
飾らない彼女の一面がわかる会見での一コマ(PHOTO/Getty Images)
「私は皆さんと変わらない人間」――勝利と孤独の狭間で
ジーノは、世界ランク1位を初めて獲得した時と変わらず、「私の人生はまだ同じだと思います」と語る。しかし、この1年間は決して平坦ではなかった。
彼女のキャリアで最も印象的な瞬間の一つとして語られたのは、試合後のダラスでの出来事だ。
「ゴルフに関しては、クローガー クイーンシティ選手権の後、ダラスに戻ってきた日を覚えています。あまりにもひどく泣いたので、目にアイスパックを当てていました。それは覚えています」
しかし、彼女は自らに言い聞かせる。「そして、喜んで写真を撮り、それを掲げている自分。変ですが、人生の幸せな日に到達した、あるいは幸せな日を迎えるとき、この日は必ず来る、悲しい日は必ず来ると自分自身に思い起こさせたいのです」。キャリアでの浮き沈みも、「それはあなたが誰であるかを定義するものではありませんし、ジーノとしての私を定義するものでもありません」と、達観した人生観を持っている。
「喜んで写真を撮り、それを掲げている自分」【ジーノ・ティティクル公式インスタグラム】
精神的なリフレッシュとして、シーズン中に訪れたカナダ・バンフでの休暇が転機となったという。
「あれは転機だったと思います。バンフとルイーズ湖でほぼ一週間過ごし、周りにたくさんの美しいものがあること、そして感謝すべきことがもっとたくさんあることに気づきました。後悔するような悪いことだけでなく、人生にはもっとたくさんのすべきことが周りにあるんです。部屋に座って考えすぎるだけでなく」
その休暇中には「ゴルフクラブを持っていく人がどこにいますか? いませんよ。いる人もいますが。プロのゴルファーはしません(笑)」と、完全にゴルフから離れて過ごすことで、心の回復を図った。
バンフとルイーズ湖での休暇【ジーノ・ティティクル公式インスタグラム】
「稼いだら、使って、また稼ぐ」戦略
プロとしての成功は、彼女に経済的な自由を与えた。そのお金の使い方も、彼女ならではの哲学に基づいている。
昨年の優勝で車を購入し、ディズニーに遊びに行ったというエピソードから、「今回の優勝で、何をする予定ですか?」と聞かれると、「間違いなく買い物に行く必要があると思います。頭の中にあります(笑)。稼いだら、使って、また稼ぐというのが戦略です。使わないと、もう稼げなくなるかもしれません」
もちろん、稼いだ賞金の一部は「両親に渡さなければならない」と語るが、自身への投資や消費も厭わない。この、ネガティブな要素を一切含まない、ポジティブな循環を意識していることが、彼女のゴルフへの飽くなきモチベーションに繋がっている。
また、彼女の安定した強さの裏には、キャディのバンポット・ブンピサンサリー(通称ゴン)の存在がある。ゴンは彼女にとって、単なるキャディではなく「このトーナメントの私のラッキーチャーム」だと話す。
「彼の誕生日がいつもこのトーナメントと重なるので、私は毎年プレゼントをあげなければなりません。だから、LPGAさん、日付を変えないでくださいね(笑)」と、ユーモアたっぷりに語った。
さらに、タイのファンから「なぜジーノはキャディを変えないのか。アメリカやヨーロッパのキャディに変えるべきだ」という苦情があったことを明かしながら、ゴンへの揺るぎない信頼を語った。
「私は一度もそんなことを考えたことがありません。なぜなら、彼がバッグを担いでくれることに本当に安心しているからです。彼について悪く言う人がいますが、彼は私が知るなかで本当に最も優しい男です」と、周囲の批判を気にせず、人間性を信じる姿勢を見せた。
また、親友で2位フィニッシュを果たしたパジャリー・アナナルカーンとの関係にも言及。
「前回、韓国にいたとき、私たちは買い物に行きましたが、パジャリーは『私は買い物ができない。集中して良いプレーをしてからでないと、買い物ができない』という感じでした。だから、今、彼女は私と一緒に買い物ができるので、素晴らしいです」と、親友の努力が報われたことを心から喜んだ。
そして、勝利のご褒美は、もちろんパパイヤサラダだ。
「間違いなくそうです。100%です。昨夜リクエストしました。待ちきれません。もう(会見を)終わってもいいですか? 食べたいんです(笑顔)」
ゴルフの技術だけでなく、人生の苦難や喜びを糧にし、周りの人々を大切にする女王ジーノ・ティティクル。この会見だけでも彼女が愛される理由がわかるのではないか。
※2025年11月24日18時12分、一部加筆修正しました。
