
2日間首位をキープし、週末に挑むオーストン・キム(PHOTO/Getty Images)
酷暑を乗り切る「1000キロカロリー」の掟
高温多湿で、体力が容赦なく削られるシンガポールの過酷な気候。この環境下で最高のパフォーマンスを維持するために、キムは独自の「掟」を自らに課している。それは、ラウンド中の徹底したエネルギー管理だ。
「水分やナトリウムをたくさん摂り、電解質レベルを保つのはもちろんですが、今年はラウンド中に最低でも700〜800キロカロリーを摂取するようにしています。そして今週は、コースにいる間は最低でも1000キロカロリーを摂るようにしています」
今年からベースラインとして700〜800キロカロリーの摂取を徹底している彼女だが、今週の過酷な環境下では、意図的にその基準をさらに引き上げているのだ。暑さで食欲が落ちる中でも、車のように「燃料」を常に満タンにしておくことで、終盤までバテない強靭な肉体と集中力をキープしている。
「4パット」を引きずらない究極のマインドセット
しかし、彼女の本当の恐ろしさは肉体ではなく、その「強靭なメンタル」かもしれない。
2日目の16番ホール。約6.4メートル(21フィート)のバーディパットから、彼女はなんと「4パット」を喫し、痛恨のダブルボギーを叩いてしまった。首位争いの中でのこのミスは、普通の選手なら完全に心が折れ、その後のホールを引きずってもおかしくない悪夢である。しかし、彼女の反応は驚くほどあっさりしたものだった。
【動画】キムの2日目ハイライト。あの距離から4パット!? 9:37~【LPGA公式YouTube】
Auston Kim kept her place on top after the second round in Singapore
www.youtube.com「あまり気にしないようにしています。それがゴルフですから。運が悪かっただけ。人生そんなものです」
この達観したポジティブな姿勢の裏には、昨年から師事しているメンタルコーチ、リック・セッシングハウス(ジュニア時代からコリン・モリカワを指導)との取り組みがある。
「結果は自分のやっていることの副産物に過ぎない」と語る彼女は、未来(スコアや優勝)を心配しすぎる自身の癖を自覚し、徹底的に「目の前の一打」にフォーカスする訓練を積んできた。
「今、この瞬間のすべてを楽しもうとしています。ゴルフをして競争しているこの瞬間が、最も『自分が生きている』と実感できる時だから」
週末への期待。初優勝は目前か
第1ラウンド終了時を含めなければ、LPGAツアーでラウンド終了時に単独首位に立つのは、彼女のキャリアにおいてこれが初めてのことだという。
「4パット」すら笑い飛ばす究極のマインドセットと、過酷な環境を計算し尽くしたエネルギー管理。心・技・体が完璧に噛み合ったオーストン・キムが、週末もこの「ブレない強さ」を維持できれば、悲願のツアー初優勝は決して遠い夢ではない。


