「第5のメジャー」と称されるザ・プレーヤーズ選手権。2026年大会で並み居る強豪を抑え、通算9アンダーの5位タイという鮮烈なデビューを飾ったのが、ルーキーのスダルシャン・イェラマラジュだ。大会初出場組(15人)の中でトップの成績を収めただけでなく、これは大会史上でもルーキーとして4番目に優れた快挙である。この無名のレフティはいかにして、ゴルフ界を駆け上がったのか。その背後には、現代的かつ「雑草魂」に溢れた異例のキャリアがあった。

平田憲聖を破った「本物の実力」

日本のゴルフファンにとって、イェラマラジュの名を刻みつけるエピソードがある。それは2025年、PGAツアーの登竜門であるコーンフェリーツアーでのことだ。「バハマ・グレート・アバコ・クラシック」で、彼は通算25アンダーという驚異的なスコアを叩き出し、プロ初優勝を飾った。

この時、5打差の2位に甘んじたのが、平田憲聖だった。日本のトップランナーを退けて掴んだ勝利は、彼の力が「フロック(まぐれ)」ではないことを証明している。この優勝を足がかりに、彼はポイントランキング19位に滑り込み、薄氷を踏む思いで今季のPGAツアー出場権を掴み取ったのだ。

YouTubeと「クリケットの父」がコーチ

インドに生まれ、4歳でカナダのウィニペグへ移住したイェラマラジュの原点は、極寒の地にある。冬が長く、屋外プレーは「せいぜい3カ月」。そんな彼が腕を磨いたのは、巨大な室内練習場「ゴルフドーム」だった。

驚くべきことに、彼は一度もプロのスウィングコーチに師事したことがない。教科書にしたのは、YouTubeに流れるタイガー・ウッズやローリー・マキロイの映像だ。それらを繰り返し見ては自らのスイングをスマホで撮影し、独学で分析を続けた。

アドバイザー役を務めるのは、ゴルフ経験がほとんどない実父・スレシュさんだ。しかし、父には独自の視点があった。インドの国民的スポーツ「クリケット」の経験だ。

「クリケットとゴルフは、体重移動などの体の使い方が似ている」

画像: インド生まれのスダルシャン・イェラマラジュ。教科書はYouTubeという独学ゴルファーの星だ(PHOTO/Getty Images)

インド生まれのスダルシャン・イェラマラジュ。教科書はYouTubeという独学ゴルファーの星だ(PHOTO/Getty Images)

親子でYouTubeの動画と自らの映像を突き合わせ、試行錯誤を繰り返す。そんな「実験」のような日々が、彼に独自の、そして誰にも依存しないスウィングを授けた。

大学進学を断念した「遅咲きの苦労人」

現代のPGAツアーでは、大学ゴルフ部で華々しい実績を挙げ、鳴り物入りでプロ入りするのが王道だ。しかし、彼はそのレールからも外れていた。ジュニア時代に際立った実績がなかった彼は、大学からの奨学金のオファーを十分に得られず、経済的な理由もあって進学を断念。19歳でプロの世界へ身を投じる道を選んだのだ。

ミニツアーやカナダツアーを泥臭く戦い抜き、一歩ずつ這い上がってきた。その不屈の精神(レジリエンス)の源は、愛するマンチェスター・ユナイテッドの粘り強い戦いぶりや、9歳で初めて回った18ホールで叩いたスコア「101」にあるのかもしれない。 「それ以来、二度と100を叩いたことはないし、もう二度と打ちたくないよ」と笑う。

憧れの人々と肩を並べて

今大会の17番、アイランドグリーンで大歓声を受け、「この瞬間を楽しみたかった」と語ったイェラマラジュ。YouTubeで眺めていたローリー・マキロイやアダム・スコットと同じフィールドに立ち、堂々と5位タイに食い込んだ事実は、世界中の「独学ゴルファー」に夢を与える。

「自分ができると信じることと、実際にやり遂げることは違う。今回やり遂げたことで、大きな自信になった」

逆境をチャンスに変え、独自の感性で道を切り拓いてきたシンデレラボーイ。カナダが生んだこの新星が、次にどのような驚きを世界に届けてくれるのか。彼の物語は、まだ始まったばかりだ。


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