3番アイアンと風、そしてドロップゾーンへの代償
イーブンパーまでスコアを戻し、なんとかアンダーパーへの足がかりを掴もうとしていた13番(パー5)。シェフラーはティーショットを風に当ててしまい、セカンドショットは木が視界を遮る厳しいポジションからのショットを強いられた。
彼が手にしたのは3番アイアン。ピンを狙うにはリスクが伴うが、世界1位としての勝負勘が彼に攻めを選択させた。
「橋のあたりからスタートさせて、傾斜を使って簡単にドローをかけられると感じていた。スウィングを傾斜に合わせようとしたんだけど、十分にドローがかからず、そのまま右に抜けてしまったんだ」
無情にもボールはクリークに吸い込まれた。しかも、ボールが横切った地点の運も悪かった。
「もしもう少し手前で横切っていれば、もっと簡単なピッチショットで寄せられたはずなのに、ボールをドロップできるスペースがなく、ドロップゾーンまで行かなければならなかった」
結果、このホールで痛恨のボギーを叩き、流れを完全に断ち切られることとなった。
「この場所では無理はできない」 王者の見据える週末
大記録が途絶え、スコアを崩した1日。しかし、ラウンド後のシェフラーの言葉には、不思議なほど焦りがなかった。

マスターズの連続パープレー記録は「11」で途絶えたが、PGAツアーの連続予選通過記録は「71」まで伸ばしたスコッティ・シェフラー(撮影/岩本芳弘)
「今日は自分のスコア以上にずっと良いプレーができたと感じているんだ。本当に良いラウンドになる一歩手前だった。13番でのスウィングや、自分の思い通りにいかなかったいくつかの不運など、ほんの少しの差だった。マージン(誤差)は本当に小さいんだ」
パットの読みやスピードがわずかにズレていたと振り返りつつも、自身のショットの感触には確かな自信を持っている。そして何より、彼はこのオーガスタというコースの鉄則を誰よりも深く理解している。
「この場所では無理はできない。でも、今日は本当に素晴らしいラウンドにできるくらいボールを上手く打てていた。だから少し練習して、休んで、明日に備えるよ」
一度や二度の不運で自滅するような男ではない。記録は途絶えても、王者のメンタルは微塵も揺らいでいない。週末のオーガスタで、シェフラーがこの「小さな誤差」をどのように修正し、再び浮上してくるのか。静かな逆襲の準備は、すでに整っている。
