松山英樹が試合で使った「ツアーAD FI」ってどんなシャフト?
GD 前回(#65)では、「26ベンタスTRブルー」の試打分析をお願いしましたが、プロツアーで根強い人気といえば、グラファイトデザインの「ツアーAD PT」、そして「DI」があります。これらはもはや「定番」として愛されています。
「PT」は登場から20年近く経ち、これだけヘッドが進化している中であっても今なお使われ続け、「DI」も松山英樹プロが使い続けることで高い人気を維持しています。そもそも、「PT」や「DI」と、近年大人気の「ベンタス」とは何が違うのでしょうか?
長谷部 「PT」が20年近く定番であり続けているというのは、結果としてそうなった部分も大きいですが、非常に興味深い現象です。スチールシャフトで言えば「NSプロ 950GH」や「ダイナミックゴールド」のような、“なんらかのモノサシになるシャフト”にまでなってしまった感がありますね。
そこを紐解くと、プロにとっての振りやすさ、安定感、自然なしなりがありつつ、アマチュアも使える。この「癖のなさ」こそが評価の核心ではないでしょうか。
GD 癖のなさ、ですか。
長谷部 はい。「癖のなさ」という意味では「ベンタス」にも通じますが、ベンタスはアメリカ仕様の「標準的な、人気のしなり方」をベースにしています。一方で「PT」が生まれた当時は、まだヘッドが今より小さい時代(400cc前後)でした。日本人の特性に合わせ、ヘッドがターンしやすく、タイミングが取りやすいという評価で定着していきました。
いうなれば、「日本生まれ、日本育ちのシャフトが『PT』」であり、「アメリカ生まれ、アメリカ育ちが『ベンタス』」なんです。市場とゴルファーの特性が明確に違う中で生まれた、それぞれの市場における「標準」なんだと思います。
GD 「ベンタス」はヘッドの進化、特に先端の強さが現代のヘッドにマッチしていると言われます。しかし「PT」も、「ツアーステージ X-DRIVE 405」に採用されてから、ヘッドサイズが約60ccも大きくなった今の「大慣性モーメント(MOI)」のヘッドに挿して使っている選手がいます。これはなぜでしょう?
長谷部 完全にマッチしているとはメーカーも言わないでしょうが、やはりプレーヤーの「好み」と「振り心地の設計」が不変なんです。ある方から聞いた話ですが、20年前と今のカーボンシートでは、素材自体が全然違います。
昔の素材は、良くも悪くも樹脂が多めで、シートが厚かった。今は樹脂の改良が進んで、薄くて強いものが主流ですが、昔の素材ならではの「打感」や「重厚なフィーリング」がナチュラルに効いているのではないか、と個人的には感じています。
時々、「PT」や「DI」の限定版である高弾性設計モデルが発売されますが、フィーリングの違いがあるとネットでの書き込みも見られたりしますね。
GD 今日は長谷部さんに、最新のテーラーメイド(Qi4Dコアモデル)に「PT-5S」を挿して打っていただきましたが、いかがでしたか?
長谷部 個人的な感想としては、やはり打ちやすいですね。ヘッドが大きくなっても、このタイミングの取りやすさは変わらないなと再認識しました。ただ、センターヒット時は最高に気持ちよく飛びますが、打点が「トウ側」に外れた時の当たり負けは若干気になりました。
僕は打点がトウ側に外れやすいのですが、そうなるとフェースが開いて右に行ったり、逆に深く入ると左に行ったりという傾向が、「ベンタス」よりも強く出る印象です。
GD 「ベンタス」と打ち比べると、その差は明確ですか?
長谷部 どっちが打ちやすいかと言われたら、間違いなく「PT」です。でも、「当たり負けせず、曲がらないのはどっち?」と聞かれたら、それは「ベンタス」ですね。
GD 究極の選択ですね。長谷部さんならどっちを使いますか?
長谷部 難しいですね……。両方持っておきたい(笑)。大MOIヘッド、例えば「PING G440LST」に「ベンタス」で安定したフェードをイメージしたいし、「GT3」のやや小ぶりのヘッドに「PT」で綺麗なドローを打ちたい。
GD グラファイトデザインといえば、「PT」と並ぶ巨頭が「DI」です。松山英樹プロの代名詞ですが、新作の「FI」をテストしているという報道がありました。この「FI」はベンタスに近い部分があるのでしょうか?
長谷部 「GC」が「PT」の最新版だったのに対し、「FI」は「DI」の大型ヘッド対応版という位置づけに近いですね。最大の特徴は、中間から先端にかけてのマンドルの形状を変えて、若干太くしたことですかね。
GD マンドル?シャフトを巻くときの「芯棒」のことですか?
長谷部 そうです。芯棒の太さや形状が変わると、シャフトの挙動や剛性が劇的に変わります。新たな芯棒の金型を作るというのは非常に大きな投資と言われていますね。
「ベンタス」が“部分的な特殊素材(ベロコア)”によって先端を硬くしたのに対し、「FI」は“形状(マンドルの太さ)”によって、大型ヘッドに負けない剛性を作ってきた。これがグラファイトデザインの出した答えだと思います。
GD 松山プロもマスターズに向けて調整中だと思いますが、「DI」から乗り換える可能性はありますか?
長谷部 十分にあると思います。距離もそうですが、やはり「フェアウェイキープ率」が上がらなければ変える意味がない。松山プロがこれを選べば、大型ヘッドとのマッチングが証明されることになります。
GD 今回「FI」の5Sも試打してもらいましたが、感触はどうでしたか?
長谷部 やはり「当たり負けしない」ですね。芯を外してもヘッドの挙動が安定しています。「DI」の振り感を持ちつつ、大型ヘッドでも当たり負けしない。
ヘッドの開閉が大きいスウィングの人には、「DI」や「PT」はタイミングが合いやすいですが、大型ヘッドでその打ち方が合うかは別問題。その点、「FI」は「自分のスウィング特性を維持したまま、現代のヘッドに対応させてくれる」という期待を持てるシャフトでした。
GD 改めて“ベンタス人気”の背景をどう見ますか?
長谷部 フジクラがアメリカ市場向けに作ったブランドであり、三菱の「テンセイ」と同じ戦略ですね。トッププロの活躍もあり、PGAツアーのトレンドがそのまま日本にも浸透しました。一説にはPGAツアーの飛距離やヘッドスピードは飛ばし屋においては年々上がっているらしく、そのパワーに耐えうるシャフト設計が望まれているのだと思います。
そして昨今のトレンドとして「LS(ロースピン)」モデルであってもMOI(慣性モーメント)が大きいヘッドが主流です。打った瞬間にシャフトがよじれてしまったら、せっかくのヘッド性能が活かせない。だから先端が強い「ベンタス」が求められていた、それにフジクラが対応したということでしょう。
GD アマチュアが「5S」や、あるいは今回用意した「5R」を選ぶのはどうでしょう?
長谷部 「人気のシャフト=飛ぶシャフト」と考えがちですが、「ベンタス」は“曲がらないシャフト”だと言い切ったほうがいい。ヘッドスピードが45m/sくらいあれば5Sでその恩恵をフルに受けられますが、40m/s前後の人が5Rを選んでも、飛距離が劇的に伸びるわけではありません。ただ「安定感」という安心感は手に入ります。
結局、第一優先は「振りやすさ」です。今回、打たせていただいた2つのブランドの中では、操作性や一発の飛びの魅力を取るなら「ツアーAD」、徹底した安定を求めるなら「ベンタス」。この二択を自分のスウィングと相談するのが、現代のシャフト選びの正解かもしれませんね
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