思い出の地メキシコへの帰還と、初優勝の金字塔
「メキシコに戻ってこられて本当に嬉しいです。昨年はここで初めて優勝することができました」と、岩井は弾むような笑顔で会見に臨んだ。彼女にとって、このエル・カマレオンGCは単なるツアートーナメントの開催地ではなく、自身のキャリアに燦然と輝くマイルストーンを刻んだ特別な場所だ。
昨年の「リビエラマヤオープン」で、岩井はトータルスコア「276(12アンダー)」を記録して優勝を果たした。これは同大会の72ホールにおける最小スコア記録で、この勝利によって彼女はLPGAツアーで優勝した史上20人目の日本人選手となった。昨年の優勝直後、日本に帰国した際の熱狂を岩井は今も鮮明に覚えている。
「優勝した後に日本へ帰ると、本当にみんなが『おめでとう』と声をかけてくれました。だからこそ、ここは私にとって非常に良い思い出の場所なのです」
王者の風格と「リベンジ」を懸けた防衛戦
今週はプレッシャーも少し異なると認めつつも、「2年目のLPGAツアーであり、初めての時よりもメンタル的に落ち着いている」と、王者の風格を漂わせた。
その言葉を裏付けるように、今年の岩井は安定した強さを見せている。現在ロレックスランキング20位につける彼女は、今季これまでに出場した8大会中7大会で予選を通過。トップ10入りを3回記録し、「ホンダ LPGA タイランド」では2位に入るなど好調を維持している。
実は、大会前週のメジャー大会「シェブロン選手権」で今季初の予選落ちを喫している岩井。「落ち着いている」という言葉の裏には、悔しさをバネに思い出の地でバウンスバックを誓う強い決意が込められている。
毎週ツアーを共にする「家族」という最大の武器

ディフェンディングチャンピオンとして「リビエラマヤオープン」を戦う岩井千怜(写真は26年ダイキンオーキッドレディス、撮影/岡沢裕行)
過酷な海外ツアーを戦い抜く岩井にとって、最大の強みであり心の拠り所となっているのが「家族」の存在だ。今週も会場に駆けつけている家族について問われると、岩井は力強くこう答えた。
「今週だけでなく、私は毎週のように家族と一緒に過ごしています。昨日も家族と一緒に観光に行き、素晴らしい時間を過ごしました」
常に結果が求められるプロの世界において、家族のサポートは技術面以上にメンタル面で大きな役割を果たしているという。
「母は私のメンタルを助けてくれますし、父は情熱を与えてくれるような存在です。だからこそ、私たちのチームの雰囲気はとても良いのです。私は自分の両親を本当に誇りに思っています」
異国の地でも彼女が常に前向きでいられる理由は、この強固な家族の絆にある。
日本女子ゴルフ躍進の理由と、最強の「ライバル」
現在、世界の女子ゴルフ界において、日本人選手の目覚ましい活躍は海外メディアからも熱い視線を集めている。会見では「かつてアジアを席巻していた韓国人選手に、なぜ日本人選手がこれほど迫り、トップ争いをするようになったのか」という核心を突く質問が飛んだ。この問いに対し、岩井は日本の国内ツアーの環境変化を理由に挙げた。
「日本のトーナメントでは、4日間開催の大会が増加しました。数年かけて増えてきたことで、日本の選手たちはよりタフになったのだと思います。それが、ハイレベルなプレーに繋がっている理由です」
さらに岩井は、選手同士の相乗効果についても言及する。
「もう一つの理由は、昨年もそうでしたが、何人かの日本人選手がトーナメントで優勝したことです。それがお互いに良い刺激(インスパイア)を与え合っているのだと思います」
この言葉は、圧倒的な説得力を持つ。彼女の双子の姉である岩井明愛も、同じく2025年にLPGAツアーで優勝を果たしている。身近な家族であり、最強のライバルでもある姉の活躍が、彼女のモチベーションに直結していることは想像に難くない。なお、明愛も今大会に出場し、ともに戦いの舞台に立つ。
国内ツアーのレベルアップという土壌と、互いに高め合う選手たちの競争意識。岩井千怜の的確な分析は、今の日本女子ゴルフ界の充実ぶりを物語っている。家族の愛を力に変え、ディフェンディングチャンピオンとして挑むメキシコの地で、彼女は再び頂点を目指す。
