手首の次は肩。幻の快挙と長引く痛みの告白

首位と5打差の11位タイで初日を終えたブライソン・デシャンボー(写真は26年LIVゴルフ・メキシコシティ、提供/LIVゴルフ)
記憶に新しい前戦の「LIVゴルフ・メキシコシティ」。デシャンボーは手首の怪我により、最終ラウンドを前に棄権するという苦渋の決断を下していた。実はこの時、彼は「LIVゴルフ史上初となる個人3連勝」という大記録のチャンスを手にしていたのだ。
現在、彼は年間ポイントランキングで2位(479.6ポイント)につけているが、首位のジョン・ラーム(779ポイント)には約300ポイントの大差をつけられている。歴史的快挙を逃した悔しさと、年間王者を追走するためにこれ以上は休めないという絶体絶命の状況が、彼をコースへと駆り立てている。
「手首の具合は良くなってきたんだ」と彼は語るが、事態はそれほど単純ではなかった。
「実は、ずっと肩に痛みを抱えているんだ。それも、あのライダーカップの時からだ」
MRIなど様々な検査を行ったが、明確な異常は見つかっていないという。「使いすぎによる痛み」と自己分析するが、シンガポールや南アフリカで連勝を飾った際も決して万全ではなかった。
「あの連勝の時でさえ、毎朝目を覚ますたびに『今日は痛むだろうか?』と心配しながら戦っていたんだよ」
この日のラウンド中も、彼は肩が限界を超えないよう、腕の動きをかばいながらプレーを続けていた。ベストなショットが打てないフラストレーション。それでも彼は、「今日のような状態で、よく最後まで戦い抜いたと自分を誇りに思う」と、自らの粘り強さを素直に称えた。
全米オープン予選免除の「余裕」と、メジャーへの完璧な予行演習
満身創痍のデシャンボーが、それでもこのヴァージニアの地で懸命にプレーを続けるのには、年間王者争いの他にもう一つ理由がある。それは、次週に控える今季メジャー第2戦「全米プロゴルフ選手権」を見据えた究極のテストベッドとして今大会を利用しているからだ。
今大会は、多くの選手にとって次月のメジャー「全米オープン」の出場権をかけた熾烈なサバイバルの場(ランク上位3位以内で出場権を持っていない最上位者が全米オープンへ出場可能)でもある。しかし、過去2回の全米オープン王者であるデシャンボーは、すでに出場権(免除)を獲得している。他の選手が目の前の出場権獲得に必死になる中、彼だけは純粋に「全米プロに向けた調整」と「LIVの年間王者争い」にのみフォーカスできる特異な立ち位置にあるのだ。
今週の舞台であるトランプ・ナショナルDCは、グリーンの速さやラフのセッティングなど、非常にタフなコンディションに仕上がっている。
「遅いグリーンから急に超高速グリーンに移行するのは、本当に地獄のような難しさがあるんだ。だから、来週のメジャーに向けて、ここ(トランプ・ナショナルDC)のような似たコンディションのコースで準備できるのは、最も重要なことの一つなんだよ」
身体の痛みを抱えながらも、彼の目はすでに次なるメジャータイトルへと向けられている。
「まだショットの調整は必要だが、そこまで遠くはない」
科学者の異名を持つ男が、自身の身体という最も複雑な難題と向き合いながら、メジャーの頂点へ向けた執念の予行演習を続けている。週末、そして次週の全米プロへ。デシャンボーの戦いは、いよいよ熱を帯びていく。
「ワイルドカード」の意地。浅地洋佑が見せた世界レベルの小技
満身創痍のデシャンボーがパワーと執念でコースと格闘する一方で、日本から参戦している浅地洋佑は、全く異なるプレースタイルで静かに、しかし確かな存在感を放っている。特定のチームに属さず、個人資格の「ワイルドカード」として孤軍奮闘する浅地は、初日を4バーディ・2ボギーの2アンダー「70」でまとめ、16位タイという上々のスタートを切った。
驚くべきはその精度だ。初日のパーオン率は約78%を記録し、グリーンを外した際のリカバリー率も75%と持ち前のしぶとさを見せつけた。実は今季、浅地がグリーン周りから「寄せワン(アップ&ダウン)」を決めた回数は、ショートゲームの魔術師キャメロン・スミスらに次いでリーグ全体で5番目に多い。世界最高峰の舞台で、己の技術だけを武器に生き残りをかける日本の職人のプレーからも、週末に向けて目が離せない。
