ふてぶてしいほどの大胆さでメジャー5勝を積み重ねてきた男の目には、かつてのギラつきとは異なる、穏やかな光が宿っていた。トーリーパインズで開催された復帰戦。メジャー5勝のブルックス・ケプカは、初日の1番ティーで感じた「極度の緊張」を乗り越え、4日間を戦い抜いた。「なぜ緊張したのか? それは僕が『気にしている(care)』からだ」。その言葉は、彼が失いかけていたゴルフへの情熱が、この場所で再び燃え上がったことを告げていた。4日間の戦いを終え、通算4アンダーの56位タイでフィニッシュしたケプカ。その表情には、安堵と、そして何より「ゴルフへの愛」が満ち溢れていた。LIVゴルフを経て、特例での復帰を果たした男の4日間。それは、錆びついた感覚との格闘であり、自身のアイデンティティを取り戻す旅でもあった。
画像: 4日目はパッティングのスタッツが向上したブルックス・ケプカ(PHOTO/GettyImages)

4日目はパッティングのスタッツが向上したブルックス・ケプカ(PHOTO/GettyImages)

初日〜2日目:「疎外感」への恐怖と、温かい「おかえり」

初日のラウンド後、ケプカは意外なほど率直に心境を吐露した。

「誰も追放されたような気分にはなりたくない。ただ愛されたいんだ。それが人間の本性だと思う」

かつてヒール役を演じ、敵対心をエネルギーに変えてきた男が、復帰の舞台で最も恐れていたのはブーイングだった。しかし、彼を待っていたのはギャラリーからの温かい「おかえり」の声援だった。

「全ホールでその声を聞いた気がする。最高だったよ」

初日は1オーバー「73」と出遅れたものの、2日目には「68」をマークし、通算3アンダーで予選を通過。「とにかく4日間プレーしたかった」と語る通り、週末への切符をつかんだことで、彼の表情からは硬さが消え、本来の野獣のような鋭さが戻り始めた。

3日目:スタッツが示す「豪打」と「グリーン上の悪夢」

3日目、ケプカのゴルフは、彼の持つポテンシャルと課題を極端な形で映し出した。 スタッツを見れば一目瞭然だ。ドライビングディスタンスは驚異の333.7ヤードを記録し、フィールド全体で4位。PGAツアーを離れてもなお、そのポテンシャルはトップクラスであることを証明した。

しかし、グリーン上が悪夢だった。苦手とするポアナ芝に苦しみ、3日目の「SG: Putting(パッティングのスコア貢献度)」は-5.446。これはフィールド74位、つまりほぼ最下位に近い数字だ。「カップをかすりもしなかった」と自嘲気味に振り返った通り、3〜4フィートのショートパットすら決まらない。ショットでチャンスを作りながら、グリーンですべてを吐き出す。典型的な「試合勘の欠如」が露呈した一日だった。

最終日:深夜の修正と「カオス」への渇望

「パットの何が悪いのか、今からスマホで調べるよ」

3日目の会見でそう言い残して去ったケプカは、有言実行で動いた。土曜の夜、スコッティキャメロンのスタジオに数時間こもり、セットアップの修正を行ったのだ。

その甲斐あってか、最終日のSG: Puttingは-0.314(それでも43位だが……)まで改善。ドライビングディスタンスも316.4ヤード(ランク10位)と高水準を維持し、最終日は「68」をマーク。復帰戦をアンダーパーで締めくくった。

「半分は知らない顔」のツアーで、再び頂点へ

4日間を戦い抜いたケプカが、最も大きな変化として挙げたのが「選手の若返り」だ。

「この4年でだいぶ入れ替わった。正直、半分の選手は知らない顔だ」

かつて覇を競ったライバルたちは減り、見知らぬ若手が台頭するPGAツアー。しかし、その“浦島太郎”状態すら、今のケプカは楽しんでいるように見える。それは初日のホールアウト後のこの言葉に集約されている。

「息子がゴルフをする姿を見て、パパがすごい選手だと見せたくなったんだ。僕はゴルフに再び恋をした」

家族のため、そして自分自身のために戻ってきた場所。復帰戦の結果は56位タイ。優勝したジャスティン・ローズ――数少ない「知っている顔」であり、かつての好敵手――には19打もの大差をつけられた。試合勘の欠如は否めず、その背中はまだ遠い。

だが、次戦は彼が「カオス」と呼んで愛してやまない「WMフェニックスオープン」だ。

「あのカオスが大好きなんだ。楽しみで仕方がない」

巨大スタンドの狂騒の中で、この男はさらにギアを上げていくはずだ。かつてのライバルたちが待つ頂へ。トーリーパインズでの4日間は、その長い旅路の確かな第一歩となった。

復帰を前にケプカは何を語ったのか

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