2025年の国内女子ツアーは、昨年の悔しさをバネに勝ち切るゴルフを成し遂げ悲願の初優勝を手にし、さらには複数回優勝まで果たした佐久間朱莉が年間女王に輝いた。一年間を通してツアー会場でプロの様子を見届けた、みんなのゴルフダイジェスト特派記者・中村修が今シーズンを振り返る。これだけ知っておけば、来シーズンのツアー観戦がさらに楽しくなること間違いなし!

今シーズンの優勝者を改めておさらい! 計12名が初Vを飾っていた

日付大会名会場名優勝者ツアー通算勝利数プロ歴
3/6~9第38回ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント琉球GC(沖縄県)岩井千怜84
3/21~23Vポイント×SMBC レディスゴルフトーナメント紫CCすみれC(千葉県)吉田優利46
3/28~30アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI 2025UMKCC(宮崎県)工藤遥加115
4/3~6ヤマハレディースオープン葛城葛城GC山名C(静岡県)穴井詩617
4/11~13富士フイルム・スタジオアリス女子オープン石坂GC(埼玉県)安田祐香26
4/18~20KKT杯バンテリンレディスオープン熊本空港CC(熊本県)佐久間朱莉45
4/25~2743rd フジサンケイレディスクラシック川奈ホテルGC富士C(静岡県)大会中止××
5/2~4パナソニックオープンレディースゴルフトーナメント浜野GC(千葉県)菅沼菜々37
5/8~11ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ茨城GC東C(茨城県)申ジエ2917
5/16~18Sky RKBレディスクラシック福岡雷山GC(福岡県)神谷そら43
5/22~25ブリヂストンレディスオープン中京GC石野C(愛知県)佐久間朱莉44
5/29~6/1リゾートトラスト レディスグランディ鳴門GC36(徳島県)稲垣那奈子12
6/6~8ヨネックスレディスゴルフトーナメント 2025ヨネックスCC(新潟県)髙野愛姫12
6/12~15宮里藍 サントリーレディスオープンゴルフトーナメント六甲国際GC(兵庫県)高橋彩華27
6/20~22ニチレイレディス袖ヶ浦CC新袖C(千葉県)入谷響11
6/26~29アース・モンダミンカップカメリアヒルズCC(千葉県)佐久間朱莉45
7/3~6資生堂・JAL レディスオープン戸塚CC西C(神奈川県)永峰咲希311
7/10~13ミネベアミツミ レディス 北海道新聞カップ真駒内CC空沼C(北海道)内田ことこ14
7/17~20明治安田レディスゴルフトーナメント仙台クラシックGC(宮城県)小祝さくら128
7/24~27大東建託・いい部屋ネットレディスザ・クイーンズヒルGC(福岡県)渡邉彩香613
8/8~10北海道 meiji カップ札幌国際CC島松C(北海道)河本結47
8/15~17NEC軽井沢72ゴルフトーナメント軽井沢72G北C(長野県)柏原明日架311
8/22~24CAT Ladies 2025大箱根CC(神奈川県)櫻井心那54
8/28~31ニトリレディスゴルフトーナメント北海道CC大沼C(北海道)鈴木愛2212
9/5~7ゴルフ5レディスプロゴルフトーナメントゴルフ5Cオークビレッヂ(千葉県)荒木優奈11
9/11~14ソニー 日本女子プロゴルフ選手権大会大洗GC(茨城県)金澤志奈18
9/19~21第56回住友生命Vitalityレディス 東海クラシック新南愛知CC美浜C(愛知県)神谷そら43
9/26~28第52回ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント利府GC(宮城県)菅楓華12
10/2~5日本女子オープンゴルフ選手チェリーヒルズGC(兵庫県)堀琴音311
10/10~12スタンレーレディスホンダゴルフトーナメント東名CC(静岡県)河本結47
10/17~19富士通レディース 2025東急セブンハンドレッドC(千葉県)木村彩子210
10/23~26NOBUTA GROUP マスターズGC レディースマスターズGC(兵庫県)佐久間朱莉45
10/31~11/2樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント武蔵丘GC(埼玉県)仲村果乃13
11/6~11/9TOTO ジャパンクラシック瀬田GC北C(滋賀県)畑岡奈紗48
11/14~16第41回伊藤園レディスゴルフトーナメントグレートアイランドC(千葉県)脇元華17
11/20~23第44回大王製紙エリエールレディスオープンエリエールGC松山(愛媛県)ウー・チャイェン13
11/27~30JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ宮崎CC(宮崎県)鈴木愛2212

解説:中村修(なかむらおさむ)
1968年、千葉県出身。26歳でゴルフを始め、2005年に日本プロゴルフ協会(PGA)入会。PGAティーチングプロB級会員。桑木志帆のコーチとしての実績を持ち、「みんなのゴルフダイジェスト」特派記者として、ツアー会場から現地の様子をレポートしている

女王・佐久間朱莉を変えた「メンタル」と「チーム力」

画像: 6試合目となった「KKT杯バンテリンレディスオープン」で悲願の初優勝を達成すると、わずか2ヶ月間でさらに2勝を挙げた佐久間。10月の「NOBUTA GROUP マスターズGC レディース」では完全Vを遂げ、通算4勝を飾り、年間女王に輝いた

6試合目となった「KKT杯バンテリンレディスオープン」で悲願の初優勝を達成すると、わずか2ヶ月間でさらに2勝を挙げた佐久間。10月の「NOBUTA GROUP マスターズGC レディース」では完全Vを遂げ、通算4勝を飾り、年間女王に輝いた

まず触れなければならないのは、やはり年間女王に輝いた佐久間朱莉選手のことでしょう。
昨シーズンは2位(タイ)に3回、3位(タイ)に2回入賞し、トップ10入りは14回。実力は誰もが認めていましたが、あと一歩、優勝に届きませんでした。それがなぜ、今年は春先に初優勝を挙げ、そのまま年間女王になれたのか。

私が現場で感じた一番の変化は「メンタル」です。

昨年までは、ジュニア時代から切磋琢磨してきた同い年で地元も近い、岩井姉妹の存在が大きかったのだと思います。ジュニア時代、岩井姉妹とは違い、佐久間選手はナショナルチームで活躍した実績があります。プロになって、立場が逆転。彼女たちが先にプロで活躍し、優勝していく姿に、どうしても焦りを感じていたはず。「自分は自分」と思えるようになったのは、岩井姉妹が海外へ進出したこととも無関係ではないでしょう。比較対象との物理的な距離ができ、自分らしく戦えるマインドが整ったことが、6戦目の「KKT杯バンテリンレディス」での初優勝、そしてその後の複数回優勝につながったのだと私は見ています。

さらに精神的な余裕に加え、技術的な裏付けもありました。今年2月の取材時点で、彼女はすでに「アプローチ」と「パッティング」を明確な課題として掲げていました。

アプローチについては、自ら苦手な距離を徹底的に打ち込むことで克服。パッティングは平田智コーチをチームに招いたことで、弱点だったショートゲームを得点源へと変貌させました。実際にスタッツにも表れており、パーオンホールの平均パット数は11位から4位へ、リカバリー率は19位から4位へと劇的に向上しています。 さらに、藤山和也トレーナーが機能神経学を取り入れたコンディショニングで年間を通じた高いパフォーマンスを支えたことも、女王戴冠への大きな原動力となりました。

佐久間朱莉の“スタッツ”を比較(2024→2025)
・平均パット数(パーオンホール):1.7745(11位) → 1.7613(4位)
・平均パット数(1ラウンド当たり):29.4775(32位) → 29.0042(7位)
・パーセーブ率:88.8889(5位) → 89.0764(2位)
・平均バーディ数:3.7027(8位) → 3.8987(1位)
・リカバリー率:66.4740(19位) → 67.8571(4位)
・3パット率:2.7528(23位) → 2.2504(5位)

36試合すべてに出場し、猛暑の夏を乗り越えて「勝ち切るゴルフ」ができたのは、彼女自身の努力と、それを支えたチーム力の賜物だと感じます。

「空席」を奪い合った若手たち、その躍進の理由

画像: 2024シーズンに優勝を荒稼ぎした強者たちは海外進出を果たし、毎年安定した成績を残す小祝は手首の手術のために休養。今シーズンは空前の席とり合戦となった

2024シーズンに優勝を荒稼ぎした強者たちは海外進出を果たし、毎年安定した成績を残す小祝は手首の手術のために休養。今シーズンは空前の席とり合戦となった

さて、今年のツアー全体を見渡すと、初優勝者がなんと12名も誕生しました。昨年の8名(リ・ヒョソン含む)と比べても明らかに多い。

この背景には、昨年までツアーを牽引した竹田麗央選手や山下美夢有選手の海外進出、そして小祝さくら選手の夏場の怪我による離脱があります。彼女たちが昨年挙げた勝利数は合計18勝。つまり、王座の「席」がごっそりと空いた状態だったのです。

本来であれば、彼女たちと同様に複数回優勝を達成した桑木志帆や川﨑春花、5年ぶりの優勝を挙げメルセデス・ランキング7位に入賞した河本結らが好成績を残すはず。しかし、桑木&川﨑は0勝、河本は2勝に留まりました。

画像: 「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」を制した菅楓華と「ゴルフ5レディス」を制した荒木優奈は2005年生まれの同世代。優勝までに菅は11回、荒木は6回トップ10入りを経験した

「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」を制した菅楓華と「ゴルフ5レディス」を制した荒木優奈は2005年生まれの同世代。優勝までに菅は11回、荒木は6回トップ10入りを経験した

このチャンスをものにしたのが、プロ1年目から3年目の若手選手たちでした。特に菅楓華選手や荒木優奈選手といった2005年生まれの同級生たちの活躍が目立ちましたね。「あの子が勝てるなら私も」という相乗効果が、世代全体を押し上げたと言えます。また、最初はQTランク順に同組のメンバーが決まりますが、ツアー中に上位に入れると、レギュラーツアーで活躍し続けるベテラン選手たちと回れるようになります。先輩たちの技を間近で吸収し、それを試合会場という最高の環境ですぐに練習できる。このサイクルが彼女たちの急成長を促しました。

そしてもう一つ、忘れてはならないのが「ベテランキャディ」の存在です。

ルーキーイヤーからフルシーズンを戦い抜くには、ペース配分が不可欠です。春先は体作り、夏場はリカバリーと、季節ごとの調整が必要になります。私が会場で見ていると、ベテランキャディたちが「今日の練習はこれくらいにしておこう」と、オーバーワークにならないよう若手をうまくコントロールしていました。とくにルーキーの荒木選手が最後までバテずに戦えたのは、ナショナルチームで培った体力に加え、こうした“プロの知恵”があったからこそです。

意地を見せた「95年生まれ」とベテランの底力

画像: 今年30歳を迎えた95年生まれからは永峰咲希、柏原明日架、金澤志奈、堀琴音、木村彩子の5名が優勝を手にした

今年30歳を迎えた95年生まれからは永峰咲希、柏原明日架、金澤志奈、堀琴音、木村彩子の5名が優勝を手にした

若手が勢いづく一方で、今年はベテラン勢の「底力」も見逃せない一年でした。

特に95年生まれの世代――永峰咲希、柏原明日架、金澤志奈、堀琴音、木村彩子選手ら5人が優勝を手にしました。彼女たちの背中を押したのは、間違いなく工藤遥加選手の初優勝でしょう。

画像: 2011年にプロテストに合格した工藤遥加。プロ転向後4991日目のツアー初優勝は、ツアー制施行後のJLPGA入会者として史上2位のスロー記録となった

2011年にプロテストに合格した工藤遥加。プロ転向後4991日目のツアー初優勝は、ツアー制施行後のJLPGA入会者として史上2位のスロー記録となった

プロ15年目にして掴んだ栄冠。「怖がらずに挑戦すれば勝てる」という工藤選手の姿は、同世代や30代の選手たちに「自分にもまだチャンスがある」という希望を与えました。

画像: 体調不良を起こしながらも最終日まで戦い切った藤田さいき

体調不良を起こしながらも最終日まで戦い切った藤田さいき

さらに、5月の「サロンパスカップ」での藤田さいき選手の激闘を覚えているんじゃないでしょうか? あの時、最終ホールには本当に数多くのギャラリーが周りで見守っていました。結果はプレーオフにもつれ込み、負けてしまったけれど、選手たちは体調不良を抱えたまま倒れるまで戦い切る姿を見せつけられました。目に涙を浮かべている選手が多くいたことを今でもよく覚えています。そういう姿がベテラン勢を鼓舞したのだと思います。

来シーズンも続く「戦国時代」

こうして振り返ると、2025年は女王・佐久間朱莉選手を筆頭に、若手とベテランが入り乱れてチャンスを掴み取った一年でした。

来シーズンも、QTをトップ通過した新人の倉林紅選手や、シード復帰を果たした葭葉ルミ選手などが加わり、さらなる激戦が予想されます。

誰が勝ってもおかしくないこの来シーズンの「戦国時代」の展望については別の記事で紹介します。

(※2025年12月29日 10時43分 一部加筆修正しました)

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