
首位発進とはいえ、どこか不服そうにみえるブライソン・デシャンボー(提供/LIVゴルフ)
幻の「58」を追い求めて
「今日は一日中、ずっとフラストレーションが溜まっていたんだ」
デシャンボーは会見の冒頭でそう告白した。上がり3ホールを連続バーディで締めくくる見事なフィニッシュを見せたにもかかわらず、道中のショットの精度に納得がいっていなかったのだ。
現在、彼が追い求めているのは、23年8月のウェストバージニア州グリーンブライアーリゾート(7236ヤード・パー70)で開催された「LIVゴルフ・グリーンブライアー」で、プロゴルフの歴史に燦然と輝く「58」という驚異的なスコアを叩き出した時のフォーム(感覚)を取り戻すことだという。
「ずっと『58』を出した時の状態に戻そうと集中しているんだけど、まだすべてが完全に噛み合っているわけではない。いくつかのティーショットでナーバスになってしまった」と現状を冷静に分析する。
では、その究極の感覚までどれくらい近づいているのか? 記者の問いに、彼はこう答えた。
「全く見当もつかないよ。たった1回のショットで突然ひらめくかもしれない。ただ、あと一つのスウィングの感覚でそこに行き着くくらい、本当に近いところにいるんだ」
アイアンのバウンス角の微調整など、マッドサイエンティストと称される彼らしいミリ単位の探求は今も続いている。完璧主義者にとって、首位という結果すら通過点に過ぎない。
あえて「3日間のスプリント」を貫く理由
そんな妥協なき姿勢は、今季から変更されたLIVゴルフの競技フォーマットに対する考え方にも表れている。記者から「今年から4日間(72ホール)大会になったことで、メンタルの切り替えは必要か?」と問われた際、彼は独自の哲学を明かした。
デシャンボーは、昨季までの3日間(54ホール)大会を「まるでスプリント(短距離走)のようなものだった」と表現する。
「ボギーを叩けば、大きく後れを取ることになる。常にアクセルを踏み続けなければならなかった」
通常であれば、4日間になれば1ラウンドでのミスの比重は減り、精神的なゆとりが生まれるはずだ。しかし、彼はその“ゆとり”を拒絶した。
「自分はあえて、昨年の3日間大会と同じ『スプリント』のマインドセットを維持しようとしているんだ」
なぜなら、その「1打も気を抜けないスプリントの感覚」を4日間保ち続けることこそが、メジャー大会の初日1番ホールから、準備万端の状態で全開で挑むための助けになるからだという。
「このプレッシャーと集中力を保つことが、メジャーに向けた最高の精神的なトレーニングになっているんだ」
72ホールに拡大されたからといって、ペース配分をするつもりはない。彼の頭の中にあるのは、常に「全力疾走」のみだ。
完璧主義者の終わりなき探求心
難コンディションの中で首位に立ちながらも、決して現状に満足することなく「究極のスウィング」を追い求めるブライソン・デシャンボー。そして、4日間の長丁場になっても「常に全力」のマインドを貫き、メジャーでの勝利を見据え続ける終わりなき探求心。 彼が幻の「58」の感覚を完全に取り戻し、スプリントのペースで72ホールを駆け抜けた時、誰も手がつけられない異次元のゴルフが完成するはずだ。


