
4日目はパッティングのスタッツが向上したブルックス・ケプカ(PHOTO/GettyImages)
初日〜2日目:「疎外感」への恐怖と、温かい「おかえり」
初日のラウンド後、ケプカは意外なほど率直に心境を吐露した。
「誰も追放されたような気分にはなりたくない。ただ愛されたいんだ。それが人間の本性だと思う」
かつてヒール役を演じ、敵対心をエネルギーに変えてきた男が、復帰の舞台で最も恐れていたのはブーイングだった。しかし、彼を待っていたのはギャラリーからの温かい「おかえり」の声援だった。
「全ホールでその声を聞いた気がする。最高だったよ」
初日は1オーバー「73」と出遅れたものの、2日目には「68」をマークし、通算3アンダーで予選を通過。「とにかく4日間プレーしたかった」と語る通り、週末への切符をつかんだことで、彼の表情からは硬さが消え、本来の野獣のような鋭さが戻り始めた。
3日目:スタッツが示す「豪打」と「グリーン上の悪夢」
3日目、ケプカのゴルフは、彼の持つポテンシャルと課題を極端な形で映し出した。 スタッツを見れば一目瞭然だ。ドライビングディスタンスは驚異の333.7ヤードを記録し、フィールド全体で4位。PGAツアーを離れてもなお、そのポテンシャルはトップクラスであることを証明した。
しかし、グリーン上が悪夢だった。苦手とするポアナ芝に苦しみ、3日目の「SG: Putting(パッティングのスコア貢献度)」は-5.446。これはフィールド74位、つまりほぼ最下位に近い数字だ。「カップをかすりもしなかった」と自嘲気味に振り返った通り、3〜4フィートのショートパットすら決まらない。ショットでチャンスを作りながら、グリーンですべてを吐き出す。典型的な「試合勘の欠如」が露呈した一日だった。
最終日:深夜の修正と「カオス」への渇望
「パットの何が悪いのか、今からスマホで調べるよ」
3日目の会見でそう言い残して去ったケプカは、有言実行で動いた。土曜の夜、スコッティキャメロンのスタジオに数時間こもり、セットアップの修正を行ったのだ。
その甲斐あってか、最終日のSG: Puttingは-0.314(それでも43位だが……)まで改善。ドライビングディスタンスも316.4ヤード(ランク10位)と高水準を維持し、最終日は「68」をマーク。復帰戦をアンダーパーで締めくくった。
「半分は知らない顔」のツアーで、再び頂点へ
4日間を戦い抜いたケプカが、最も大きな変化として挙げたのが「選手の若返り」だ。
「この4年でだいぶ入れ替わった。正直、半分の選手は知らない顔だ」
かつて覇を競ったライバルたちは減り、見知らぬ若手が台頭するPGAツアー。しかし、その“浦島太郎”状態すら、今のケプカは楽しんでいるように見える。それは初日のホールアウト後のこの言葉に集約されている。
「息子がゴルフをする姿を見て、パパがすごい選手だと見せたくなったんだ。僕はゴルフに再び恋をした」
家族のため、そして自分自身のために戻ってきた場所。復帰戦の結果は56位タイ。優勝したジャスティン・ローズ――数少ない「知っている顔」であり、かつての好敵手――には19打もの大差をつけられた。試合勘の欠如は否めず、その背中はまだ遠い。
だが、次戦は彼が「カオス」と呼んで愛してやまない「WMフェニックスオープン」だ。
「あのカオスが大好きなんだ。楽しみで仕方がない」
巨大スタンドの狂騒の中で、この男はさらにギアを上げていくはずだ。かつてのライバルたちが待つ頂へ。トーリーパインズでの4日間は、その長い旅路の確かな第一歩となった。


