「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回もローリー・マキロイのアイアンを切り口にカタログ数値に表れない形状による違いについて考えてみた。
画像: 元のマッスルバックアイアンに戻したローリー・マキロイ(Photo/Getty Images)

元のマッスルバックアイアンに戻したローリー・マキロイ(Photo/Getty Images)

調子のいいときにいろいろ試す

みんゴル取材班(以下、み):先月、ローリー・マキロイがアイアンをマッスルバックの「RORS PROTO」からキャビティの「P・7CB」に替えた理由について考察をお願いしました。ところがその記事を配信した同じ日にマキロイは「RORS PROTO」に戻してしまいました。そのリベンジというわけではありませんが、改めてアイアン選びのポイントを教えてください。マキロイは「ブレードの長さの違いで球が右に出るようになった」と元に戻した理由を説明したようですが、他にもマッスルバックとキャビティで違いはありますか?

宮城:マキロイも話しているようにキャビティがまったく使えなかったというわけではありません。ただ、マキロイに限らずヘッドスピードがケタ違いに速い選手は左に行かせない打ち方が体に染み込んでいるので、大きなヘッドを使えば右に行きやすくなるのは確かです。とくにラフから打つときには抵抗が増えてヘッドを返しにくいのでよけいに球がつかまりにくくなります。また、マッスルバックとキャビティでは球の飛び方も変わってきます。マキロイは昔からアイアンのスピン量や飛び姿を大事にしてきたプレーヤーなので、それにも違和感があったのではないでしょうか。

み:おそらくロフトも同じように調整されていたと思いますが、ヘッドの形状でそんなに違いが出るものですか?

宮城:重心の高さや深さも違うので打ち出しの初期条件が変わってきます。マッスルバックは球が低く出てから急上昇する弾道。キャビティは最初からポンと高く上がります。どちらが優れているとは一概にいえませんが、スピンの少ないキャビティのほうがラフから打ったときにフライヤーになりやすい。マキロイクラスになるとラフからでもスピンをコントロールして打ちますが、それをやりやすいのがマッスルバックということなのでしょう。

み:左右だけでなく縦の感覚も大事なんですね。「Qi35」ドライバーのときもそうでしたが、マキロイでもクラブ選びで行ったり来たりすることがわかって少し親近感が湧きました。プロはどんなときにどんな理由でクラブを替えるのですか?

宮城:一番はメーカーが新しいものを出してすすめてくるからです。もし契約がなければほとんどのプロはクラブを替えたがりません。作り手側からすれば新しいものをどんどん使って欲しいけれど、使う側はよりよいパフォーマンスを求めるのでマキロイのように古いクラブに戻ることも当然あります。ちなみに石川遼くんは54を出した翌週にクラブを替えたし、丸山茂樹さんも日本シリーズで勝ったアイアンを誰かにあげていました。亡くなったジャンボ尾崎さんもぶっちぎりで勝ったその日の夜に違うクラブを試したそうです。

み:時間をかけて調整して結果を出したわけですし、勝って験のいいクラブなのに即替えてしまうなんて信じられません。

宮城:トップに立つ人ほど現状に満足せずよりよいものを求めます。逆に調子が悪いときに何かやってもよくなることは稀です。たいていは余計に悪くなるのでプロから相談されても僕たちは積極的にはすすめません。マキロイだってさほど調子が悪いわけではなかったと思います。

み:そのことはアマチュアにも当てはまりますか? 下手の横好きでいろいろと手を出したくなってしまいます。

宮城:新しいクラブに替えるのもゴルフの楽しみの一つなのでそれは否定しません。ですがなるべく調子のいいときに色々なクラブを試しておくことが大事です。そうすれば調子が悪くなったときに対処しやすくなります。


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