LIVゴルフ第3戦「香港大会」の3日目が終わった。リーダーボードの最上段には、通算17アンダーで首位タイに立つジョン・ラームの名前がある。そして、彼と同じ首位タイにいるのがトーマス・デトリーだ。この二人が最終日の最終組で直接対決を迎えることは、単なる優勝争いという枠に収まらない「数奇な運命」と言える。なぜなら、2月28日にアメリカとイスラエルがイランに対して実施した「大規模な戦闘作戦」に端を発する中東エリアでの移動トラブルで、絶望的な状況に陥っていたデトリーを救い出した恩人こそが、他ならぬラームだったからだ。
画像: 救った男ジョン・ラームと救われた男トーマス・デトリーが首位タイで最終日最終組で激突する(PHOTO/LIVゴルフ)

救った男ジョン・ラームと救われた男トーマス・デトリーが首位タイで最終日最終組で激突する(PHOTO/LIVゴルフ)

ラームが明かした緊迫の裏側と「Bプラン」

「あの不確実な状況下で、飛行機を用意してくれたジョンの寛大さは信じられないほどだ」とデトリーが語った、ラームのプライベートジェットによる救出劇。その劇的なエピソードの裏側について、3日目を終えたラーム自身が重い口を開いた。

彼の口から語られたのは、我々が想像する以上の緊迫した状況と、最悪の事態を想定した「Bプラン」の存在だった。

「刻一刻と環境が変化していく中で、一時は目の前が真っ暗になるような状況だった。ある時点では、彼らが香港に来ることは極めて困難だと思われたんだ」

ラームは当時の切迫した状況をそう振り返る。もしこのまま香港への移動が不可能になった場合、立ち往生している選手たちはどうなるのか。そこでラームは、信じられないような独自のバックアッププランを手配し始めていた。

「違う脱出ルートを使って、彼らをヨーロッパへ避難させることを考えていた。彼らがスペインに到着したら、そこで安全に練習環境を整えられるように手配を進めていたんだ」

一人の選手が、他のチームの選手たちのためにそこまで動くのか。それはもはやキャプテンという枠を超え、ゴルフ界を牽引するリーダーとしての驚くべき行動力と責任感だった。

「試合より安全が最優先」若手への気遣い

なぜ、彼はそこまでして他者を救おうとするのか。ラームの行動原理の根底には、彼が育ってきた環境で培われた確固たる価値観がある。

「それはシンプルに、私の『義務』だと思っている。誰かを助ける能力と環境が自分にあるのなら、そうしなければならない。そういう価値観で私は育てられたんだ」

特にラームが心を砕いたのが、経験の浅い若手選手たちのメンタルケアだった。パニックに陥り、試合に出られないかもしれないと焦るケイレブ・スラットに対し、ラームはこう声をかけたという。

「トーナメントのプレーのことは一旦忘れよう。今はとにかく、君を安全な場所に避難させることだけに集中するんだ。香港に行けるかどうかは、安全を確保してから考えればいい」

無事に香港にたどり着いた彼らの躍進を見つめ、ラームは優しい笑顔を見せた。

「彼らが無事にここにいること自体が驚きだし、それこそが最も重要なことなんだ。極度のストレスと移動の疲労、そして練習不足の中で、彼らが上位でプレーしていることを、私は本当に誇りに思うよ」

恩人への恩返しは「優勝」か?

命と安全を最優先に動いた恩人と、その男気によって香港のティーグラウンドに立つことができた男。この二人が、最終日の最終組でトロフィーを懸けて激突する。

デトリーは最終日に向けて、リラックスした笑顔でこう意気込みを語っている。

「彼がいなければ、僕は今ここにいなかった。彼に飛行機代を返さないといけないから、明日は絶対に良いプレーをして稼がないとね(笑)」

ラームは言わずと知れた「日曜日に強い男」だ。「追いかける立場のほうがアグレッシブにプレーできる」と語る彼だが、今回は追われる立場として圧倒的なオーラを放っている。対するデトリーも、失うものは何もないという無欲の強みがある。極限のサバイバルを乗り越えてきた者同士の熱いライバル関係。LIVゴルフという舞台が偶発的に生み出した、映画よりもドラマチックなこのヒューマンドラマは、果たしてどのような結末を迎えるのか。日曜日の香港に、最高の熱狂が待ち受けている。


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