止まるのに、速い。「矛盾」に満ちたグリーン
「正直、どうやってこんな状態に仕上げたのか分からない。こんなグリーンは見たことがないよ」
モリカワが驚愕したのは、グリーンの状態だ。通常、リビエラといえば「硬くて速い」のが定石だが、今週は連日の雨により、コース全体が極端に軟らかくなっている。
「ラフからのフライヤーで打っても、どんなクラブでもグリーンでボールがピタリと止まるんだ」
しかし、異常なのはここからだ。ボールが落ちた瞬間に止まるほど軟らかいにもかかわらず、いざパッティングをする際の「転がり」は信じられないほど速いというのだ。アプローチはダーツのように止まるが、パットはガラスの上のように滑る。この「軟らかいのに速い」という矛盾したコンディションが、選手の距離感を狂わせている。
同日プレーしたローリー・マキロイも、この特殊な状況の餌食になった一人だ。18番ホール、フェアウェイからのセカンドショット。9番アイアンで放たれたボールはピンそばにキャリーしたものの、そこから強烈なバックスピンがかかり、なんと30フィート(約9メートル)も戻ってしまったのだ。
スピンがほどけない軟らかさと、下り傾斜をどこまでも転がり落ちるスピード。雨のリビエラは、晴天時とは全く別の顔で選手たちに牙を剥いている。
モリカワの意外な収集癖と「勝利のジンクス」
そんなタフなコンディションの中でも、暫定5位タイと上位に食い込んだモリカワ。先週の優勝と第一子妊娠の発表を経て、彼の精神状態は極めてリラックスしているようだ。 会見では、そんな彼の意外な一面、お茶目な「収集癖」が明らかになった。

ペブルビーチの鉛筆でリビエラをラウンドしていると語ったコリン・モリカワ(写真は25年AT&Tペブルビーチプロアマ、撮影/岩本芳弘)
実は彼、先週優勝したペブルビーチのスコア記入用「鉛筆」をこっそり持ち帰り、今週の試合でも使っているというのだ。
「ジュニアや大学時代から、良いプレーをしたコースや勝ったコースの鉛筆を余分に持ち帰る癖があったんだ。プロになってからは『もういいや』と思っていたんだけど、結局オーガスタ・ナショナルの鉛筆なんかは集め始めちゃってね(笑)」
ペブルビーチという象徴的な場所で勝てた記念の鉛筆。それをポケットに忍ばせ、今週の厳しいラウンドを戦っている。記者から「日曜日の優勝に備えて、リビエラの鉛筆ももう確保した?」と気の早い質問が飛ぶと、彼は笑ってこう答えた。
「いや、まだその心配はしていないよ」
優勝が決まってからでいい。そんな自信の裏返しとも取れる余裕の表情。矛盾に満ちたリビエラのグリーンを攻略し、彼が日曜日に「LAの鉛筆」をコレクションに加えることができるのか。充実の時を迎えている29歳のプレーから目が離せない。

