
喜びを体いっぱいで表現する片岡大育
「神がかっていた」ノーボギーとパットの覚醒
「もう本当に、神がかっているような、いいプレーがこの3日間できました」
興奮冷めやらぬ様子で語った片岡。勝因は、2日目以降ボギーを一切打たなかった驚異的な安定感と、劇的に向上したパッティングにある。
実は、カシオワールドオープンの最終日の朝、片岡はパターを思い切って変更していた。「ずっとショットは良かったのにパターが入らずモヤモヤしていた」という彼は、かつて初優勝を挙げた相棒を再び手に取った。
「そのフィーリングのいいものに変えて、それがすごくハマってくれた。スピードさえ掴めばいけるという自信を持てるようになりました」
この決断が、ファイナルQTでの快進撃を生んだ。
14番ホールで気づいた「優勝のチャンス」
7打差でスタートした最終日、片岡の当初の目標は「最低でも5位以内、あわよくば2位」だった。
「7打差あったんで全く意識してなくて。彼(中野)は一人ノビノビとやっていくんだろうなと思っていた」
しかし、14番ホール付近で状況が変わる。「彼のスコアを頭の中で計算したら同点だったんで、あれ? と思って」。それでも、そこで複雑な計算をするのではなく、「もう一回ちゃんと落ち着いて自分のプレーをする」ことに集中した。
正規の18番では絶好のバーディパットを外し、「ちょっと重苦しい感じになった」というが、プレーオフではその経験と技術が爆発する。
プレーオフ3ホール目、58度での劇的チップイン

チップインバーディで試合を決めた片岡大育
中野との一騎打ちは、プレーオフ3ホール目で決着した。 グリーン右サイド、ピンまで12〜13ヤードのラフからのアプローチ。「1回目(のプレーオフ)のほうがちょっとライが悪かったし、思ったよりフックした」という経験を活かし、3回目は「ちょっとだけ右から狙ってみたら、完璧に入ってくれて」。
「飛ばない僕」が戦う意味
2年前にQT2位だった片岡は、今回「1位を取りたい」という強い気持ちで臨んでいた。昨年のシード落ちという「虚しさ」を味わいながらも、腐らずにショットを磨き続けた結果が、この優勝だ。
飛距離全盛の時代にあって、片岡は稲森佑貴らの活躍に勇気をもらいながら戦っている。
「飛ばない僕と稲森と勝又(悠斗)くんと。本当に苦しい。でも、いいショットを打ち続けて、パターがちゃんと決まれば、絶対チャンスはある」
飛距離アップをテーマに掲げつつも、「自分のゴルフを確立させる」ことで戦い抜く覚悟だ。
そして、苦しい時期を支え続けてくれた高知の後援会への感謝を口にした。
「もう残念なニュースばっかりで、みんなそろそろしびれ来だしてるなあと。やっといい報告ができるのが嬉しくてたまんないです」
来季、シード権確保と優勝を目指すベテランが、再びレギュラーツアーの舞台で輝きを放つ。
撮影/大澤進二
