日本人3選手の奮闘
PGAツアーには世界中から頂点を目指して選手が集まる。
2023年からPGAツアーのパスウェイであるコーンフェリーツアー(KFT)、PGAツアー・アメリカズ、そして、PGAツアー・ユニバーシティの代表を務めるアレックス・ボールドウィン氏はこう語る。
「PGAツアーがコーンフェリーツアーおよびPGAツアー・アメリカズといった国際大会を開催する目的は、PGAツアーを目指す才能ある選手を育成するためであり、体系化された実力主義のグローバルなシステムを確立することにあります。これらの下部ツアーは、PGAツアーのエコシステムにおける重要な要素であり、選手たちが着実に成長できる極めて競争の激しい環境を提供しています。
このプロセスにおいて、国際的な選手の存在は不可欠です。異なる国々、環境、文化的背景の中で競うことは適応力を求め、選手の競技レパートリーを広げ、より完成された選手として、最高レベルの挑戦に備えるための成長に寄与します。同時に、この多様性は競技レベルを高め、PGAツアーの魅力を豊かにし、世界的な存在感を高めます。
さらに、国際的な選手の存在は、彼らの母国における新たな観客層とのつながりを生み出し、新興市場におけるゴルフの成長を促進するとともに、PGAツアーを真にグローバルなプラットフォームとして確立するものです」
日本から杉浦悠太選手や大西魁斗選手のような若手選手が果敢に挑戦してくれること、石川遼選手のように再挑戦してくること。この多様性こそが、PGAツアーを支えるものであり、魅力である。

15周年を迎えたコロンビアの大会には、ジョーダン・スピース(2013年)やジャスティン・トーマス(2014年)も参戦していた。スコッティ・シェフラーも下部ツアーを主戦場にしていた2019年に出場(5位タイ)。その後の活躍は言うまでもない
KFTの過酷さ
日本人選手には大きなアドバンテージがあることを忘れてはいけない。日本人選手は、たとえアメリカでシードを失っても、日本ツアーに戻って賞金を稼いで、技術を磨き直すことができる。日本国内のスポンサーシップとハイレベルの競技環境が保障されていること。失敗しても日本があるという安心感があるのだ。まさに石川選手が一度アメリカを撤退し、日本でじっくりと時を待つことができたのは、日本ツアーというレベルの高い競技環境があったからだ。
しかし、ラテンアメリカの選手たちには、自国でのハイレベルのツアーはないため、オール・オア・ナッシングの世界だ。
例えば、2023年アメリカ大学リーグ一部のNCAA(全米大学体育協会)で団体、個人で1位を取ったフレッジ・ビオンディ(Fred Biondi)というブラジル人がいた。PGAユニバーシティのランキング2位でKFTにフルシードでルーキーとして期待されたビオンディだったが、KFTの厚い壁にぶつかりシード権を失い、Qスクールでも結果が出ず、もう一つ下のパスウェイに降格となった。KFTは大学ゴルフでエリート教育を受けた怪物たちが、次から次へと供給されるが、結果を出せない者は即座にシュレッダーにかけられるのが現実だ。
ちなみにビオンディがNCAA大学チャンピオンになりながらも越えられなかったユニバーシティ1位がスウェーデン出身のルドビグ・オーベリ(GD表記ではラドビッグ・アバーグ)だった。オーベリはPGAツアーフルシードの権利を得てプロになり、すでにPGAツアー2勝、ライダーカップの勝利に貢献し、極め付きは2024年マスターズ2位。4月のバレロテキサスオープンで優勝争いをするなど、今やPGAツアーのスター選手になっている。
また、韓国系ブラジル人でブラジルでランキング1位だったロドリゴ・リー(Rodrigo Lee)選手は、PGAツアー・ラテンアメリカに参戦していたが、ブラジルからランキングを上げることの難しさを感じ、韓国ツアーに渡った。ここで、ポイントを積み上げることによって、KFT、DPワールドツアーへの足がかりを作ろうとしている。自国に日本ツアーのようなプラットフォームがないと、KFTに辿り着くにも針の穴を通すような挑戦を続けないといけないのだ。だからこそ、KFTは厳しい戦場であり、ここで生き抜けばPGAツアーで通用する選手になれるということなのだ。
日本人選手たちへのエール
日本人選手には日本ツアーというすばらしい居場所があることの恩恵を生かして、果敢に世界に飛び出してほしい。
そして、世界に出た時、現地の日本人は彼らを大いに応援しようではないですか! 日本では当然たくさんのギャラリーを率いる選手でも、海外では無名になる。ギャラリーがいないことでつまらなくないのだろうか?
杉浦選手は「ギャラリーが少ないからこそ、少しでもいることが本当にありがたい」と言う。
コロンビアでもチリでも現地に駐在している日本人の方々が応援にやってきて、ずっと試合を見守り、試合が終われば声をかけ、日本から遠く離れて頑張っている選手たちを激励した。
杉浦選手を一生懸命応援していた日本人のご夫婦がいた。
「愛知県つながりで杉浦選手を応援にきました」。現地に駐在している内野さん。
直子夫人はサンティアゴの中国商品を扱う店で、東洋風のピンクの傘を買い、1つの傘にテープで1文字ずつ『ガ・ン・バ・レ』、真っ赤な扇子には『スギ・ウラ』と書いた。並べれば、『ガンバレ、スギウラ』となるオリジナルティあふれる応援グッズを自主制作されていた。
精一杯の応援の気持ちを込めて披露したのが3日目の14番ホールだった。ナイスショット! のドライバーを打った杉浦選手に見えるように4本の傘を挿してエールを送ったのだが、その直後、タイミングが悪かったことがわかった。ボールが紛失球になってしまったのだ。みんなで必死に探したにも関わらず、ボールは見つからず……。杉浦選手は走ってティーイングエリアに戻った。
日本だったら、ギャラリーがいるからまず紛失球にはならなかっただろう。しかし、ここではギャラリーはいない……。ボランティアがいたが、完全に見失ってしまい本当に不運だった。結局この『ガンバレホール』はダブルボギーを叩いてしまった。
しかし、杉浦選手がすごいのは、変わらぬ冷静さで、その後バーディを2つ取って、ダボをチャラにしたのだ。まるで、タイミングが悪かったと意気消沈していた私たちに大丈夫ですよと言うかのように。

南米の地に登場した即席“傘応援団”
“チームYuta”は24歳の杉浦と25歳の高木キャディの二人三脚で夢を追いかけている。高木キャディは、もともとプロゴルファーを目指しプロテストを何度か受けたがプロには手が届かなかった。しかし、今はもう一つの夢がある。「悠太を見て才能がある人とはこういう人なんだと知った」と杉浦選手を支え一緒にPGAツアーを目指すことだ。
弱冠23歳で日本でメジャーチャンピオンになっている実力者。コロンビアでは予選落ちだったが、アルゼンチンで15位、チリでも15位。クラブカーチャンピオンシップで22位と着実にポイントを重ね、リシャッフルの14試合目までには後半戦のシードも確保できるだろう。コツコツとバーディを重ねていくあの冷静さは24歳とは思えない。
ゴルフは個人技だけど、一度国外に出てしまえば、みんな国を背負っているのと同じ。私も日本応援団としてチリで日の丸を背中に背負っていたのだが、どうやら、その異様な姿で石川選手を食い入るように見ていたため、田中コーチとキャディの白神さんに怪しい日本人らしき人がいると言われてたらしい(笑)。こんな日本から離れたところなんだから、彼らを日本代表として応援したいではないか!

チリでは日本勢最上位の15位タイでフィニッシュした杉浦選手。高木キャディと二人三脚でPGAツアー昇格を目指す