昨今、ゴルフメーカー各社が自社製品に特化した専用のフィッティングセンターを設立するなど、業界全体でクラブフィッティングへの機運がかつてないほど高まっている。しかし、そんなブームが到来するはるか昔、今から25年以上も前から「メーカーの枠組み」を超え、無数のヘッドとあらゆるシャフトの中からゴルファーに最適な一本を導き出す、科学的かつデータドリブンなシステムを構築した人物がいる。「COOL CLUBS(クールクラブス)」の創業者でありCEOを務める、マーク・ティムズ(Mark Timms)氏だ。

感覚論だったフィッティングに科学を持ち込んだ

膨大な組み合わせから、いかにして「最適」を導き出すのか。アメリカ・アリゾナ州にあるCOOL CLUBSのヘッドクォーターに出向いた我々取材班は、データに基づいたクラブ提案の仕組みを作り上げた先駆者に、フィッティングの本質について聞いた。

属人的な「職人の勘」に頼りがちだったクラブフィッティングに、いち早くデータ分析と科学のメスを入れたマーク氏。彼のキャリアは、意外にも銀行員から始まっている。

画像: Mark Timms。メーカーの垣根を超えたフィッティング行う「COOL CLUBS(クールクラブス)」CEO。アマチュアはもちろん、現役ツアープレーヤーのフィッティングも担い、同社の拠点は全世界で20カ所に及ぶ。マーク氏は計測機械などを自ら設計・製作するエンジニアとしての顔も持つ

Mark Timms。メーカーの垣根を超えたフィッティング行う「COOL CLUBS(クールクラブス)」CEO。アマチュアはもちろん、現役ツアープレーヤーのフィッティングも担い、同社の拠点は全世界で20カ所に及ぶ。マーク氏は計測機械などを自ら設計・製作するエンジニアとしての顔も持つ

「大学では財務、経済、そしてコンピュータサイエンスを学びました。卒業後の3年間は銀行で働き、そこでお金の動きやビジネスの構築方法を学んだのです。一方で、私の根底には常に『モノを組み立てること』への情熱がありました。ゴルフクラブはもちろん、それを測定する機械そのものを作ることにも強い興味があったのです」

1990年にコネチカット州で最初のショップを立ち上げて以来、彼は一貫して「メーカー公表値ではない、自社計測のデータ」にこだわってきた。その後、アリゾナ州スコッツデールへ移り、2000年に「HOT STIX」、2007年に現在の「COOL CLUBS」を創業。膨大なシャフトとヘッドを中立的な立場で比較検討できる、世界最高峰のフィッティング・システムを作り上げた。

「上手くなってから」ではない。フィッティングは上達への近道

日本のゴルファーの間では、「フィッティングはもっとスウィングが固まってから、上手くなってから受けるもの」という認識が根強い。しかし、数万人のデータを見てきたマーク氏はこの考えを明確に否定する。

画像: 現役のツアープレーヤーのクラブ調整も手掛ける

現役のツアープレーヤーのクラブ調整も手掛ける

「それは大きな間違いです。フィッティングの恩恵を最も受けるのは、実はアベレージゴルファーです。たとえばハンディキャップ25のプレーヤーなら、自分に合った道具を使うだけで、スウィングを変えずにHCを16や17まで簡単に下げられる可能性があります。逆にスクラッチプレーヤーやツアープロの場合、私たちが改善できるのはわずか0.5打や1打の世界。スウィングの欠点を道具の特性で補い、即座に結果を出せる一般ゴルファーこそ、フィッティングが必要なのです」

ショットデータだけでは不十分。最新AIと独自指標「LOAD INDEX」が導く真実

COOLCLUBSが他社と決定的に異なるのは、提案の根拠となる「データ」への妥協なき探求である。現在、多くのフィッティングスタジオに高性能な弾道計測器が導入されているが、マーク氏は「ヘッドスピードなどのデータだけでは、最適なシャフトは決められない」と断言する。

「同じヘッドスピードでも、スウィング中にクラブにかかる『負荷(ロード)』の大きさやタイミングは人によってまったく異なります。かつて私たちはこれを『テンポ』と呼び、長年の経験を持つ熟練フィッターの目利きで補完してきました。しかし私は、この目に見えない力を『実際に計測する方法』を探し続けてきたのです」

そこでCOOLCLUBSがいち早く導入したのが、スマホのカメラで3Dスウィング解析を行うアプリ「スポーツボックスAI(SBAI)」だ。同社はSBAIと共同で、独自の指標「COOL CLUBS LOAD INDEX」を生み出した。始動からトップまでの時間、手首のリリースにかかる時間、スウィング中の平均G(重力加速度)、シャフトの回転速度などを組み合わせた、COOL CLUBSのフィッターだけが使用できるオリジナルの数値である。

画像: インパクトにかけてのシャフトへの負荷のかかり方なども加味して、推奨スペックが導き出される

インパクトにかけてのシャフトへの負荷のかかり方なども加味して、推奨スペックが導き出される

「プレーヤーが数球打つだけで、指紋のように固有の『LOAD INDEX』が抽出されます。この数値とヘッドスピードを、私たちが独自に開発したシャフト解析ソフト『S3』に入力すると、アルゴリズムがその人の『S3 SWING SIGNATURE』を弾き出し、膨大なデータの中から最適なシャフトを推奨してくれるのです」

また、クラブヘッドに関しても「市場のすべてをまず疑う」のが彼らの流儀だ。自社開発のロボットを用いて無数のヘッドを実打テストしている。COOL CLUBS独自のマシンテストの一例を挙げると、キャロウェイの最新ドライバー「クアンタム」シリーズを計測したところ、コアモデルの「クアンタム MAX」が「クアンタム♦♦♦(トリプルダイヤモンド)」よりも低スピンという意外な結果が出たという。しかもテストはフェースセンターでのヒットだけではなく、上下やトウヒール方向にずらしても実施。その緻密なテストがあらゆるヘッドで行われ、日々膨大なデータが積み上がっていく。

画像: 社内では日々ロボットによるテストが行われ、膨大なデータが蓄積されていく

社内では日々ロボットによるテストが行われ、膨大なデータが蓄積されていく

精緻なシャフト計測システム「S3」、スウィング特性を丸裸にする「SBAI」、そして自社ロボットが弾き出した先入観のないヘッド検証データ。これらが融合することで、真にゴルファーに最適なモデルが導き出されていくのだ。

全ゴルファーを救うためのAI構想。「質の高いデータ」が世界を変える

現在、同社のフルフィッティングには4時間半の時間を要する。最高の体験であることは間違いないが、すべてのゴルファーが手軽に受けられるものではない。マーク氏の最終的な目標は、そのハードルを下げることにある。

「私の人生の目的は、できるだけ多くのゴルファーを助けることです。現在、私たちが育成した50名ほどの優秀なフィッターが全力を尽くしても、世界のゴルファーの1%をフィッティングできれば良い方でしょう。だからこそ、どこにいても誰もが恩恵を受けられる仕組みを作りたい。その鍵となるのがAIです」

現在、同社はSBAIから得られるスウィングデータ、弾道計測器のデータ、そして世界最大のゴルフ中古クラブ販売網を持つ「ワールドワイドゴルフ」の販売データをAIに集約する巨大プロジェクトを進めている。早ければ年内にも、スマホやシミュレーターのデータから、新品・中古を問わず最適なクラブを推奨するエンジンが完成するという。

「多くのメーカーや競合が『AIフィッティング』を謳っていますが、AIの精度は、学習させる『データ』と、それを設計する人間の『知識』に完全に依存します。コンピュータの世界には『Garbage in, garbage out(ゴミを入れれば、ゴミしか出てこない)』という格言があります。フィッターがメーカーの公表スペックをすべて読み込むのは不可能ですから、AIを活用するのは大賛成です。しかし、そこに入力するデータは、私たちが長年かけてS3やロボットテストで計測してきた『真実のビッグデータ』でなければなりません。正しくAIを訓練すること、これこそが我々の強みなのです」

「Play Better Golf(より良いゴルフを)」。マーク氏が情熱を傾けて作り上げたこの精緻なデータ分析の仕組みは、AIという新たな武器を手に入れ、これからもレベルを問わず、世界中のゴルファーに「1打を縮める喜び」を提供し続けるだろう。そして、この世界標準のフィッティング・メソッドは、日本でも東京(碑文谷)、そして名古屋(長久手)のCOOL CLUBSで実際に体験することができる。科学の力が導き出す「真実のクラブ」は、日本のゴルファーにとっても、スコアアップへの最も確かな近道となるはずだ。

画像: アメリカ・アリゾナ州スコッツデールにあるCOOL CLUBSのヘッドクォーター

アメリカ・アリゾナ州スコッツデールにあるCOOL CLUBSのヘッドクォーター

PHOTO/Yoshihiro Iwamoto


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