります。焦らず、今の自分を信じて試合に入りたいと思います。コースを回ってみて、難しさよりも『この舞台で戦える楽しさ』が強く込み上げてきました。戦略としては無理をしないプレーを基本にしつつ、ここぞという場面ではしっかり自分を信じて攻めたいです。最後まで集中を切らさず、諦めず、4年前から目指してきたデフリンピックという舞台を無心で楽しめたらと思います。メダルを獲得したいですが、まず難聴者であっても健聴者とそんなに変わらないということや、難聴者がどれくらい音や声に気付いてないのか、見てもらい、気づいてもらいたいです」。
袖山哲朗さんは、選手としてだけでなく、日本デフゴルフ協会の事務局長としての強い想いものぞきます。
「小学生の頃から、関東ジュニアやフィランスロピー障害者ゴルフ大会などで、このコースにはほぼ毎年訪れています。そのため、コース全体のレイアウトや雰囲気はある程度把握しています。しかし、数年前のグリーン改修により難易度が増し、まだ完全に慣れていない部分もあります。改修前はグリーンが軟らかく、速度も遅めでしたが、改修後はプロトーナメント並みに硬く速くなっています。そのため、以前よりも慎重にラインを読み、パッティングを行う必要があります。全選手のなかで私が最も開催コースに詳しいという自負がありますので、この“地元のアドバンテージ”を最大限に生かし、ポジティブな気持ちで大会に臨みます。プロゴルファーの方々も参加するなかで、メダル獲得のためには平均60台のスコアを目指す必要があります。グリーン手前から確実にパーを狙い、無駄なミスを最小限に抑えるよう心掛けます。今後の日本デフゴルフ界のさらなる発展に貢献できるよう、全力を尽くして頑張ります」
ろう学校の教師でもある前島博之さんは、「いよいよ本番が近づいてきて、気持ちが引き締まっています。ここまで積み重ねてきた準備をしっかり発揮できるよう、落ち着いて、自分のプレーに集中したいと思っています。不安よりも楽しみの方が大きく、良い緊張感のなかでスタートを迎えられそうです。コースはフェアウェイのうねりが強く、風の影響も出やすい印象でした。精度の高いショットと、無理をしないルート選択が鍵になると思います。特にアプローチとパッティングでしっかり流れを作れるよう、攻めるところと守るところを明確にしてプレーしたいです。ただ参加するだけではなく、メダルを目指して最高のパフォーマンスを発揮したい。自分の持っている力を最大限に引き出し競技に臨むことで、他の選手に刺激を与えられる存在になりたいと思っています。ゴルフは感覚的な要素が強いスポーツですが、それをどのように乗り越えて、最高のパフォーマンスを出しているのかを見ていただければ。また、視覚的なサイン(手話)や仲間同士での連携の大切さにも注目してほしいです」。
日本大学のゴルフ部にも所属する辻結名さんは、「いつも通りに頑張ります。金メダルを取ることが目標、風に負けないように頑張ります」。
デフフットサルで日本代表経験がある中島梨栄さんは、「まだ競技経歴は浅いですが、きっとこの4日間は、とても濃くて大きな経験になると思っています。今回の大会は、私にとってここからが本当のスタートだと感じています。支えてくださった皆さんへの感謝を胸に、自分らしく全力で戦います。若洲は花道付近がかたく、ボールが止まりにくいコースだと感じています。自分の強みであるアプローチを武器に、無理をせず堅実にスコアを作るゴルフを心がけます。目の前の一打を大事にして、焦らず確実に。目標は、8位(入賞)以内。経験の浅い私がどれだけ挑戦できるかを見てほしいです」。
野尻房男総監督は、「デフゴルフは初めてデフリンピックに参加します。昨年の世界選手権、男子の団体戦ではこれまでは初めて銅メダルが取れました。史上最強のメンバーとして仕上がっています。自国開催の地の利を生かして、メダルを期待しています。選手の皆さんはこの日のために血のにじむような練習を重ねて努力をしてきたので、ここまでやってきた成果を出してくれることを期待したいです。ライバルは、プロゴルファーがいる国。特に女性はインドやフランス。男性はアメリカやドイツ、カナダが強いです」。
新井麻衣女子監督代表は、「19歳の辻井選手はすごくフレッシュで、ジュニアの大胆さと大人の堅実さをいいバランスで持っています。攻めるときは攻めるし、守るときは守る。中島選手は、昨年までやっていたフットサルから転向されて、この半年間、ラウンドするごとにベストスコアが出ています。毎日昨日の自分に勝つことをしていった結果、メダルを取れたらいいですね。団体戦では、男子選手のダイナミックな飛距離に女子選手の繊細なアプロ―チやコントロールショットが絡んだときにビックスコアが出るのではないかと思っています。若洲の風とグリーンの難しさに負けないように頑張ってほしいですね」。
若洲ゴルフリンクスも観戦は無料。ぜひ、足を運んでみようではないか!
撮影/小林司



