プロゴルフの世界において、「予選通過」は単なる週末へのパスポートではない。それはトッププレーヤーとしての安定感とプライドの証明である。長きにわたり、PGAツアーにおける「連続予選通過記録」のトップを走り続けてきたザンダー・シャウフェレ。しかし、今季初めの「ファーマーズインシュランスオープン」で、彼のその偉大な記録はついに途絶えてしまった(連続予選通過記録は歴代5位タイの72試合)。バルスパー選手権の開幕前会見。「記録が途絶えた時、プレッシャーから解放されてホッとしたか? それともガッカリしたか?」と質問があった。冷静沈着に見えるシャウフェレの口からこぼれたのは、あまりにも人間臭く、そして負けず嫌いな本音だった。

「犬がボールを追うように」目標を失ったノースコース

「間違いなくガッカリしたよ」

シャウフェレは一切の強がりを見せずに即答した。そして、記録が途絶えたあの日の、悔やんでも悔やみきれない「最大の不運」について明かしたのだ。

ファーマーズの予選ラウンドは、難関サウスコースと比較的易しいノースコースで行われる。彼が当落線上で戦っていたその日、プレーしていたのはノースコースだった。

「一番ガッカリしたのは、ノースコースにはリーダーボードがなかったことだ。スマートフォンを取り出してカットラインを確認することもできないから、ただ推測でプレーするしかなかったんだよ」

スコアボードのない広大なコースで、目標を見失ったまま戦うことの難しさ。

「いつもなら、これまでの壮絶なカットライン争いの時は、目の前に巨大なボードがあって『この数字に到達しなければならない』と明確に分かる。まるで犬がボールを追いかけるように、何が起きても絶対にそのボールを獲りに行くんだ」

目の前に「獲物(ターゲットスコア)」さえぶら下がっていれば、どんな逆境からでも噛み付いてみせたという、トップランカーのすさまじい闘争心。

「バックナインのどこかにリーダーボードがあって、もっと自分のお尻を叩いたらよかったのに……」

画像: 連続予選通過記録が72で途切れたザンダー・シャウフェレ。リーダーボードを見る、見ないはプロでも分かれる(写真は25年全英オープン、撮影/姉崎正)

連続予選通過記録が72で途切れたザンダー・シャウフェレ。リーダーボードを見る、見ないはプロでも分かれる(写真は25年全英オープン、撮影/姉崎正)

ただ黙々とホールを消化し、「たぶん週末は休みになるな」と悟りながら帰路についた時の虚無感。それは、闘争心を爆発させる機会すら与えられなかった男の、あまりに悔しすぎる本音だった。

新記録保持者・シェフラーとの関係

現在、その「連続予選通過」の称号を受け継ぎ、新たな記録保持者となっているのは世界ナンバーワンのスコッティ・シェフラーだ(26年ザ・プレーヤーズ選手権までで70試合連続予選通過中)。 記録のバトンを渡したことについて、「シェフラーから何かからかわれたか?」と聞かれたシャウフェレは、ふっと笑みをこぼした。

「いや、ないよ。彼は他のことでは色々からかってくるけど、この件に関してトラッシュトーク(悪口の言い合い)はないね」

世界最高峰の舞台でしのぎを削るトッププロ同士の、互いの偉業を尊重し合うリラックスした関係性が垣間見えるエピソードだ。外部からの途方もないプレッシャーや、リーダーボードという重圧すらも自らの「燃料」に変えてしまうシャウフェレ。記録という重荷を下ろした今、再び闘争心を剥き出しにして獲物を追いかける彼の逆襲が、このフロリダの地から始まる。

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