
プロ2年目、2度目の「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」に挑む吉田鈴(撮影/姉﨑正)
猛者も警戒。申と菅が語る「我慢のマネジメント」

【左】ツアー通算30勝目の永久シード王手の申ジエ【右】ホステスプロとして挑む菅楓華(2026年「ヤマハレディースオープン葛城」最終日、撮影/有原裕晶)
本大会の舞台は、茨城ゴルフ倶楽部(6718ヤード・パー72)。開幕前日の囲み取材では、トッププロがその難しさを語っていた。
ツアー通算30勝の大記録に王手をかけているベテランの申ジエは、「メジャー大会だから厳しいセッティングは間違いない。頭を使う」と断言。「我慢する場所をしっかり我慢するコースマネジメントがとても大事」と、長年の経験から導き出した極意を語る。
また、今季すでに優勝を果たしているホステスプロの菅楓華も、「メジャーの中でも一番難しいと思う。傾斜が強いこともありグリーンがより小さく見える。ショットの精度がカギになる」と警戒。「我慢勝負だと思っているので、ボギーは打ってもしょうがない。ダボをあんまり打たないようにしたい」と、あえてピンチを受け入れクレバーにスコアをまとめる覚悟を見せた。トッププロでさえ「耐えるゴルフ」を強いられるのが、この舞台の恐ろしさだ。
5時間の猛練習。吉田鈴が直面したメジャーの洗礼

中学生時代から指導してもらっているというツアー7勝の今野康晴(いまの・やすはる)プロとタッグを組む(撮影/姉﨑正)
そんな過酷なフィールドのなか、練習日に熱心にクラブを振り続けていたのが吉田鈴だ。彼女の姉は吉田優利。誰の記憶にも残っている通り、2023年の同大会・同コースで優勝を飾っている。そんな姉を持つ鈴は、どんな思いを抱き本大会に挑むのだろう。開幕前の練習日、彼女はアプローチやショットを中心に約5時間にも及ぶ入念な調整を行っていた。
実際にコースを回った吉田の目にも、その難易度は明らかだった。
「(練習ラウンドを回って)グリーン周りのコンディションは1年で一番いいんじゃないかというくらい綺麗でした」(吉田・以下同)
コースの仕上がりを称賛する一方で、彼女を悩ませるのが、ピンポイントの正確性が求められるターゲットだ。
「ワングリーンで小さく距離も長い。さらに硬くて速いので、パーオン率が低くなると思う。なのでショットは多めに練習しました」

前日の練習で力を入れていたのはショットだ。「左に行くことに悩んでいたので、立っているときと後ろにいるときの目線のズレや出球の角度を確認して合わせていました」
ごまかしの効かないセッティングを前に、「クラブをコントロールする力の弱さ」や「左にいく悩み」を克服するべく地道な反復練習に没頭していた。
プロ合格で開花した「言語化」。成長した姿で大舞台へ

後半のアウトコースは1バーディノーボギーで回り、難関コースを攻略(撮影/姉﨑正)
大舞台を前に黙々と基礎を固める吉田だが、現在の彼女の最大の強みは練習量だけではない。中学生時代から彼女を指導し、今大会でキャディを務める今野康晴プロは、プロテスト合格後からの変化を感じ取っている。
かつての吉田は、溢れる才能を頼りに「感覚」でゴルフをしていた部分が大きかったという。しかしプロとして戦う現在は違う。
「学生時代から感覚でやってきたものが、経験を重ねることで『こうしたい』という明確なイメージになってきました。(その流れで自然と)『こう打ちたい。けれどこういったミスが出る。そのミスを避けるにはどうしたらいいのか』と、ニュアンスで悩みを聞くことがなくなりました」
圧倒的な練習量の中で自ら試し、感じたことを言葉にする。そして明確な意図を持った上でキャディの助言を仰ぐ。
「自分で試して自分のものになった技術に、プラスしてコーチのアドバイスを聞けたら、もっと新しい技が習得できる」
自らの課題を言語化できるようになったことで、彼女のゴルフはより論理的で再現性の高いものへと進化を遂げたのだ。
「初優勝までの期間は、すごく大事だと思っています。(今大会は)歴代の優勝者を見ても勝っているのは実力の方々。それに対してどこまで今の自分が対応できるのか。大きい大会になるほど慎重になるからいい意味で雑に。挑戦者として挑みたいです」
今季は「富士フイルム・スタジオアリス」で自身初のトップ5入りを果たし、4月に公開されたゴルフYouTubeチャンネルではキャディを務めた島中大輔氏から「今年はやりそう」と声を掛けられ、周囲の期待が高まる中でも彼女の足元は決して揺るがない。感覚に頼っていたかつての少女はもういない。自らの現在地を的確な言葉で捉え、着実にステップアップを続ける「成長した吉田鈴」が、研ぎ澄ませた技術と冷静なマネジメントを武器に、難攻不落のメジャーに挑んでいる。
