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「20代の頃からあったらいいなと」——ベテランが漏らした切実な本音

発表会に登壇したジャパンゴルフツアー選手会会長・阿久津未来也と同副会長・谷原秀人
「僕がツアーに携わってからまだ8、9年目ですが、このような大きな改革、ツアーが一新するということは僕の記憶では初めてなんじゃないかと感じています。本当に、心から楽しみでしかありません」
やや緊張した面持ちでマイクを握った阿久津選手会長の言葉には、停滞していたツアーにようやく差し込んだ強烈な光への高揚感があふれていた。さらに、長年日本の男子ゴルフ界を牽引し、海外ツアーの厳しさも酸いも甘いも噛み分けてきた谷原副会長の言葉は、より重く、切実だった。
「自分もこのツアーにもう20年ちょっといますが、僕が20代の頃から『(こういう支援が)あったらいいな』という思いはありました」
彼の言う「あったらいいな」とは何なのか。それはプロゴルファーを取り巻く、過酷な経済的・肉体的な負担の壁である。賞金シード権を持たない若手選手や、下部ツアーで戦う選手たちにとって、ツアーを転戦するための費用はすべて「自己責任」だ。エントリーフィー(出場登録料)、新幹線や飛行機の移動費、ホテル代、食事代、さらにはキャディへの報酬まで。毎週のように数十万円の経費が飛んでいく中、予選落ちすれば収入はゼロ。華やかなプロスポーツでありながら、その実態は、常に赤字の恐怖と隣り合わせの過酷な個人事業主なのである。
下部ツアーのエントリーフィー撤廃と「エコシステム」全体への投資
今回、J-TourとNSSKが打ち出した改革案の中で、選手たちにとって最も直接的で、最も革命的な支援が「セーフティネットの構築と負担軽減」だ。
NSSKのシニアパートナーである徳山一晃氏は、具体的な施策を打ち出した。
「現在は選手が自腹で払っているエントリーフィー等につきまして、26年のACNツアー(下部ツアー)からJ-Tourで負担させていただきます。これは特に若手の選手が色々なチャレンジをしてほしいという考えからです」
さらに支援はそれだけにとどまらない。公開された成長投資の資料には「移動・宿泊・遠征・食費の負担軽減」や「福利厚生(医療保険や年金制度の整備)」という、これまでのJGTOの財政規模では到底不可能だった施策がはっきりと明記されている。徳山氏は「栄養管理されたおいしい食事も全面的に支援する」と約束した。
重要なのは、この支援の矢印が選手本人だけでなく、彼らを支える「裏方」にも向けられている点だ。 津坂純社長(NSSK)はこう語る。
「プロの皆さん、キャディさん、コーチ、トレーナーさん、マネージャーさん。これが我々の業界のエコシステムです。選手が成功しなければ我々が成功しませんし、全ステークホルダーの幸せを追求して初めて成功と言えるのではないか」
プロゴルファーが、明日のお金や移動の手配を心配することなく、ただ「ゴルフで勝つこと」だけに全神経を集中できる環境。欧米のトップツアーでは当たり前になりつつあるアスリート・ファーストの環境が、ついに日本にも構築されようとしているのだ。
世界へ羽ばたくルート構築と「純粋なスポーツの魅力」
生活の基盤が保障されれば、次に目指すのは「世界」だ。 昨シーズン、賞金王に輝いた金子駆大(当時23歳)をはじめ、久常涼や金谷拓実、平田憲聖、中島啓太など、日本の若手男子選手たちは次々と海を渡り、PGAツアーやDPワールドツアー(欧州)で活躍を見せている。
「本当に若手の選手が多く男子ツアーで活躍する時代が来ていまして、そこにJ-Tourが入っていただけることで、これから海外に進む選手がより羽ばたくチャンスが増えるんじゃないかと思っています」と、阿久津選手会長も若手の躍進に強い期待を寄せる。
J-Tourは、この「世界への道」をさらに太く、強固なものにする。
「アメリカやヨーロッパで戦うためには、技術データのフィードバックも必要ですし、軍資金も必要です。賞金総額を増やすことに加えて、スポンサー企業様とのマッチング支援も行います。各試合で上位になると海外の試合にも出られるようなアレンジも進めます」
データ分析による技術向上、遠征資金の確保、そして出場権のルート構築。世界へつながる競争環境を提供すること自体が、日本ツアー最大の魅力となる。
こうしたビジネス面、サポート面の重責をすべてJ-Tourが肩代わりすることで、母体であるJGTOが手にする最大のメリット。それは「純粋なスポーツ団体への回帰」である。
倉本副会長は、熱を込めてこう語った。
「事業運営をJ-Tourに任せることで、我々JGTOは、より厳格で公正な競技運営と、選手たちが一切の不安なく最高のパフォーマンスを発揮できる舞台づくりに専念できる。プロの凄い1打1打にかける緊張感、そして純粋なスポーツの魅力を極限まで高めること。これこそが、我々JGTOが果たすべき最大の役割です」
お金の心配をなくし、最新のデータと栄養を与えられ、ただ純粋に目の前の一打に人生を懸ける。極限まで研ぎ澄まされたプロゴルファーたちの闘争本能が、日本のフェアウェイで爆発する日は近い。
※第3回:【ファン体験・メディア戦略編】「Netflix風ドキュメンタリーと『全ショット・データ化』が拓く、男子ゴルフ未体験の熱狂」へ続く


