己の技術で対応する天才肌・ラーム
23年のマスターズ覇者であり、2つ目のグリーンジャケット獲得を力強く宣言しているジョン・ラーム。彼はクラブセッティングに対する自身のスタンスについて、アマチュアゴルファーが聞けば驚くような事実を明かした。「コースによってクラブを変えたことはほとんどない。これはキャリアを通じて言えることです。唯一、変えるのは5番ウッドか2番アイアンの選択くらい」と彼は事もなげに語る。
特にショートゲームの生命線となるウェッジについては、「一切変えない」と断言している。南アフリカ特有の粘り気のある「キクユ芝」はアプローチで非常に厄介だとされるが、マスターズという大舞台が控えるこの時期であっても、ラームの哲学は微塵も揺るがない。
「クラブを変えることを考えるよりも、コース上で自分の技術を調整するほうが簡単だ」と語り、圧倒的な技術への自信をのぞかせた。道具に頼って環境に合わせるのではなく、自らの研ぎ澄まされた感覚と卓越したテクニックで、どんな芝や状況にも適応してみせる。これこそが、天才肌と呼ばれるラームの真骨頂であり、彼が世界トップに君臨し続ける理由の一つである。
科学で最適解を導く探求者・デシャンボー
一方で、ラームとは全く正反対の道を歩むのが、「ゴルフの科学者」の異名をとるブライソン・デシャンボーだ。彼もまた目前の南アフリカの芝と格闘しているが、この徹底的なウェッジテストの最大の目的は「マスターズ(オーガスタ)に向けた最終調整」であると明言している。
デシャンボーは「今の自分にとって最後の鍵はウェッジだ」と語り、グラインド、重量、シャフト、長さなどが異なるバッグ一杯のウェッジをテストしていると明かした。さらに、柔らかいターフに応じて「リーディングエッジの高さとバウンス角のバランスや、フェースの表面摩擦」をどう設定するかといった、極めて緻密で科学的なアプローチをとっている。
彼は昨年のマスターズを「より良いウェッジプレーヤーになるために学ぶ機会」と位置づけており、精度をあと5%上げられれば優勝のチャンスがあると考え、今のうちから自身に合わない不要な要素を削ぎ落とすテストを繰り返しているのだ。南アフリカの芝とオーガスタの条件は異なると冷静に分析しつつ、あらゆる環境に対する最適解をデータと実験から導き出し、終わりなき探求を続ける姿は、まさに真の「探求者」である。
対照的なアプローチが示すゴルフの奥深さ

ジョン・ラームとブライソン・デシャンボー。実力、人気ともにLIVゴルフのツートップともいうべき2人のクラブ哲学は対照的だ(提供/LIVゴルフ)
己の感覚と磨き抜かれた技術を信じ、同じクラブで様々な変化に対応するラーム。そして、徹底したテストと科学的分析によって、コース環境に合わせて道具を最適化するデシャンボー。どちらの哲学が正しいというわけではなく、最高峰の舞台で戦うトッププロたちのこうした多様なアプローチの存在こそが、ゴルフというスポーツの奥深さと面白さを雄弁に物語っている。
