アイアンは狙ったところに止めるクラブ。ここがぶれてはいけない
テスターは長年タイトリストのアイアンを愛用してきた岩﨑桂介プロ。現在のエースアイアンは最新の「T150」だ。

岩﨑桂介(いわさき けいすけ)。1978年生まれ。タイトリストひと筋のツアープレーヤー。最新のT150アイアンを使用中
「年齢とともに徐々に飛距離が落ちてきたので、T100ではなくてT150に。なんならやさしいT250にすればよかったかも、なんて思うことすらありますよ」と笑う。シャフトはダイナミックゴールドのS200。まずは自前のT150について、その使用感を聞いた。
「T150にしたのは、アイアンにやさしく飛ばせる性能が欲しかったからです。特にロングアイアンをやさしく打ちたい。T100に比べてT150はミスヒットに寛容で、少々芯を外してもボール初速が落ちにくい点がいいですね。ただ、8番、9番、PWあたりはT100でもいいなと思うこともあります」

岩﨑プロの実使用アイアン。コントロールは大前提だが、少し距離を補うためにT150をチョイス
岩﨑プロのアイアンショットは、言わば「職人芸」。弾道を自在に操る彼ならではのアイアン論がある。
「ボールの高さは状況によって結構変えて打ちます。風がある日は特にですね。キャリーを出したい時は高く打ち出しますし、距離を出したい時はやや低めの中弾道で強い球を打ちます。私はドローヒッターなので、少し右に打ち出すイメージが明確で、遊び感覚で曲げるイメージもあります。ちょうど、ボウリングの『ポケット』に入れる感覚みたいに」
イメージはボウリングのポケット狙い

ドローヒッターの岩﨑プロは、出球を右にイメージ
ボウリングのポケットとは、1番ピンと3番ピンの間(右投げの場合)のこと。ここにドロー回転のボールを入れることでストライクの確率がアップする。ゴルフでは、ピンを直線的に狙うのではなく、風やグリーンの傾斜を計算し、最も確実にピンに寄る「最適な進入ルート」を逆算して球を操る。これが岩﨑プロの感覚だ
「コントロールが大切ってことです。狙ったところに打つのがアイアンですから」と岩﨑プロ。数あるアイアンの中でタイトリストのTシリーズを選ぶ理由は、「もともとAP2アイアンを使っていたこともあり、そのわずかな弾き感や芯の広さが助けになるから」だという。
一方で、プロならではの鋭い指摘も。「7番と8番では、ターフの取れる量が変化するんです。でも、弾道のギャップが少ないのがTシリーズの凄さですね」
このプロの感覚に対し、今回試打のサポートをしてくれたタイトリストゴルフクラブ フィッティングスペシャリストの長登将士さんが理論で応える。

タイトリストゴルフクラブ フィッティングスペシャリストの長登将士さん(右)。同社のクラブの設計思想、フィッティングメソッドを熟知する
「それは、重心の高さを番手別にしっかりと作り分けているからです。加えてT100、T150、T250、T350と、もちろん4モデルすべてで重心特性は異なります。フィッティングに来られるアマチュアの方でも、『やさしいT250が合うと思っていたのに、実際に打ってみたらT100がぴったりだった』、というケースは珍しくありません。重心設計は、個々のスウィングに対して結果を左右する重要な要素なんです」
ツアーモデルの真髄「T100」と、高初速&許容性の「T150」
理論と感覚のすり合わせが済んだところで、Tシリーズ4モデル(7番アイアン)の打ち比べがスタート。まずはモダンツアーアイアンの「T100」から。

T100アイアン。7番のロフト33度。PGAツアーにおいても高い使用率を誇る(写真は調整可能なフィッティング用ヘッド)
「私が使っているT150に比べて、構えた感じが若干小ぶり。シビアかなと思っていたんですが、改めて打つとT100も凄くいいですね」
数球打っただけで、トラックマンの数値が岩﨑プロに適していることを示す。
「操作性がいいし、振り抜きも抜群です。ヘッドが小ぶりな分、シャープに振り抜ける感じがします。逆説的になりますが、小ぶりだからこそ集中して芯に当てやすいとも言えますね。いや、慣れるとこっちのほうがいいかも(笑)。T100は難しいなんて声も聞きますし、私もそう思っていましたが、決してそんなことはありません。ボールスピードもしっかり出るし、自分のT150とほぼ同じ距離を飛ばせます」
【T100(7I)の試打データ】
・ボール初速:51.1m/s
・打ち出し角:17.3度
・スピン量:5499rpm
・落下角度:45.7度
・キャリー:164.1Y
・トータル:170.3Y
※計測トラックマン。ベスト3球の平均
続いて、ファストツアーアイアン「T150」。岩﨑プロのエースモデルだ。バシュッ!という分厚いインパクト音とともに、強い球で飛んでいく。

T150アイアン。7番のロフト32度。マッスルチャネルを内蔵し、初速と打ち出し角が向上する(写真は調整可能なフィッティング用ヘッド)
「ボールスピードが速い。弾きの良さという点では、T100より上です。こちらはヘッドが若干大きくなった分、単純に当てやすさを感じます。気持ちが楽というか、安心感がありますね。当てやすさはもちろん、センターを外した時でも飛距離のロスが少なくて“やさしさ”を感じます。ロフトが立っているからか、T100に比べると少し高さは抑えられ、楽に前へ飛ばせますし。『タイトリストは難しい』、なんて思っている人は、ぜひ一度打ったほうがいいです」
これを見た長登氏がデータをチェック。
「スピンが少し減った分、落下角もやや緩やかになりました。実は、岩﨑プロの入射角もクラブに合わせて自然に変化しています。T100ではダウンブローで打ち込んで入射角も大きかったですが、T150では入射角がやや浅くなり、ボールを『拾っていく』感覚になったはずです。先ほどプロが『7番と8番でターフの取れ方が違う』と仰っていましたが、7番までは拾って打ちやすいT150、8番以下はしっかり打ち込んでコントロールするT100、というふうにモデルをブレンド(コンボ)するのもアリだと思います」
【T100(7I)の試打データ】
・ボール初速:51.7m/s
・打ち出し角:18.0度
・スピン量:4669rpm
・落下角度:44.0度
・キャリー:165.3Y
・トータル:174.4Y
驚異の飛びと高さ「T250」と「T350」
次はディスタンスツアーアイアン「T250」。

T250アイアン。7番のロフト30.5度。飛距離特性に優れる中空構造ながら打感の良さにも定評がある(写真は調整可能なフィッティング用ヘッド)
「おお、また一段と弾き感が強くなりますね! 高さもしっかり出てくれるし、単純に飛んでいます」と岩﨑プロの表情が明るくなる。
「この軟らかいけど弾くという打感、実は好きなんです。いかにも飛んでいる気がして。当たれば飛ぶ、これが気持ちを楽にしてくれる。やさしく打っていけるアイアンです」

「楽な気持ちで振れる。T250はそこが好きです」(岩﨑プロ)
長登氏が補足する。
「ロフトは少し立って球も強くなりましたが、トラックマンのデータを見ると、止まる目安の落下角度『45度』をキープしている点に注目してください。少し前のデータですが、落下角度の平均はLPGAで約47度、PGAツアーで約51度です。彼らはそれだけ高い弾道で上からグリーンを狙っている。落下角度は要注目です」
つまり、T250は「飛ぶ」だけでなく、ツアー基準の「止まる」弾道をアマチュアにもたらしてくれる武器なのだ。
【T250(7I)の試打データ】
・ボール初速:52.0m/s
・打ち出し角:17.9度
・スピン量:4867rpm
・落下角度:45.4度
・キャリー:168.7Y
・トータル:176.3Y
最後に、ゲームインプルーブメントアイアン「T350」をテスト。

T350アイアン。7番のロフト29度。こちらも中空構造。ヘッドサイズは大きめだが形状はシャープ。飛距離と寛容性はシリーズ随一(写真は調整可能なフィッティング用ヘッド)
「ロフトは一番立っている(29度)のに、スパーンと高く上がって飛んでいく感じが非常に強い。弾く感じで、いかにも飛んでいるぞ、という手応えがあります。球は高く上がるし飛距離も出る。しかも落下角度はロフト33度のT100とほぼ同じだけ出ています」
寛容性の高さに驚きつつも、「ただ、私にとっては少しヘッドがもたつく感じもあって、細かなコントロールを考えるとタイミングが合いづらい気がしました。でも、ドカーンと飛ばすロングアイアンとしてバッグに入れるのは絶対にアリですね」と評価した。
【T350(7I)の試打データ】
・ボール初速:53.0m/s
・打ち出し角:15.9度
・スピン量:4477rpm
・落下角度:44.1度
・キャリー:174.6Y
・トータル:185.8Y
究極の「コンボセッティング」を見つけ出す
4モデルの特性が明らかになると、「どうモデルを組み合わせるか」に興味が湧く。岩﨑プロを例にフィッティングが始まった。

ロングアイアンに至るまで丁寧に打って「本当に自分に合う」アイアンを探す
「タイトリストには『3D』理論があります。そのなかの『D』のひとつが『Distance Control』です。これは単に飛距離を出すということではありません。番手ごとに均等な飛距離の階段を作れるか、ということです。その明確な基準になるのが『ボール初速』。番手間のボール初速のギャップが『2.24m/s』あれば、番手ごとのキャリーの差がしっかりと出ます」(長登さん)
岩﨑プロがT100の7番を打つと、ボール初速は52.0m/s。理論上、5番アイアンでは初速56.5m/sが必要になる。しかし、T100の5番を打ってみると、初速は55.7m/s。つまり、T100のままでは距離の階段が適正に刻めないのだ。
そこで、T150の5番アイアンに変更すると、初速は56.7m/sにアップし、見事に理想値をクリア。さらにT250の5番を打つと、初速56.9m/sを記録した。T150と数値は近いが、着弾点のまとまり(バラつきの少なさ)は明らかにT250が上回った。
「T250は、UT(ユーティリティ)型アイアンを少し小さくしたような顔つきで、見た目に違和感がないし、凄く振りやすいです」と岩﨑プロも絶賛。
「データも振り感も、5番アイアンはT250がベストですね」と長登さんも太鼓判を押す。

5番アイアンのテストデータ。黄・T100、青・T150、赤・T250。T250の球のまとまりが際立つ
さらに、岩﨑プロは「できれば4番アイアンもバッグに入れたい」と希望。基準となる4番アイアンのボール初速は「58.7m/s」だ。
T100の4番は57.0m/sで届かず。T150の4番は58.6m/sでほぼクリアしたが、球のまとまりに欠けた。T250は57.9m/sと、ややミートにムラが出たことでT150を下回る逆転現象が起きた。
そこで登場したのが、「T350」の4番アイアンだ。
打つと初速はなんと「59.6m/s」まで上昇し、基準を大きくクリア。特筆すべきは、220ヤード先のターゲットに対してボールが恐ろしいほど揃ったことだ。
「ボールが伸びて飛んでいく感じが強く伝わってきて、これなら4番アイアンとしての役割をきっちり果たしてくれそうです!」(岩﨑プロ)

4番アイアンのテストデータ。青・T100、赤・T150、緑・T250、白・T350。岩﨑プロの場合は、距離も方向性もT350が優れていた
一連のテストを経て、長登さんが結論を出す。
「岩﨑プロがアイアンをブレンド(コンボ)するとすれば、4番はT350、5番はT250、6番以下はT100、というセッティングが理想的でしょう。一般のアマチュアの方でも、『8番アイアンより上の番手になると、どれを打ってもキャリーが同じになってしまう』という悩みを頻繁に聞きます。そういう場合こそ、今回のようなフィッティングを体験して、適正な飛距離の階段を作ることが重要です。しっかり番手間のギャップが作れていれば、コースに出た時に戦略のイメージがとてもシンプルになりますから」

職人肌のプロが、最新のテクノロジーと緻密なフィッティングによって、自分でも想定していなかった「コンボセッティング」に辿り着いた。もちろんこれは、距離のギャップを中心に考えた一例に過ぎない。ロングアイアンで低い球を打ちたい、すべてを同じ感覚でコントロールしたいというプレーヤーであれば、例えば全番手をT100で揃えるのも正解だ。
「自分にとって完璧なアイアンセット」は、既製品の箱の中にあるとは限らない。タイトリスト「Tシリーズ」が持つ4つの個性を掛け合わせることで、あなたのスコアは大きく変わるはずだ。

緻密なデータ収集と実際の弾道の両方を確認できる国内では稀有な施設だ
ザ・カントリークラブ・ジャパン(千葉県)にある「タイトリスト フィッティング センター」。屋内の打撃スペースから、300ヤード超の屋外フィールドに向かってショット。実際のボールフライトをチェックしながら、最先端のフィッティングプログラムを受けられる。グリーンも2面完備し、リアルな環境でのウェッジフィッティングも可能
PHOTO/Takanori Miki
