結果を焦る自分を抑える「過剰反応しない」アプローチ
スピースはこの日、自分が最も上手くできたことは何かと問われると、ゴルフの技術的な側面ではなく、内面的なコントロールを挙げた。
「おそらく、物事に対して『過剰に反応しなかった』ことだと思う。それが、今自分が取り組んでいることなんだ」
近年、ショットの復調を感じながらも、思うような結果に結びつかないフラストレーションと戦ってきたスピース。調子が良いと感じているからこそ、結果を求めて焦り、ミスに対して過剰に感情を波立たせてしまうことがあった。「自分のゲームは良くなってきていると感じるから、結果として現れてほしいと思う。だからフラストレーションが溜まるんだ」と彼は素直な胸の内を明かす。
彼がいかにその感情のコントロールを試されたかを示す事実がある。スピースは会見で、「今日は4つあるパー5すべてで簡単にバーディが取れる位置にいたのに、バンカーショットのミスやパットの不調で、結局パー5をトータルで1アンダーでしか回れなかった。難コースではこういう取りこぼしが一番メンタルにくる」と明かしている。最大のチャンスを逃し続けても決してキレず、「ボギーを打たないこと」に集中し続けた精神力が、彼を上位に踏みとどまらせた。
不運を受け入れ、最悪の事態を防ぐマネジメント
この日のラウンドは、強まる風と速さを増すグリーンが選手たちを苦しめた。スピースも例外ではなく、完璧に思えたショットが風に流されたり、不運なバウンスでラフやバンカーの縁に捕まったりする場面が何度かあった。しかし、そこで感情を爆発させることはなかった。

「最悪のスコアがボギーになる」マネジメントを実践するジョーダン・スピース(写真は26年ソニーオープン・イン・ハワイ、撮影/岩本芳弘)
「昨日いくつか良いバウンスに助けられたように、今日はラフやバンカーの縁で止まったり、難しい状況に陥る不運な場面がいくつかあった。風が吹く難しいコースではよくあることだ。でも、私はそれに反応しなかった。そして、『ボギーが最悪のスコアになるようにする』ことだけを確実に実行したんだ」
ミスをパーで凌ぐことができなくても、絶対にダブルボギー以上は叩かない。その徹底したリスク管理と感情のコントロールが致命傷を防ぎ、上位を維持する原動力となった。
難関18番で奪った「大泥棒」のようなバーディ
耐え忍ぶゴルフの真骨頂は、ツアー屈指の難易度を誇る最終18番ホールで実を結んだ。左サイドに巨大な池が構え、強風が吹き荒れるこのホールで、スピースは見事にバーディを奪取してみせたのだ。
「あれは、私がPGAツアーでプレーした中で最も難しいホールの一つだった。だから、あそこでバーディを奪えたのは、まるで『大泥棒(huge steal)』のような気分だったよ」と、スピースは会見で笑みをこぼした。
彼が「大泥棒」と笑うこのホールがいかに難関であるかは、他の選手たちの悲鳴からも明らかだ。同日、同じく上位につけるニック・テーラーはティーショットを左の巨大な池に打ち込んでおり、アレックス・スモーリーもティーショットを右のラフに外してスコアを落としている。また、アレックス・フィッツパトリックに至っては「間違いなく今年プレーする中で最も難しいティーショット。逃げ場がない」と白旗を上げるほどだ。他選手が次々と罠にハマる中でのスピースのバーディ奪取は、まさにその言葉通りの大きな価値を持っていた。
【動画】ジョーダン・スピース、18番のバーディで2位タイで週末へ【PGAツアー公式X】
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x.com「ただ、パットを強く打ちたかっただけなんだ。午後はグリーンがかなり遅くてバンピー(芝が荒れてデコボコな状態)になっていたからね。17番でパットが決まって、ようやくカップが存在するように見え始めた。時にはそれだけで十分なんだ」
我慢のゴルフは、最後の最後で報われた。スピースは会見で「(我慢し続けた結果)上がり3ホールのうち2つでバーディを奪えたのは、週末に向けてとてつもなく大きなボーナスになった」と語っている。
首位のキャメロン・ヤングには5打差をつけられているが、スピースの闘志は衰えていない。
「明日はもっと風が強くなるだろう。だから、毎日アンダーパーで耐え続けることが大きな意味を持つ。日曜日には状況が変わるし、2ラウンド続けてアンダーパーを出せば、何が起こるか分からない」
「反応しすぎない」という新たな精神的な武器を手に入れたジョーダン・スピース。荒れる週末のブルーモンスターで、彼の成熟したプレーがさらなるドラマを生み出すかもしれない。
