4月23~26日にヒューストンのメモリアルパーク・ゴルフコース(6811ヤード・パー72)で開催される今年の海外女子メジャー第1戦「シェブロン選手権」。この舞台で、長年女子ゴルフ界を牽引してきた元世界ランキング1位のレジェンドが静かにクラブを置く。ツアー通算13勝を誇るステーシー・ルイスは、今大会を最後に現役を引退することを表明している。彼女にとってのラストマッチは、極めてエモーショナルなものとなる。開催地は地元・ヒューストン。両親や家族、そして多くの友人たちの前でプレーを見せる最後の機会だ。

家族とともに歩むラストマッチと、地元ヒューストンへの深い愛

さらに特別なのは、彼女が現在第2子を妊娠中であることだ。新たな命を宿した体で、夫がキャディを務めるという、家族の絆に包まれた忘れられないラウンドとなる。妊娠中のプレーについて不安を覚えるかもしれないが、本人は「ホルモンの影響で体が柔らかくなり、痛みが減って快適。ゴルフスウィングもフラットになって助けになっている」とポジティブに語り、競技者としての余裕を覗かせる。

ルイスがいかに地元ヒューストンを愛し、愛されているかを示すエピソードがある。彼女は今週末に行われるMLB・ヒューストン・アストロズの試合で始球式を務めることが決まっているのだ。かつてハリケーン・ハービーが直襲した際には、多額の寄付を行うなど地元ヒューストンへの支援活動に尽力したルイス。この街との強い絆が、最後の舞台をさらに感動的なものにしている。

テキサス育ちのプライドと、ライバル・後輩たちからのリスペクト

今大会は雨の影響で飛距離が落ち、タフなコンディションが予想されているが、彼女に恐れはない。「テキサスの風や暑さ、厳しい条件で育ったからこそ、天候が悪化するほど私のプレーは良くなる」と、テキサス育ちのプライドと強気を隠さない。単なる「思い出作り」ではなく、プロゴルファーとしての意地を見せつける覚悟だ。

そんなルイスの引退試合の初日、彼女はヤニ・ツェンと同組(午後1時3分スタート・10番ティー)でプレーする。ヤニ・ツェンは2010年の本大会チャンピオンであり、かつてともに女子ゴルフ界の頂点を争った同世代の最大のライバルだ。この歴代チャンピオン同士のペアリングは、長年のファンにとって胸が熱くなる粋な計らいである。

また、彼女の功績には後輩たちからも惜しみないリスペクトが寄せられている。現在世界ランク2位で圧倒的な強さを誇るネリー・コルダは、ルイスについて「彼女がどれほどツアーを気にかけ、投資してきたかに本当に感銘を受けている。素晴らしいリーダーであり、母親であり、LPGAツアーの擁護者。彼女の下でプレーできたことは名誉なこと」と最大級の賛辞を送り、その偉大さを称えている。

画像: 今大会で引退を表明しているステーシー・ルイス(写真は24年AIG女子オープン、撮影/姉崎正)

今大会で引退を表明しているステーシー・ルイス(写真は24年AIG女子オープン、撮影/姉崎正)

大会の伝統「池へのダイブ」存続への想い

ルイスにとって、このシェブロン選手権(旧ANAインスピレーション等)は自身のツアー初優勝を飾った思い入れの深い大会でもある。そして今、彼女はこの大会のアイデンティティとも言える「ポピーズ・ポンド(池)へのダイブ」という伝統の存続について、強い危機感と情熱を抱いている。

今年から大会の舞台は、メモリアルパーク・ゴルフコースへと移された。これに伴い、優勝者の「池へのダイブ」は18番グリーンの脇に設置された仮設の池で行われることになり、その是非について議論が巻き起こっているのだ。

しかし、ルイスの主張は揺るぎない。

「伝統を作るには約20年かかる。私たちは絶対にこの伝統を守り続けなければならない」

彼女は選手諮問委員会の一員として、「100パーセント、満場一致で『ダイブの伝統は残さなければならない』という意見でまとまった」と舞台裏を明かす。「誰かが飛び込むことで、水がかかり、少し濡れるかもしれない。でも、それを含めて最善を尽くしている。来年になれば、18番グリーンと池の配置はもっとコースに馴染むように改善されるはずだ」と、伝統を守り抜くことの意義を力説した。

現役トップ選手たちも受け継ぐ伝統の重み

去りゆくレジェンドの熱い想いは、現役のトップ選手たちにもしっかりと共有されている。前出のネリー・コルダは、「トロフィーを掲げることができたら、もちろん飛び込むわ」と明言し、伝統への敬意を示している。また、昨年のディフェンディングチャンピオンである日本の西郷真央も、「まだ池を見ていないが、チャンスがあれば伝統に従って飛び込みたい」と意欲を見せている。

ステーシー・ルイスが愛し、守り抜こうとした「池へのダイブ」の伝統。彼女のラストマッチのフィナーレに、誰がその冷たくも栄光に満ちた水しぶきを上げるのか。新たな舞台での伝統の継承から、目が離せない。


This article is a sponsored article by
''.