モリカワとスピースが直面する“異質な硬さ”
2日目を終えて3位タイの好位置につけるコリン・モリカワは、ベイヒルの難しさをオーガスタ・ナショナルと比較してこう語る。
「ティーショットの視点で見れば、このコースはオーガスタよりもはるかに狭い。そして、グリーンの跳ね方が全く違う種類のテストになっているんだ」
さらに、マスターズ覇者であり、オーガスタの勝ち方を知るジョーダン・スピースの言葉はより深刻だ。彼でさえ、今年のベイヒルのグリーンには手を焼いている。
「グリーンに摩擦が全くないんだ」

25年全米オープンでのスピース。ベイヒルのグリーンの硬さはこのときと同じくらいと話す(撮影/岩本芳弘)
スピースはこの硬さについて、「こんな状態は、全米オープンか、かつて5月に開催されていた頃のザ・プレーヤーズ選手権くらいでしか見ない」と証言する。
また、単独首位に立つダニエル・バーガーも「パターを置いただけで滑ってしまいそうになるほど摩擦がない」と語るように、冬芝であるドーマントバミューダが極度に乾燥し、ボールが止まらない滑るような速さを生み出しているのだ。オーガスタのガラスのグリーンとはまた異なる、理不尽とも言える硬さが選手たちの技術と精神力を削っている。
マキロイ、父とのオーガスタ旅行と“さらなるスーパーショット”
マスターズといえば、世界中のゴルフファンが最も注目するのが、昨年ついに「キャリアグランドスラム」の偉業を達成したローリー・マキロイの、ディフェンディングチャンピオンとしての帰還だ。今週の会見で、マキロイは最近、父親と一緒にオーガスタ・ナショナルへ足を運び、優勝後初めてとなるラウンドを行ったという心温まるエピソードを披露した。

25年マスターズでのマキロイのアイアンショット(撮影/岩本芳弘)
そのラウンド中、昨年彼が優勝を決定づけた栄光の15番ホール(パー5)で、当時と同じシチュエーションを再現するように7番アイアンでセカンドショットを放ったという。「それが、ほぼカップインするような素晴らしいショットだったんだ。実際のトーナメントで打ったのより良いショットで、カメラに収めておきたかったくらいだよ」と、マキロイは嬉しそうに振り返った。
今や彼が当時使った7番アイアンは、レイモンド・フロイドやベン・ホーガンと共有する「チャンピオンズ・ロッカールーム」に誇らしく展示されている。当時よりさらに完璧な一打を放てた理由を、「あの頃より、少し強くなったからね。ジムでトレーニングを積んだ成果さ」と語る。この言葉には、長年の悲願を成し遂げ、絶対の自信を深めている現在のマキロイの充実ぶりが表れている。
そんなマキロイは、このベイヒルでも大舞台を見据えたマネジメントを徹底している。「ここではパー5で確実にスコアを作り、それ以外のホールでは忍耐強くプレーする必要がある」。リスクを避け、チャンスを確実にものにする。その戦い方は、まさにオーガスタで連覇を果たすために必要な「王者のゴルフ」そのものだ。
極限のサバイバルを制するのは誰か
「パーが素晴らしいスコアになる」と選手たちが口を揃える、極限状態のベイヒル。深く絡みつくラフと、摩擦ゼロの硬いグリーンが織りなす罠は、一瞬の気の緩みも許さない。
しかし、この理不尽なまでの難しさを乗り越えた者だけが、1カ月後のオーガスタで最高のパフォーマンスを発揮する権利を得る。歴代メジャー王者たちが牙を研ぎ澄ますこのサバイバルレースを制し、春のオーガスタへと最大の弾みをつけるのは果たして誰か。過酷な週末の展開から、一瞬たりとも目が離せない。
