
日本人史上最年少出場する長﨑大星(右)とキャディとしてサポートする兄・煌心(左)(26年ソニーオープン・イン・ハワイの練習日。撮影/岩本芳弘)
日本の男子ゴルフ界に、新たな「兄弟伝説」の予感が漂っている。 古くは尾崎将司・健夫・直道の3兄弟が知られるが、宮崎県から世界を見据える長﨑煌心(こうしん・兄/日章学園高3)と大星(たいせい・弟/勇志国際高1)のポテンシャルは底知れない。

25年アジアパシフィックアマは涙のなかの表彰式となった長﨑大星(PHOTO/AAC)
2025年、兄・煌心は「緑の甲子園」高校の部を、弟・大星は中学の部を制し、史上初の兄弟同時優勝を達成。さらに国内メジャー「日本オープン」では兄弟揃って決勝ラウンドに進出するなど、その実力は折り紙付きだ。特に弟の大星はナショナルチームにも選出され、アジアパシフィックアマチュア選手権ではプレーオフの末に敗れはしたものの2位という快挙を成し遂げた。
そんな弟・大星が、PGAツアー「ソニーオープン・イン・ハワイ」に主催者推薦で出場する。バッグを担ぐのは兄・煌心。最強の兄弟タッグで挑むハワイの地で、大星はどのようなゴルフを見せるのか。 世界と戦うための武器である、独自の「フェース開閉ゼロ・スウィング」と、トッププロの動きを自らに落とし込む「編集力」について、本人が語ってくれた。
究極のオートマチック。「上げて下ろすだけ」の強み
大星のスウィングを語る上で欠かせないキーワード、それが「フェース開閉ゼロ」と「ゼロパス」だ。

右下のフックグリップではじまり、トップでは完全にフェース面が空を向いている
「僕のスウィングの最大の特徴は、グリップと、そこから生まれる『フェース開閉のなさ』です。フックグリップで握り、トップの時点ですでにフェース面が空を向いている状態を作っています」
現代の大型ヘッドドライバーに適したスウィング理論として定着しつつあるシャットフェースだが、大星のそれは徹底されている。
「フェースを閉じたり開いたりする動作がないので、球をつかまえやすい。面を変えずに上げて、ただ下ろすだけ。これが魅力です」
アドレスはベーシックなストレートを基準にしつつ、トップではレイドオフに近い形(シャフトが飛球線より左を向く形)を作る。
「フェース開閉が少なくて、レイドオフ気味で、なおかつ軌道がブレない『ゼロパス』を維持できるのが僕の強み。『真っすぐしか行かない』、ストレート弾道が出やすいスウィングなんです」
海外の芝に対応する「強めのアタックアングル」
インパクト以降のイメージも独特だ。フェースを返さない意識が強いため、フォローでは手首をこねる動きを排除し、体の回転で押し込んでいく。
「僕はアタックアングル(入射角)が強め、つまり鋭角に入る傾向があります。これは海外の硬い芝や、地面が硬いコンディションに適用しやすいんです」
ソニーオープンの舞台、ワイアラエCCはバミューダ芝で知られるが、鋭角にボールを捉える大星のスウィングは、粘っこいラフや硬いフェアウェイでも当たり負けしない強さを持っていると言えるだろう。
フックグリップの弊害を「右手」でカバー
一方で、極端なフックグリップとシャットフェースには課題もある。それがショートゲームだ。

25年アジアパシフィックアマチュアでの一コマ。へその位置から離れているのがわかる(PHOTO/AAC)
「コーチからは『シャフトを常にへその位置にキープしろ』と教わるんですが、僕の場合、フックグリップなので左手の背屈(甲側に折る動き)がこれ以上いかない(笑)。だから、アプローチで球が強く出すぎてしまう難しさがありました」
そこで大星がたどり着いた答えは、右手の活用だ。
「左手でコントロールしようとするより、右手をうまく使って『返す』イメージを出していく。そうすることで、アプローチもスムーズに打てるようになりました。安定しつつ、飛ばしにいける。これが自分だけの動きかなと思います」
「止まれない」からこそ、振り切る

カメラマンからの「キャディバッグを担いだカットも撮影させて」とのリクエストに対してこの1枚。コミュニケーション能力やエンターテインメント性の高さがにじみ出る
大星のスウィングを見ていると、フィニッシュまで一気に振り切るダイナミックさが目を引く。
「僕はフィニッシュまで振り切ってからスウィングを戻すタイプ。松山英樹さんのようにスリークォーターでピタッと止める動きが苦手なんです(笑)。軽く振る時でも、しっかりフィニッシュを取りに行く。それが僕のリズムです」
現在は、持ち前の強靭な左足軸に加え、右足のサポートを意識したスウィング改造にも取り組んでいる。
「左足を生かしつつ、右足で支える動きを加えることで、体への負担を減らしつつパフォーマンスを上げていきたい」と、16歳にしてフィジカル面でのアップデートも欠かさない。
アレックス・ノレン、マキロイ…トッププロの動きを「砕いて取り入れる」
これほど確立された理論を持つ大星だが、驚くべきことに特定のコーチに手取り足取り教わったわけではないという。

日光CCで開催された25年日本オープンで歴代覇者として会場を訪れていた中嶋常幸にはトミーアカデミーで指導を受ける(PHOTO/姉崎正)
「中学校から自分で考え出して、自分の強みと弱みを活かそうと決めました。フェニックスゴルフアカデミーにいる榑松陽介コーチ、トミーアカデミーで指導いただいている中嶋常幸プロ、そして、ナショナルチームのクレイグ・ビショップコーチといった方々に話を聞き、それを『自分の教科書』に当てはめています」
言われたことをそのままやるのではなく、一度自分の中で噛み砕いて、自分の形に変換してから取り入れる。その「編集力」こそが彼の真骨頂だ。参考にしている選手を聞くと、まるでゴルフマニアのような具体的な名前が次々と挙がった。
● スウィングプレーン:アレックス・ノレン、マイケル・ブレナン、アンソニー・キム
● 軸の動き:ロリー・マキロイ
● 高いトップ:ジャスティン・トーマス
● アプローチ:ジェイソン・デイ
● パッティング:トミー・フリートウッド、ジャスティン・ローズ
タイプが違う選手の動きを取り入れて混乱しないのか? という問いにも、大星は涼しい顔で答える。
「みんな同じ動きをしようとするからおかしくなるんです。自分はその動きを一度自分の中で砕いて、自分の形にどう変換できるか考えてからやるので、誰を取り入れても自分に合うようになっています」
兄・煌心も「この身長で下半身を力強く使って、あれだけ綺麗にプレーンに乗せて打てているのはすごい」と認める弟の才能。 ハワイの風の中、自らの頭脳と肉体で作り上げた「真っすぐしか行かない」ショットが、PGAツアーの猛者たちを驚かせるかもしれない。
撮影/岡沢裕行
THANKS/フェニックスゴルフアカデミー
