1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材し、現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員として活動する吉川丈雄が、ラウンド中に話題になる「ゴルフの知識」を綴るコラム。第60回目は、イングランドの「ロイヤル・ウエスト・ノーフォークGC」という極めて特異な環境にあるリンクスコースの魅力について。

クラブハウスが孤立する「満潮」の驚異

画像: 公式HPにも「満潮時はクラブハウスへ車でアクセス不可」との記載が確認できる(引用:RWNGC公式)

公式HPにも「満潮時はクラブハウスへ車でアクセス不可」との記載が確認できる(引用:RWNGC公式)

満潮時に潮位が上がるとコースが島状態になってしまうリンクスがあるのをご存じか。そのコースはイングランドのブランカスターにあるロイヤル・ウエスト・ノーフォークGC(18H/6457Y/P71)だ。コースができたのは1892年、設計はホルコム・イングルビーとホレース・ハッチンソンらが手がけた。ちなみにハッチンソンは全英アマを1886、87年と2連覇した選手で、多くの本を書き残している。

孤児になったことから11歳でロイヤル・ノース・デボンGCでキャディをしていたジョン・H・テイラーを専用キャディ兼ハッチンソン家のハウスボーイとして雇っていたが、19歳でプロになったテイラーはその後頭角を現し全英オープン5回優勝して同時代のハリー・バードン、ジェームス・ブレイドと共に3大巨頭と称えられてイギリスを代表する選手に育っている。

画像: 加えて、公式HPには「潮汐時刻」の表示も(引用:RWNGC公式)

加えて、公式HPには「潮汐時刻」の表示も(引用:RWNGC公式)

コースはブランカスターウエスト湿地にあり、ここは生息している鳥などの特別保護区域に指定されている場所でもある。風が強いコースでもありバーナード・ダーウィンは「ドライバーコースである」と著書「イギリス諸島のゴルフコース(1910年)」で書いている。だが風が強いだけではなく、満潮時にはコース全体が海に囲まれてしまい、そのためコース全体がまるで島のように孤立してしまう。満潮時にはハウスに入ることができず「海岸の砂浜を歩いて入る」と書かれているほどだ。

なかでも8、9番が満潮の影響を強く受けるようだ。また、クラブハウスはほぼ波打ち際にあり風が吹けばそれなりの影響を受けることが伺える。開場以来100年間以上、海からの影響を受けてコースはかなり変化したとされる。数多くあるリンクスのなかで過酷な立地と気象条件の中、荒ぶるリンクスで自然と対峙して戦うという醍醐味を味わえるコースだともいえる。

全英オープンに5回勝ちサーの称号を受けたオーストラリアのピーター・トムソンの息子、アンドリュー・トムソンと川奈でプレーしたとき「ゴルフのゲームは風が吹くから面白くなる」と言ったのを思い出した。つまり「風のないゴルフは面白くない」ともいえる。

コースのホームページの最後には“If you don’t like this place then you don’t like golf.”(この場所が気に入らなければゴルフも気にいらない)と記載がある。

その通りだ!

文・写真/吉川丈雄(特別編集委員)
1970年代からアジア、欧州、北米などのコースを取材。チョイス誌編集長も務めたコースやゴルフの歴史のスペシャリスト。現在、日本ゴルフコース設計者協会名誉協力会員としても活動中

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