「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回は最近注目されている軟鉄素材「S15C」について考察した。
画像: 軟鉄の素材違い、どこまでどう影響する?(写真はイメージ)

軟鉄の素材違い、どこまでどう影響する?(写真はイメージ)

「打感が軟らかい」には個人差がある

みんゴル取材班(以下、み):今年発売されたキャロウェイ「Xフォージド」のアイアンとウェッジ、クリーブランドの「RTiフォージドウェッジ」は素材を「S20C」から「S15C」に変更して打感が軟らかくなったとアピールしています。同じ軟鉄でそこまで違いが出るものでしょうか?

宮城:ゴルフ業界で軟鉄といわれているSC材はスチールとカーボンの合金です。数字は炭素の含有量を表していて、「S15C」は0.13%から0.18%、「S20C」は0.18%から0.23%とJIS規格で定められています。SC材は炭素が多いほど硬くなるため「S15C」のほうが軟らかいわけですが、0.18%の数字が被っていることからも分かるように「S15C」と「S20C」の特性はかなり近いといえます。

み:「S15C」で上振れしたものと「S20C」で下振れしたものが同じということですね。それぞれ真ん中で比べても差は0.05%です。わずかな炭素含有量の違いがどう影響するのでしょう。

宮城:「S15C」は素材自体に軟らかさと粘りがあるのは確かです。ライ・ロフトの調整でネックを曲げてみるとよくわかりますが同じ力加減でも「S15C」は「S20C」よりも余計に曲がります。

み:ということは打感もかなり軟らかいわけですね。

宮城:そこはちょっと話が違ってきて、素材の軟らかさが打感の軟らかさに100%影響するわけではありません。

み:どういうことでしょうか?

宮城:「S15C」同士、「S20C」同士をぶつけて比べてみると硬さの違いが分かります。しかし、ぶつかる相手がはるかに軟らかいゴムだと差を感じ取るのは難しくなります。しかも「S15C」といってもメッキをかけると表面が硬くなります。元の素材の硬さの違いを純粋に比べるのは至難の業です。

み:それでも多くのゴルファーが「S15C」を軟らかいと評価しています。

宮城:皆さんが比べているのは音です。SC材は炭素含有量が少ないほどインパクト音は低くなります。その低い音を聞いて軟らかいとか球の乗りがいいと評価しているわけです。昔こんなことがありました。「MTIウェッジ」を開発したときに「S25C」とステンレスで同じ形のヘッドを作りどちらの打感がいいかプロに聞いたことがあります。そのときは「S25C」とステンレスで2対1くらいの割合で評価が分かれました。

み:何をもって軟らかいと感じるか個人差があるわけですね。

宮城:「S25C」を評価したプロは皆、ステンレスは音が高いと言っていました。

み:やはり音が大事なのですね。ところで「S15C」という素材自体は昔からあったと思います。クラブでほとんど採用されてこなかったのはなぜですか?

宮城:たいていのメーカーは「S15C」で試作を行ったことがあるはずです。商品開発では常に新しいことを求められていますから。ぼくも「S10C」まで作りましたが商品化には至りませんでした。

み:なぜですか?

宮城:耐久性の問題です。20年くらい前に大手メーカーが「S10C」のウェッジを発売したことがありますが、使っているうちにネックが曲がってしまうため短命に終わりました。「S15C」のデメリットもネックが曲がりやすいことですが、「RTiフォージドウェッジ」はネックの部分だけ強化することで問題を解消しています。

み:軟らかすぎてもよくないわけですね。

宮城:「S15C」や「S10C」は売り文句にはなりますが、クラブ開発は素材ありきではなく、その素材の特性を生かしてどういうアイアンやウェッジを作るかが大事です。いま「S20C」が主流になっているのは打感と耐久性のバランスがよく、鍛造やフェース溶接がしやすいことも理由です。


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