全国から問い合わせが殺到するという知る人ぞ知る人気ショップ「ゴルフステージ成城」のクラブナビゲーター吉田朋広氏が独自の目線でシャフトを検証する当連載。今回はスイス発のシャフトメーカー「TPT」。フレックス4種類を用意し、それぞれの特性を検証した。

TPTシャフトはスイスのカーボンファイバー素材の専門企業「North Thin Ply Technology Sarl」という会社で開発・製造されているシャフトで2018年から日本で販売されています。高い性能が求められる宇宙工学の人工衛星やモータースポーツの頂点のF1の分野などに使われる最先端のカーボン繊維を完全オートメーションで作り、接合部分の無い「スパインレス」シャフトというのが大きな特徴となります。

画像: スイス発「TPTシャフト」をクラブナビゲーターが検証

スイス発「TPTシャフト」をクラブナビゲーターが検証

カーボンシャフトはマンドレルという芯棒にカーボンシートを重ね合わせて作る「ロールラッピング製法」で作成されますが、その際、最初と最後が完璧に合わない限りできる段差があり、それをスパインといいます。

TPTでは段差部分のない「スパインレス」で作ることで、シャフトの個体差がなくなり、捻れという不安定要素を極限までゼロに抑えることで結果としてインパクトの打点の安定を実現して飛距離アップが可能としています。

今回はそんな「スパインレス」のTPTシャフトを検証したいと思います。

TPTのドライバー用シャフトはニトロレンジと パワーレンジの2種類があり、それぞれ弾道別に高弾道の「Hi」、低弾道の「Lo」にわかれます。さらにフレックス表記は数字で14~21まで用意されています。小さい数字のほうがハードスペックとなります。

【ニトロレンジ】
高弾道のHiに14~21までの8フレックス
低弾道のLoに14~18までの5フレックス
【パワーレンジ】
高弾道のHiに14~21までの8フレックス
低弾道のLoに14~18までの5フレックス

TPTはフィッティングシャフトですので非常に多くのスペックが存在しますが、私の、そして一般男性アマに多いヘッドスピード(HS41〜43m/s)に合わせて、今回は、ニトロレンジの「Hi」「Lo」とパワーレンジの「Hi」「Lo」を準備。フレックスはそれぞれ「17」にしました。実際に打ち比べてニトロレンジとパワーレンジの「Hi」「Lo」がどのように感じられるか? 自ら選ぶとしたらどれが良いか? という視点でも検証してみたいと思います。

※テストヘッド:PING G440 MAX/10.5度/45.25インチ
ニトロレンジ17Hi/振動数252CPM
ニトロレンジ17Lo/振動数260CPM
パワーレンジ17Hi/振動数251CPM
パワーレンジ17Lo/振動数254CPM

画像: HS42m/s前後のクラブナビゲーターに合うフレックスはどれだ?

HS42m/s前後のクラブナビゲーターに合うフレックスはどれだ?

ニトロレンジ 17Hi

握ったときにグリップのなかからややしっかりとしたハリ感があり、そのハリ感はシャフト中間部分まで感じられます。ワッグルすると中間部分から先にかけて、しなり感を覚えます。実際のスウィング中はワッグル時に感じられたハリ感がやや抑えられ、しなやかさがある印象。

切り返しのタメも作りやすく非常にスムーズなシャフト挙動でしなりはあるものの、余分な動きは感じられず、インパクトエリアまでヘッドをスムーズに運んでくれます。インパクト時にはシャフト先端部分に動きがあり、ボールのつかまり感があります。打ち出し角度は「Hi」の表記通り高めで、「PING G440 MAX (10.5度)」で15~17度ですので、キャリーがしっかりと出せる印象です。

バックスピン量は平均して多めのイメージで、弾道には左右ブレが少ない安定感があります。ハリ感としなやかさが同居するこのシャフトならではのフィーリングを感じました。キャリーで飛ばせる安心感と弾道の安定感を求めるのに良いスペックだと思います。

ニトロレンジ 17Lo

シャフト振動数が260CPMと数値だけみると少し硬いイメージでしたが、比較的テークバックがゆっくりめの私が実際にスウィングしてみても、ハリ感としなやかさが同居するフィーリングの”Hi”と同様のイメージでした。また、”Hi”に比べて中間部分から先の動きが少なくなることで、打ち出し角度は2~3度ほど下がり、中弾道になりました。

「スパインレス」シャフトの特徴の捻れ感も一切感じることなく振り心地は非常に良かったです。弾道は左右ブレの少ない中弾道ですのでターゲットエリアが狙いやすいと思います。先端部分の動きが少なくなることでボールのつかまりもやや抑えられて、左を気にすることなくしっかりと振り抜いていけます。ヘッドのコントロールのしやすさもあるのでフェードボールも打ちやすく感じました。

PING G440MAX(10.5度)のヘッドに装着したとき、私にとって理想的なキャリーとランで飛ばせるイメージでした。

画像: ニトロレンジ「Lo」と「Hi」の比較 ※フレックス17の場合

ニトロレンジ「Lo」と「Hi」の比較 ※フレックス17の場合

パワーレンジ 17Hi

手元部分のしっかりとしたシャフトなのでゆっくりとテークバックすると切り返し時に硬さを感じますが、切り返しのタイミングがしっかりとしている方や切り返しのスウィングテンポの速い方にとってはレスポンスが良くスッキリとしたフィーリングに感じられるでしょう。

シャフト自体に動きがあるものの、カチッとしたフィーリングで遊びが少ない印象です。シャフト先端部分はしっかりとしていて、多少強めにインパクトしてもインパクト時に当たり負け感はないはず。

PING G440 MAXのヘッドでもボールのつかまりは感じられ、ロフト10.5度で私の打出角は14~16度で、やや高めに打ち出すことが可能でした。ヘッドスピード41~43m/sくらいで飛距離を出すのには12~14度くらいが理想的な数値となりますので、飛距離を求めるならスリーブ機能を利用してロフトを立てて使ってみても良いでしょう。

パワーレンジ 17Lo

「17Hi」に比べて手元部分から中間部分までハリ感がある、しっかりとしたフィーリングで「捻れ」や「たわみ」を感じにくい設計になっています。基本的に中弾道モデルですが、切り返し時にしっかりとシャフトにテンションをかけると意外とタメは作りやすく、高さも出しやすくなりますので、プレーヤーのスウィングイメージによって弾道の印象は変わるでしょう。

シャフト先端部分は中間部分よりも剛性が落としてあるもののしっかりとした硬度がキープされていますので先端部分の動きは少なめです。

シャフトに余分な動きが少なく捻れのないしっかりとしたフィーリングには「スパインレス」シャフトらしさを感じ、一体感のあるシャフト挙動のままインパクトを迎えます。高いボールスピードの推進力がある弾道は、左右ブレも少ないのが印象的です。特に左へのボールの巻き込みに強く、アッパー気味のインパクトでも左は気にならないと思います。

「17Lo」はプレーヤーのスウィングや装着ヘッドスペックよって印象が変わるモデルだと思います。

画像: パワーレンジ「Lo」と「Hi」の比較 ※フレックス17の場合

パワーレンジ「Lo」と「Hi」の比較 ※フレックス17の場合

TPTシャフト 17/総評

今回はスイス発の「スパインレス」シャフトTPTドライバー用シャフトを検証しました。

テスターをする私のヘッドスピード41〜43m/sに合わせた「ニトロレンジ 17 Hi/Lo」「パワーレンジ 17 Hi/Lo」をPING G440 MAX(10.5度)に装着し打ってみて、私自身にどのスペックが合うかを自らフィッティングしてみました。結論から先にお伝えすると私には「ニトロレンジ 17Lo」がベストなスペックとなりました。

テークバックが比較的ゆっくりのスウィングでも切り返ししやすく、ダウンスウィングのタイミングが取りやすい。「スパインレス」のTPTシャフトの特長である捻れの少ない一体感のあるシャフト挙動を感じることができました。先端部分のしなりに安定感があり、インパクト時にしっかりとミートでき、弾道はブレのない中弾道でキャリーとランのバランスが良かったと思います。特にシャフトのタイミングが合っているとスウィングの再現性が高く、ほぼ同じ弾道が連続するのが印象的でした。

画像: フレックスが多いからこそ、自分に合ったシャフトが見つかるはず

フレックスが多いからこそ、自分に合ったシャフトが見つかるはず

TPTシャフトはフィッティング専用シャフトですので非常に多くのスペックがラインナップされていますが、今回フレックス「17」を打ってみてニトロレンジはスウィンガータイプに、パワーレンジはヒッタータイプに合うように基本的な設計がされていると思いました。

今回テストで使用したPING G440 MAXも含め、ここ最近多くのゴルファーに使用されているスリーブ機能搭載ドライバーヘッドにとって、シャフト全周で硬い部分や軟らかい部分が限りなく少ない「スパインレス」のTPTシャフトは、ヘッド機能を最大限引き出すのにとても有効です。

スリーブポジションを変更してもTPTシャフトの持つ捻れに強くスムーズなシャフト挙動を実現してくれることで、ドライバーショットで再現性の高いインパクトを実現してくれると思います。自身のヘッドスピードに合ったフレックス選びと装着するヘッド特性にマッチさせることで、自身のスウィングでの最大限のパフォーマンスを発揮することが可能となります。

取扱店にはフルスペックが用意されているとのことなので是非フィッティングで最高パフォーマンスを発揮するマッチングの「TPT」シャフトを選んで欲しいと思います。

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