
“飛ばし屋”たちの始球式。それぞれ自分で工夫し作り上げてきた美しいスウィング
今年2回目の参戦となった2人の“成長ぶり”を紹介しよう。

コースで輝く宝石、山本あいさん。スウィングはとにかく豪快。思い切りよい振りが気持ちいい
山本あいさん(ダウン症)は、今回もおしゃれなウェアに身を包み登場。関西万博のイベントで著名デザイナーのモデルを務め、そのときの衣装をゴルフウェアに作り直したものだという。ラウンド後は「楽しかった!」と満面の笑み。昨年よりスコアが10打縮んだのだ。「この1年間練習してきた成果です。ずっと親子2人でラウンドすると息が詰まる部分もありますけど、DGA(日本障害者ゴルフ協会)の関西メンバーさんたちが、練習ラウンドに付き合ってくれて、『ゴルフを親子で楽しむ』から『ゴルフを自分で楽しむ』にもなってきました。実際、方向性の確認もしっかり自分でやっていましたから!」と嬉しそうに母は語る。

心からゴルフを楽しむ宮本晃輔さん。「昨年病気で倒れたとき、この会の仲間を見て“皆すごいな”と思って頑張ってます」
宮本晃輔さん(左右上肢を欠損)のスコアはこの日92。昨年は「軽く100越えしていた」と笑う。
「昨年3発入れた池も1発で越えて、昨年の自分を越えることができました!」
障害者ゴルフを広めるために始めたSNS で発信し続けた活動が注目され、テレビ番組の企画で元プロ野球選手の鳥谷敬氏とラウンド。「昨年の自分では考えられない経験ができました。障害者ゴルフに出合えてよかった。日々前向きになれています」とゴルフがある毎日を楽しんでいる。目標は徐々に大きく、「上肢障害の部で優勝し、グランプリの部を目指し、世界大会に出たい」。

スペインのポスティゴ。絶妙にバランスがとれたスウィング。軸がブレないから、すべてのプレーが安定している
優勝争いは、ポスティゴがさすがの実力を見せ、この日唯一のアンダー、71でラウンド。6打差で追う吉田隼人は、「やっぱり上手いです。でも僕も、ドライバーの調子は悪くないですし、パッティングのタッチがもう少し合ってくれば……。それでも日本で一緒にこうして戦えるのは楽しい。最終日は同じ組で回るので、勉強させてもらいながら、1打1打詰めていけるように頑張りたいです」。

ポスティゴと同組で回り「飛んで曲がらず素晴らしい。僕も義足を外してみようかな」という小林英喜さんのスウィングも美しい
義足を付けずに左足だけで打つポスティゴのスウィングに、義足ユーザーのゴルファーたちは興味津々。「何かヒントが隠れているはず」「確かに義足が邪魔になることがある。外してプレーすることもありなのかもしれない」と食い入るようにそのプレーを見る姿が印象的だった。

現在の日本のトップランカー吉田隼人プロ。ポスティゴを上回る飛距離で、その後姿をとらえていく
ここにいるゴルファーたちは皆、常に向上心を持ち続けている。その積み重ねが、大きな成長につながっているのだと感じさせられた。
撮影/増田保雄
