PGAツアー「WMフェニックス・オープン」の会場、TPCスコッツデールのドライビングレンジ。プロアマ戦の喧騒をよそに、黙々とボールを打ち込む一人の選手がいた。周りにはスコッティ・シェフラーやブルックス・ケプカといった大型選手が並んでいる。その中で、彼の小柄さは際立っていた。身長は168cmとあるがこのフィールドではそれ以上に小さく見える。しかしその体から放たれるボールの初速、体の切れは素晴らしい。かつての田中秀道を彷彿させる。
画像: デービス・チャットフィールド(DAVIS CHATFIELD)。身長168cm。昨年コーンフェリーツアーで上位20名に入り、平田憲聖とともに2026年のPGAツアー昇格を決めた“小さな巨人”

デービス・チャットフィールド(DAVIS CHATFIELD)。身長168cm。昨年コーンフェリーツアーで上位20名に入り、平田憲聖とともに2026年のPGAツアー昇格を決めた“小さな巨人”

彼の名は、デービス・チャットフィールド(Davis Chatfield)。 昨季のコーンフェリーツアー(下部ツアー)を経て、今季からPGAツアーに昇格した26歳のルーキーだ。

帯同していたカメラマンによると、同じく下部ツアーから這い上がってきた平田憲聖が、彼のことを「あの子、凄くうまいんですよ」と漏らしていたという。 練習の区切りを見計らって彼にインタビューを申し込んでみた。

「もちろんOKです。でも、1時間後でもいいですか?」

昼時だったため、ランチ休憩だろうと考えた我々は早々に食事を済ませ、30分後に戻った。しかし、彼はまだそこにいた。食事ではなく、練習グリーンでパッティングを練習していたようなのだ。「1時間」は休憩までの時間ではなく、課した練習メニューが終わるまでの時間。約束の時間きっかりにパターを置いた彼は、終始にこやかに、丁寧な口調で語り始めた。

まず、この難コースをどう攻略するのか。

「僕の強みでもありますが、とにかくフェアウェイをキープすることですね。進むにつれて地面がかなり硬くなってくると思いますし、特に風が出てきたら、フェアウェイにいないと話になりません。だから、まずはフェアウェイキープ。セカンドショットのことはその次です」

下部ツアーからの昇格組が直面する「壁」について、彼は冷静に分析している。

画像: PGAツアーでひと際小柄なチャットフィールド。手前は同じくコーンフェリーツアーからの昇格したクリスト・ランプレヒト(こちらは203cmの長身)

PGAツアーでひと際小柄なチャットフィールド。手前は同じくコーンフェリーツアーからの昇格したクリスト・ランプレヒト(こちらは203cmの長身)

「ここは僕にとってまだ4試合目ですが、コーンフェリーツアーとは違いますね。あっちでは、間違いなくバーディ合戦になるようなセッティングでした。でもPGAツアーでは、先週(ファーマーズ・インシュアランス)のように『パー』が素晴らしいスコアになる場面が多いんです。パーを取ることがより評価されるというか。もちろん攻めるときは攻めなきゃいけませんが、ここでは誤魔化しが効きません。常にベストなプレーヤーが勝つ、そういう場所だと感じています」

謙虚な口調だが、その目は厳しい現実を見据えている。 彼はどのようにしてその技術を磨いたのか。そのルーツは、少々特別な環境にあった。

「ゴルフを始めたきっかけですか? 実は家の裏に9ホールのゴルフコースがある環境で育ったんです。2人の兄がいて、両親は仕事の間、僕たちをゴルフ場に置いていけば居場所の心配をしなくて済みましたから。恵まれていましたね」

「僕は幼い頃から負けず嫌いで、2人の兄にとにかく勝ちたくて仕方なかったんです。そしてついに勝てるようになった時、その感覚に病みつきになってしまいました。練習も好きだし、コースにいるのも好きで……本当に幼い頃に、ゴルフというスポーツに恋に落ちた感じですね」

素晴らしいスウィングの持ち主でもあるが、コーチについて尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「独学なんです。スウィングコーチをつけたことは一度もありません(笑)。もちろん、スウィングに少し違和感がある時にアドバイスを求めに行く知人は何人かいますが、決まったコーチはいないんです」

世界最高峰の舞台で戦う上で、コーチを探そうとは思わないのだろうか。

「今は特に探していません。自分の状態はかなり良いと思っていますから。メンタル面や、コースの攻め方について経験者にアドバイスをもらうことはあっても、スウィングに関しては今のままで十分だと思っています」

自分の感覚を信じ、必要な助言だけを取り入れて調整する。その自立した姿勢が、彼の強さを支えているのかもしれない。

しかし、現代のPGAツアーはパワーゲームだ。350ヤードを飛ばす大男たちの中で、小柄な彼はどう戦うのか。練習場で見せた、体格に見合わない飛距離の秘密について尋ねた。

画像: 丁寧で穏やかな語り口だが、その中に強い意志を感じさせるチャットフィールド

丁寧で穏やかな語り口だが、その中に強い意志を感じさせるチャットフィールド

「それはたぶん、ジムでのトレーニングの成果だと思います。プロになってから毎年、ボールスピードもヘッドスピードも少しずつ上がってきています。今はキャリーで平均280ヤードくらいですが、目標は295ヤードまで上げることです。その数字になれば、どんなコースでも攻めていけますから」

「正直に言うと、先週のコース(トーリー・パインズGC)は僕には長すぎると感じました。ティーショットでラフに入れるとランが10〜15ヤード減ってしまって、残り200ヤードでラフから打つことになる。だから、どのホールでも番手を1つ下げて打てるようになれたらいいなと思います。まあ、誰もがそう言うでしょうけど、僕はそれを手に入れたいんです」

平田憲聖が彼を評価していたことを伝えると、デービスは表情を崩した。

「ケンセイですね! 知ってますよ。去年のシーズンが進むにつれてかなり親しくなりました。僕たちは似たようなプレースタイルだと思います。彼は僕より少し飛びますね。彼と一緒に回ると、毎回6アンダーくらい出しそうな雰囲気があるんです。彼は本当に上手いです。ミスショットが大きく外れないし、常にスコアをまとめてくる。ショートゲームも素晴らしい。ティーからグリーンまで完璧ですよ。彼がこっち(PGAツアー)で勝つのは時間の問題だと思います。性格もすごくいいですしね」

同じような体格で、同じルートを歩んできた日米の若手選手が、互いにリスペクトし合っている様子がうかがえる。 最後に、今年の目標を聞いた。

「今年は、ルーキーとしてフルシード権を維持することですね。それは僕ら全員が目指していることだと思います。毎週何が待ち受けているかを知って、もっと居心地が良くなれば、結果もついてくるはずです。極端に大きな目標を立てているわけではありません。ただ、できるだけ長くPGAツアーでプレーしていたい。それが長期的な目標です」

インタビューを終えると、彼を待っていた二人の人物が歩み寄ってきた。スティーブさんとアナさん、彼のご両親だ。アメリカ人の父と、フィリピン人の母。彼の明るく丁寧な振る舞いは、この二人から受け継がれたものだろう。

画像: アメリカ人の父・スティーブさんとフィリピン出身の母・アナさん

アメリカ人の父・スティーブさんとフィリピン出身の母・アナさん

PGAツアーという巨漢たちが支配する戦場で、小柄な体躯で挑むデービス・チャットフィールド。平田憲聖がその実力を認め、黙々と練習を続ける実直なナイスガイが、大男たちにひと泡吹かせる日が楽しみだ。

PHOTO/Yoshihiro Iwamoto INTERPRETER/Yusuke Niwa


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