ターニングポイントはやはり「アーメンコーナー」
予選ラウンドで6打のマージンを築き、圧勝かと思われたマキロイですが、3日目に1打落とし、最終日はキャメロン・ヤングとともにトップタイでのスタート。しかも後続にもビッグネームがひしめいており、マキロイの連覇に黄色信号がともっていました。

ドライビングディスタンスはナンバー1
ただそれでも、最終日を前にマキロイが優勝するのではと予想していました。3日目の終盤に見せた圧倒的なドライバーショットで流れを呼び寄せる姿を目の当たりにしていたからです(ドライビングディスタンスは全体1位)。
もし、彼の優勝を阻むとすれば、3打ビハインドのジャスティン・ローズではないかと。こちらは3日目にバタついたマキロイとは対照的に、着実に取るところは取り、隙のないゴルフを展開していたからです。しかも、昨年マキロイにプレーオフで敗れているだけではなく、2017年にもガルシアが優勝した時に同じくプレーオフで辛酸をなめている。このフィールドの中で、誰よりもマスターズへの想いは強い。「Go Rosie!」、ローズへの声援はマキロイに勝るとも劣らないほど。ローズに勝ってほしい、パトロンたちのそんな気持ちが伝わってきました。プレスルームでも、他にも多くの実力者が上位にいるにも関わらず、「(マキロイとローズ)どっちを応援する?」という声も聞かれました。
両者のスタート前の練習も見ましたが、パットもアプローチもショットも、毎回ターゲットや球筋を変えながら子供がゴルフで遊んでいるような一見気ままともとれる練習をするマキロイに対し、いつもより軽めではあるものの、自分の動きに制約を与えるような矯正的な練習を緻密にこなすローズ。非常に対極な2人だと目に映りました。
ローズはマキロイの2つ前の組でプレー。3番でボギーとするもアウトは3連続を含む5つのバーディを重ね、折り返します。
一方のマキロイは、4番のパー3でダブルボギーを叩くなど不安定な立ち上がり。同じくパー3の6番ホールのボギーでローズに追い抜かれます。
ローズとしては、アウトは想定以上の出来だったかもしれません。それ以上に予想外だったのは、マキロイをことのほか早い段階で追い抜いたことではなかったでしょうか。そしてアーメンコーナー(11、12、13番)を迎えます。

マスターズ制覇というローズの悲願は来年以降に持ち越し
この3ホールは池やクリークといった「水」を警戒しなければならない。11番のグリーン左の池は、過去最終日に多くのプロの希望を飲み込んできました。ここは左奥のピンは狙わず、グリーンの右に外してもOK、というのが定石。もちろんローズもそのつもりでいたでしょう。しかし、あまりにも警戒しすぎたか、ボールは大きく右にそれ、右バンカーのさらに右まで飛ばしてしまいます。そこからはバンカー越え、さらに池に向かって打つという難しいアプローチの状況。ピンまで突っ込めずボギーとしてしまう。
12番のマキロイのバーディがローズの緻密な「プラン」を狂わせた
12番の池越えのパー3では、右のピンを狙わないのがセオリー。その狙いとおりティーショットはグリーン左奥に。しかし、そこからのアプローチがまさかのザックリ。このレベルの選手ではありえないことが起こりました。そこも池に向かってのアプローチでプレッシャーがかかる状況であることは間違いありませんでしたが。
13番はティーショットを左サイドの絶好の位置に置くと、果敢に2オン狙い。その2打目を待っているさなか、後続のマキロイが12番でバーディを取り、大歓声が巻き起こりました。それを聞いても2オンに成功したローズでしたが、イーグルパットをオーバーさせ、返しも外しパー。連続ボギーで来て、マキロイが後ろで息を吹き返しつつある。13、15番のパー5でもマキロイが伸ばしてくる可能性が高い。そういった焦りにも似た気持ちがイーグルパットを強く打たせたように見えました。スコアはパーですが、ボギー同様の精神的ダメージがあったことは想像に難くありません。アーメンコーナーは2オーバー。ローズの緻密な勝利へのプランが崩れた瞬間でした。
一方のマキロイですが、11番はグリーン右端に乗せ、なんとか2パットでしのぎパー。12番は右端のピンに対して果敢にカットボールで攻めてバーディ。13番も2オン狙いのバーディ。ローズとは対照的にアーメンコーナーを2アンダー。この3ホールで4打の差がついたことになります。
最終日のアーメンコーナー。やはり今年もここに勝負のあやがあったことは間違いありません。
15番でバーディを奪うなど、ローズも懸命に食い下がりましたが、流れはアーメンコーナーを制したマキロイのものとなっていました。
最終18番、ウイニングパットを沈めた瞬間のマキロイの晴れやかな表情。それは、史上4人目となる連覇という偉業を成し遂げた安堵感とともに、最高の舞台でゴルフを楽しみきったという達成感もにじみ出ていました。
一方のローズは「正解」を求めて自らを律し、緻密な計算でオーガスタを攻略しようとしました。しかし、その計算をいとも簡単に狂わせてしまうのもまたオーガスタ。12番での信じられないアプローチのミス、そして13番の強すぎたファーストパットは、積み重ねられたプレッシャーが、ローズの緻密な計算と高い技術さえも狂わせてしまった結果ではないでしょうか。

キャディ番号1番は前年チャンピオンの印。タイガー・ウッズ以来の連覇を達成
キャリアグランドスラム、そしてマスターズ連覇という高い壁を越え、さらなる伝説へと歩みを進めるマキロイ。一方で、悲願にあと一歩届かなかったローズの執念もまた、改めてマスターズという大会の深みを感じさせるものでした。
やはりオーガスタは、世界で最も過酷で、そして最も美しいゴルフの聖地です。現地で彼らの戦いを目の当たりにできたことは、私にとっても大きな財産となりました。そして技術的な気づきもたくさんありました。この感動を、また日本のゴルファーの皆さんにレッスンという形でお返ししていきたいと思います。
PHOTO/Yoshohiro Iwamoto
