2026年シーズンのツアー出場権を懸けた「ファイナルクォリファイングトーナメント(QT)」の最終日が12日、千葉県・千葉夷隅ゴルフクラブ(7319ヤード・パー72)で行われた。トップと7打差の2位タイからスタートしたツアー通算3勝の片岡大育が、この日もノーボギーの完璧なゴルフで首位の中野麟太朗を猛追。トータル14アンダーで並んで突入したプレーオフ3ホール目で、劇的なチップインバーディを決め、大逆転でトップ通過を果たした。
画像: 喜びを体いっぱいで表現する片岡大育

喜びを体いっぱいで表現する片岡大育

「神がかっていた」ノーボギーとパットの覚醒

「もう本当に、神がかっているような、いいプレーがこの3日間できました」

興奮冷めやらぬ様子で語った片岡。勝因は、2日目以降ボギーを一切打たなかった驚異的な安定感と、劇的に向上したパッティングにある。

実は、カシオワールドオープンの最終日の朝、片岡はパターを思い切って変更していた。「ずっとショットは良かったのにパターが入らずモヤモヤしていた」という彼は、かつて初優勝を挙げた相棒を再び手に取った。

「そのフィーリングのいいものに変えて、それがすごくハマってくれた。スピードさえ掴めばいけるという自信を持てるようになりました」

この決断が、ファイナルQTでの快進撃を生んだ。

14番ホールで気づいた「優勝のチャンス」

7打差でスタートした最終日、片岡の当初の目標は「最低でも5位以内、あわよくば2位」だった。

「7打差あったんで全く意識してなくて。彼(中野)は一人ノビノビとやっていくんだろうなと思っていた」

しかし、14番ホール付近で状況が変わる。「彼のスコアを頭の中で計算したら同点だったんで、あれ? と思って」。それでも、そこで複雑な計算をするのではなく、「もう一回ちゃんと落ち着いて自分のプレーをする」ことに集中した。

正規の18番では絶好のバーディパットを外し、「ちょっと重苦しい感じになった」というが、プレーオフではその経験と技術が爆発する。

プレーオフ3ホール目、58度での劇的チップイン

画像: チップインバーディで試合を決めた片岡大育

チップインバーディで試合を決めた片岡大育

中野との一騎打ちは、プレーオフ3ホール目で決着した。 グリーン右サイド、ピンまで12〜13ヤードのラフからのアプローチ。「1回目(のプレーオフ)のほうがちょっとライが悪かったし、思ったよりフックした」という経験を活かし、3回目は「ちょっとだけ右から狙ってみたら、完璧に入ってくれて」。

「飛ばない僕」が戦う意味

2年前にQT2位だった片岡は、今回「1位を取りたい」という強い気持ちで臨んでいた。昨年のシード落ちという「虚しさ」を味わいながらも、腐らずにショットを磨き続けた結果が、この優勝だ。

飛距離全盛の時代にあって、片岡は稲森佑貴らの活躍に勇気をもらいながら戦っている。

「飛ばない僕と稲森と勝又(悠斗)くんと。本当に苦しい。でも、いいショットを打ち続けて、パターがちゃんと決まれば、絶対チャンスはある」

飛距離アップをテーマに掲げつつも、「自分のゴルフを確立させる」ことで戦い抜く覚悟だ。

そして、苦しい時期を支え続けてくれた高知の後援会への感謝を口にした。

「もう残念なニュースばっかりで、みんなそろそろしびれ来だしてるなあと。やっといい報告ができるのが嬉しくてたまんないです」

来季、シード権確保と優勝を目指すベテランが、再びレギュラーツアーの舞台で輝きを放つ。

撮影/大澤進二

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