ゴルフはあるがままのボールを打つノータッチのプレーが基本だが、霜が溶けた後や雨上がりなど、足元がウェットな状況はよくある。ドライバーでナイスショットしてフェアウェイにあるのにボールには泥がペタッと…なんて経験は少なからずあるはず。泥が付いたボールは、「飛距離が落ちる」「泥のせいで曲がる」なんて言われますが、実際はどうなのか? というわけで、泥が付いたボールの飛び方を松本一誠プロと計測して確かめてみました。
画像: 松本一誠プロ/ドラコン選手にしてアマチュアを指導するインストラクター。2023年の日本ロングドライブ選手権チャンピオン。横浜駅東口から徒歩約5分にある松本一誠ゴルフラボのスタジオで実験!

松本一誠プロ/ドラコン選手にしてアマチュアを指導するインストラクター。2023年の日本ロングドライブ選手権チャンピオン。横浜駅東口から徒歩約5分にある松本一誠ゴルフラボのスタジオで実験!

ボールに泥が付いた!
そのまま打つとどうなるの?

今回は松本一誠プロのスタジオにお邪魔して、泥が付いたボールの飛び方を検証。といっても、インドアスタジオでボールに本物の泥を付けて打つわけにはいかないので、泥によく似た紙粘土を使って実験です。

画像: 茶色の紙粘土を泥に見立てて実験開始!

茶色の紙粘土を泥に見立てて実験開始!

ひとつまみの紙粘土をボールに貼り付けたら準備完了。今回はブリヂストンのツアーボール「ツアーB X」を使用しました。ラウンド時に付くリアルな泥の量をイメージして、紙粘土の量は「B」のロゴと同じくらいの大きを目安にしました。重さにして0.2~0.5グラム程度。

画像: 新品のボールを用意。セカンドショットを想定し、7番アイアンで「泥有り」「泥無し」を6球ずつを打って計測。これは泥が真上のパターン

新品のボールを用意。セカンドショットを想定し、7番アイアンで「泥有り」「泥無し」を6球ずつを打って計測。これは泥が真上のパターン

泥の付いていないボール、泥の付いたボールを6球ずつ打って、その平均値を比べることで泥が弾道に与える影響を検証します。泥を付ける位置はターゲットに向かって右、左、真上の3カ所です。測定はトラックマン。

いざ実験開始!

画像: 使用クラブは7番アイアン。松本プロには同じ力感、テンポを意識して試打してもらいました

使用クラブは7番アイアン。松本プロには同じ力感、テンポを意識して試打してもらいました

まずは泥の付いていないボールから実験開始。7番アイアン(スリクソン Z565)を6球打って平均値を出した上で、泥の付いたボールを試打していきます。

画像: 泥の付いていない6球の分布

泥の付いていない6球の分布

上の画面が泥の付いていないボール6球の試打結果。7番アイアン(ロフト31度)でテストしましたが、さすがドラコニストの松本プロ、ショットメーカーらしく弾道はほぼストレートで200ヤード近辺にボールが集まりました。

さて、それでは泥の付いたボールを打つとどうなるのか?

実験①
飛球方向の右に泥が付いた場合

画像: 飛球線に対して右側に泥。打ち手から見ると、ボールの向こう側に泥

飛球線に対して右側に泥。打ち手から見ると、ボールの向こう側に泥

まずはターゲットに向かって右にボールが付いた場合。「アドレスすると泥がボールの向こう側に見えます。少し気持ち悪いですね」(松本プロ)と違和感を感じつつ、打ってみるとボールは少し左に曲がっていきます。「6球打ってみましたが、これは気のせいではなく、明らかに左に曲がっていますね」

画像: ボールに右に泥を付けた7番アイアンの試打結果。左寄りに集まる分布となった

ボールに右に泥を付けた7番アイアンの試打結果。左寄りに集まる分布となった

右に泥を付けた場合の試打結果が上の画面。飛距離には大きな変化はありませんでしたが、ボールがドローボールのように少し左に曲がったことで、ターゲットラインより左にボールが集まるという結果に。

実験②
ボールの左に泥が付いた場合

画像: 実験② ボールの左に泥が付いた場合

つづいてボールの左に紙粘土を付け替えて6球実験。「先ほどよりも泥が手前にはっきり見えるので集中しにくいですね。これは気持ちが悪いです(苦笑)」(松本プロ)。そう言いつつ試打すると、今度は右に曲がる傾向が強く、明らかにスライスやフェードが続く。

画像: ボールの左に泥を付けて打った時の結果

ボールの左に泥を付けて打った時の結果

「フライヤーみたいになっているのか、226ヤード飛んだボールがありました。7番アイアンで同じように打っても189ヤードから226ヤードと飛距離のバラつきが大きいです。データ的にも、全部スピン軸の傾きが右になっているので、これは明らかに泥の仕業ですね」(松本プロ)

実験③
泥がボールの真上に付いた場合

画像: ボールの真上に泥。これはどう飛ぶのか?

ボールの真上に泥。これはどう飛ぶのか?

最後は泥が真上に付いていた場合。「明らかに球が高い! 最高到達点が47ヤードまで上がったボールがありました。左右への曲がりは感じられませんが、ボールが必要以上に上がるぶん飛距離はけっこう落ちてしまいました」(松本プロ)

画像: 真上に泥を付けた時の試打結果。泥無しショットに比べて、平均飛距離が5~10ヤード落ちた

真上に泥を付けた時の試打結果。泥無しショットに比べて、平均飛距離が5~10ヤード落ちた

6球打ったときの分布が上の写真。200ヤード飛んだボールは1球もなく、方向性にまとまりは見られるものの、弾道が通常よりかなり高くなり、飛距離が1クラブほど落ちることが分かりました。

【まとめ】
泥の位置と逆方向にショットは曲がる
真上の泥は飛距離が著しく落ちる

「どれくらい結果が変わるのかなと思っていましたが、泥の付いた位置と反対にボールは曲がることが分かりました。もしコースでボールに泥が付いたら、泥の位置に注意して弾道に影響が出ることを踏まえてターゲットを狙ってほしいですね。スライス系が持ち球の人でも、泥が右側に付いていたらあまりスライスしないという狙い方になりますね」(松本プロ)

試打結果(7I/6球の平均)

泥の付いていないショット
ヘッドスピード:44.0m/s
ボールスピード:61.4m/s
キャリー:192.4y
総飛距離:201.7y
スピン量6261rpm
高さ:43.4y
曲がり幅:右0.9y

泥が右に付いたショット
ヘッドスピード:44.0m/s
ボールスピード:61.4m/s
キャリー:193.5y
総飛距離:202.6y
スピン量6145rpm
高さ:43.8y
曲がり幅:左6.4y

泥が左に付いたショット
ヘッドスピード:44.4m/s
ボールスピード:60.3m/s
キャリー:192.9y
総飛距離:203.4y
スピン量5755rpm
高さ:43.9y
曲がり幅:右8.1y

泥が真上のショット
ヘッドスピード:44.1m/s
ボールスピード:61.0m/s
キャリー:189.3y
総飛距離:196.7y
スピン量6497rpm
高さ:44.8y
曲がり幅:右3.6y

画像: 「想像以上に計測結果に違いがでました。泥の影響は無視できません」(松本プロ)

「想像以上に計測結果に違いがでました。泥の影響は無視できません」(松本プロ)

オマケ
キズが付いたボールでも結果は同じ
キズの位置と反対にショットは曲がる

画像: 新品のボールに傷を付けて(ボールさんごめんなさい!)実験開始

新品のボールに傷を付けて(ボールさんごめんなさい!)実験開始

泥が付いた時、ボールは泥の位置と反対に曲がることが分かりました。ではボールに傷が付いてしまった場合はどうなのか?

実際に新品のボールと傷を付けたボールを打って検証しました(ボールは泥と同様にツアーB X/ドライバーはキャロウェイ Ai スモーク トリプルダイヤ・シャフトはレイブのワンフレックス・ロフト8度)。

結果は、泥が付いた時と同様に傷がある位置と反対にボールは曲がっていきました。

画像: 今度はドライバーショットで検証

今度はドライバーショットで検証

「ドライバーで打って検証してみました。傷が右にあるボールは左へ曲がり、傷が左にあるボールは右に曲がりました。これは泥が付いたボールと同じでした。傷が真上にある場合も同様で、曲がりはしませんがスピンが多くなって距離が落ちてしまいます。低スピンにはなりませんでした」

「カート道路や、木々に当たって、目で見てわかるぐらいディンプル形状に傷が付いてしまったら、少しもったいないですが、ボールを替えたほうがいいかもしれませんね」(松本プロ)

実験結果は科学的に正しい?
ボールの専門家に話を伺うと

ボールに泥、傷が付いているケースについて、今回の実験結果が本当に信用できるものなのか? 最後にブリヂストンゴルフのボール担当の宮川さんに確認してみました。

「その実験結果で正しいと思います。ボールの右側に泥や傷が付いている場合は左へ曲がる球筋になり、ボールの左側に付いている場合は右へ曲がっていくことが、弊社の検証結果でも出ています。ボールの真上に傷や泥が付いている場合も、実験された通り、曲がりはしませんが飛距離が落ちてしまいます」(宮川さん)

あくまで推論ですがと前置きした上で、現象としては、おそらく泥が付いたり傷が入ったことで、その部分の気流が崩れて圧力(気圧)が強まり、気流がスムーズで圧力の低い逆サイドへ引っ張られていくからではないか、ということでした。

これはみんゴル実験室スタッフの見解ですが、ボールの真上に泥や傷がある場合は、それがバックスピン運動の慣性モーメントを高めて、スピン量を増加させたのかもしれません。

今回の実験室は以上のとおり。次回のプレー中に、ボールに泥が付いていたり、傷が付いてしまった時、ボールがどういう飛び方をするのか? または綺麗なボールへ交換するべきか? 参考にしてみてください。

(PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/ISSEI Golf Labo)

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