構えやすい、振りやすいことが好記録を後押しした
D-1GPの長い歴史の中で初の連覇を達成したGT2。その印象を横田英治プロはこう振り返る。

横田英治プロ。ベーシックでスウィングの芯を的確に突くメソッドで、ツアープロからアマチュアまで幅広く指導。長年D-1GPの試打隊長を務める。千葉北インター至近の総合ゴルフ施設「CLUB HOUSE」を主宰
「2024年大会で初めて見たときは、“えっ? TSR2から変わってないじゃん”って思いました。他のメーカーがいろいろやってくる中で、サイズも形状もすごく似ていたので、最初はテスターの3人(横田プロ、女子プロ、トップアマ)とも、注目度は高くなかった。正直優勝するとは思っていなかったですね。でも、打つと印象がガラッと変わりました。打音が高くもなく低くもなく気持ちいいし、振りやすい。何よりボール初速が断トツ出ていました。ボール初速って飛ばしの最大の要素ですから、これは強いなと。初速性能の高さは他を寄せ付けない感じがありましたね」

「フェース面のデザインこそ変わったけど、外見は大きく前作(TSR2)から変わっていない。でもそのブレなさがタイトリストらしいし、プロにとっては安心」(横田プロ)
この年は、GT2とGT4が決勝で相まみえる同門対決となった(結果は0.4ヤード差でGT2の勝利)。ここからもGTシリーズを通しての初速性能の高さがうかがえる。
そして2025年。横田プロの印象では、他のドライバーの初速性能がGTにやや迫った印象を持ったという。
「人気メーカーのドライバーは、前年より確実に初速アップを果たしてきた印象がありました。僅差の戦いもありました。そんな中でも連覇を達成したGT2の飛距離性能の高さは認めざるを得ません。勝敗は数字(飛距離)で決まるわけですが、そこに至るには人間が感じる見た目や打感・打音、また振り心地といったフィーリングの良さがあります。そういった感性に好影響を与えるモノづくりの姿勢がタイトリストらしさ。逆に言うと、気持ちよく打てることが、好記録につながったと思います。当然、先進のテクノロジーはしっかりと盛り込まれているのですが、それを最大限発揮するための感性を大事にするのがGTシリーズとも言えます」

2025年のD-1GPを振り返る横田プロ
そして、弾道安定性という点でも、GT2の強さを感じたという。
「“飛ばす”大会ですから、テスターも結構振るんです。そうなるとオフセンターヒットも当然出てきます。でもD-1GPは平均飛距離の勝負(7球中ベスト5球を採用)なので、飛距離だけじゃない安定感も大事な性能。D-1GPで勝つということは、一発の飛びだけではなく、ミスヒットでも打球を揃える性能に長けているという証明になります」
高初速なのに食い付く打感。これはやみつきになる
では、改めて横田英治プロにD-1GP連覇を果たしたGT2を打ってもらおう。

GT2の高初速性能は定評がある
「やっぱり初速が速いですね。それなのに打感や打球音は食い付く感じで本当に気持ちいい。プロゴルファーって打感や打音は変えたくない面倒くさい生き物ですが、前作(TSR2)からクラウンの素材が変わったにも関わらず、音の変化が本当に少ない。前作を使っている人もスイッチがスムーズにできるだろうし、高初速だけど食い付く打感というある意味相反する特性を両立しているから、ツアーでの使用者も増えているのだと思います。個人的には、フェースセンターの真後ろにヘッド後方の頂点があるのが非常に構えやすい。そしてその部分にウェイトが装着されていることで、その重さがボールをストレートに押し込めて、飛距離アップにつながる印象になる。ウェイトが左右に振られているものよりも単純に飛びそうな感じがします」

「フェースセンターの真後ろに頂点がある形状がいい。その部分にあるウェイトがボールをもうひと押ししてくれる感覚がある」(横田プロ)

D-1GP連覇のタイトリスト GT2(10度)×デナリ(60 5.5)
そして、センターを外した時の強さも改めて感じたと言う。
「打点がばらついてもボール初速、打ち出し角、キャリー、トータルの飛距離はほとんど変わらない。スピン量が変わった分だけ飛距離が変わる感じです。それも900回転/分の違いでキャリーが6ヤード程度変化するぐらい。本当に平均飛距離が高いところで揃うドライバーですね。D-1GP連覇は伊達じゃないです」
【ショットデータ】
・ヘッドスピード:45.5m/s
・ボール初速:67.7m/s
・ミート率:1.49
・打ち出し角:10.1度
・スピン量:2945rpm
・キャリー:240.0Y
・トータル:274.5Y

「ミスヒットしても、飛距離の落ち込みがとても少ない」(横田プロ)
10度のヘッドを0.75度立てた設定がベスト!
改めてGT2の飛距離性能、弾道安定性を実感した横田プロ。打ったのはD-1GP時と同じスペック(10度・デナリ レッド60 5.5・45.5インチ)だったが、ここからはさらに自分に合うスペックを追求してもらった。
横田プロの理想とするスピン量は2500~2600回転/分。このぐらいが飛距離も出て、安定して飛ばせるのだと言う。これに対して先ほどのスペックだとややスピン量が多かったように見受けられた(それでも大会を連覇したのだからすごいのだが)。

タイトリスト フィッティングスペシャリストの井上博通さん。豊富な経験からショットデータを的確に読み取り、最適なスペックへと導いてくれる
試打をサポートしてもらったフィッティングスペシャリストの井上さんは、「私たちは通常、むやみにスピン量を減らす提案はしません。横田プロが言うように、(スピンが減りすぎると)弾道の安定感が損なわれますから。それでも、もっとスピンを減らしてランで稼ぎたいという要望もあります。特に女子プロなどはそういう傾向が強いですね。でもドライバーの安定、つまりスコアアップのためには、2500~3000回転/分の間を行ったり来たりするのがベストと考えています」と言う。
ということは、D-1GPでのスペックがベストパフォーマンス?
「いや、それでも安定感は維持させつつ、もうちょっと伸ばせそうですね」という井上さんに新たな提案をしてもらった。
【GT2 9度×ベンタス レッド TR 6S・45インチ】
【ショットデータ】
・ヘッドスピード:45.6m/s
・ボール初速:67.9m/s
・ミート率:1.49
・打ち出し角:11.7度
・スピン量:2597rpm
・キャリー:246.7Y
・トータル:280.2Y
「えっ! 僕9度のほうが合うんですか? そしてベンタスも初」という横田プロ。打ってみると、スピン量がやや減って、より強い弾道になった。
「デナリ レッドの数値が非常に良かったので、同じような手元がしっかりして先が走る系のシャフトで、もう少しスピンを抑えられるものを選びました」と井上さんは言う。
「今までは、少しダウンブローに入っていた入射角が、レベルからアッパーにまでなった。9度になったから、ロフトの見え方に反応して、無意識に打ち出し角を上げようとしているのかも。ちょっとそんな感じもするんですよね。ただ、長さも0.5インチ短くなって、すごく振りやすくなりました」(横田)
横田プロは、弾道は満足なものの、ロフトの見え方、そして9度になったことで、フェース面が少し右を向くことにやや違和感を覚えた。
【GT2 10度×ベンタス レッド TR 6S・45インチ】
【ショットデータ】
・ヘッドスピード:45.5m/s
・ボール初速:67.6m/s
・ミート率:1.49
・打ち出し角:12.6度
・スピン量:2703rpm
・キャリー:248.2Y
・トータル:278.9Y
今度は同じシャフト、長さで、ロフトを10度に戻してテスト。見た目に打ち出し角が上がり、スピン量も申し分ない。

「キャリーとランのバランスがいい」と井上さん
「そうですね、キャリーが伸びて、ランも良く出ている。そのバランスがいいですね」(井上さん)
横田プロもこの組み合わせに満足の様子。
「なんかこれが一番飛びそうな感じがしました。10度のほうが安定感もあるし。そう考えると、フィッティングって絶対したほうがいいですね。長さを短くしたのに、距離が伸びるんだから。アマチュアの人って、シャフトを短くすること人すごく抵抗があるんですよね。生徒さんでもすごく多い」(横田プロ)
「でもアマチュアの人ほど、短くしたほうがヘッドスピード、ボールスピードが安定して打点も安定するので、結果として良くなる傾向が強いです。長いと振り切れなくて、逆にヘッドスピードが落ちることも少なくありません」(井上さん)
さらにスリーブの調整によって、0.75度ロフトを立てると(D1ポジション)、これがハマったようだ。

スリーブの調整機能で10度のロフトから0.75度立てる設定(D1)にすると、さらに好結果に
【GT2 9.25度×VENTUS RED TR 6S DATA】
・ヘッドスピード:45.8m/s
・ボール初速:68.1m/s
・ミート率:1.49
・打ち出し角:11.4度
・スピン量:2510rpm
・キャリー:246.9Y
・トータル:280.9Y
「9度よりも10度のロフトを立てたほうが、見え方に安心があります。長さも見た目も振りやすい。これも大事ですね」(横田プロ)
「GT2の10度を0.75度立て、シャフトはベンタスレッド6S、45インチ。ほぼほぼこれがGT2のベストスペックだと思います」(井上さん)
弾道のイメージは「GT3」が一番合う(横田プロ)
GTシリーズのドライバーには、GT2のほかに、GT1、GT3、GT4のヘッドがある。参考までにそれらも同じシャフトでテストしてもらった。
【GT3 10度×ベンタス レッド TR 6S・45インチ】

GT3(10度)×ベンタス レッド TR(6S)
【ショットデータ】
・ヘッドスピード:45.3m/s
・ボール初速:67.1m/s
・ミート率:1.48
・打ち出し角:12.8度
・スピン量:2431rpm
・キャリー:244.4Y
・トータル:277.7Y
「伝統的なドライバー形をそのままサイズアップした印象。個人的にいわゆる洋ナシ形は好きじゃないんだけど、ギリギリ洋ナシ形状ではない、その絶妙さが好きですね。打っても、重心位置が浅めなので、コントロールがしやすいし、フェースのどこに当たったかがわかりやすい。僕は基本的にフェースの近い所に重心があるほうが振りやすいと感じる昭和のゴルファー。なのでGT2も本当にいいけれど、コースで使うことを考えたら、GT3を選ぶと思います」(横田プロ)

最長飛距離はGT2だったが、「コースで使うことを考えるとGT3を選びたい」
【GT4 10度×ベンタス レッド TR 6S・45インチ】

GT4(10度)×ベンタス レッド TR(6S)
【ショットデータ】
・ヘッドスピード:45.0m/s
・ボール初速:66.5m/s
・ミート率:1.48
・打ち出し角:12.0度
・スピン量:2401rpm
・キャリー:244.1Y
・トータル:272.9Y
「GT4は女子プロで使っている選手が結構いるんです。女子プロのほうがアッパーに振る傾向があって、打ち出しの高さが確保できる。いわゆる高打ち出し低スピン飛ばせるので、低スピンヘッドのGT4も好まれますね」(井上さん)
「確かに三ヶ島かなプロはGT4でいい球を打っていましたね。ヘッドサイズは小ぶりに感じます(430㏄)。さすがに打点ブレにはシビアなところもありますが、上手く打てれば低スピンの強い弾道で飛ばせますね。でも意外とアマチュアの人って、MOIが大きいヘッドよりも、こういうディープフェースでげんこつのようなヘッドをゴツンと当てていくほうが、曲がらない人もいますから。一概に上級者向けとも言いにくいです」(横田プロ)
【GT1 9度×ベンタス レッド TR 6S・45インチ】

GT1(9度)×ベンタス レッド TR(6S)
【ショットデータ】
・ヘッドスピード:45.6m/s
・ボール初速:67.7m/s
・ミート率:1.49
・打ち出し角:11.2度
・スピン量:2771rpm
・キャリー:244.5Y
・トータル:277.2Y
「GT2、GT3、GT4に比べると形状が少し特徴的。ヘッドがペタッとした感じで、見た目にやさしさを感じます」(横田プロ)
シリーズ中、最も寛容性に優れるヘッドだが、ツアーで意外な展開になっているのがGT1。
「結構、男子プロからも人気のあるヘッドで、特にスピン量を確保して飛ばしたいプレーヤーが選ぶケースが多いですね」(井上さん)
横田プロが打つと明らかに弾道がつかまってきた。

「GT1はつかまりがよくてミスに強い。ヘッドスピードの速い人でもしっかりめのシャフトと合わせると面白いと思います」(横田プロ)
「自分が想定している目線よりはるかにつかまってきます。でもボール初速が速いし、なんなら一番飛ばせるヘッドかも。不思議なのは打感。高い音がしそうなのに、実は一番軟らかい。ブシュッと押し込んで飛ばせる感じがいいですね。つかまるし飛ぶし、アベレージクラスのアマチュアにもすごくいいと思います」(横田プロ)
「横田プロが使うなら、GT1にしっかりめのシャフトを装着して、つかまったフェードボールを目指すと、安定してかつ飛距離も出せると思います。実際そうやって使っているツアープロは多いです」(井上さん)
固定観念にとらわれないスペック選びが大事

ヘッドのモデル、ロフト、シャフト、硬さ、長さなど、試したことのないスペックを打つと、意外な発見がある
今回改めてD-1を連覇したGT2ドライバーの性能を再検証し、さらにGT2の性能を生かすスペック探しまで行った。今回のテストを通じて感じたことは、高性能のヘッドを最大限に生かすには、フィッティングが絶対的に欠かせないということ。しかも“最大飛距離”を追求するのではなく、あくまで安定して飛ばせる=スコアアップにつながるという点を突きつめることだ。自分の中で固定化しているロフトやシャフト、長さなどを専門家の目を借りて一から見直すことで、ドライバーショットのパフォーマンスが劇的に改善する可能性は大いにあるだろう。
ちなみに、今回紹介したフィッティングを通じてクラブを購入した場合は、最優先で組み上げ、1週間から10日程度で手元に届くという。これもゴルファーの優越感をくすぐる、かなりうれしいサービスに違いない。

ザ・カントリークラブ・ジャパン内にある「タイトリスト フィッティングセンター」でテスト&フィッティング。ディスプレイには名前が表示され、気分がアガる
PHOTO/Hiroaki Arihara
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