「タイトリストは難しい」は完全に過去の話
かつてタイトリストのアイアンといえば「男子プロやハードヒッター専用」「上級者以外お断り」といった、ストイックで難しいイメージが先行していた。しかし、現在の女子ツアーにおける使用プロの増加は、そうした固定観念がもはや過去のものであることを物語っている。

女子プロに人気の高い「T250」
現在展開されているTシリーズは、大きく分けて4つのモデルで構成されている。ツアーアイアンの完成形として精密なコントロールを追求した「T100」、その伝統的な形状を維持しつつ飛距離性能と寛容性をプラスした「T150」、中空構造のテクノロジーを駆使して圧倒的な許容性と高弾道を実現した「T250」、そしてシリーズ最大の飛距離とやさしさを提供する「T350」だ。女子プロたちがなぜこれらのモデルを選び、どのように信頼を寄せているのか。サロンパスの会場で5人のプロにその本音を聞いた。
「T150」は飛んで止まる、が見事に融合している
まず、アスリートモデルの流れを汲みつつ飛距離と寛容性を補った「T150」を手に戦っているのが、実力者のペ・ソンウ。彼女は長年、タイトリストを使い続けているが、モデル変更には明確な理由があった。

ペ・ソンウ。ウェイトを絞ったことによる飛距離低下を「T150」の性能で補ったという
「元々は針のように細くてシビアなヘッドで、一点を射抜くような感覚で打つのが好きだったんです。でも、体重が落ちたことで飛距離を補いたいと考えるようになり、『T150』へ変更しました。『T100』と比べてスイートスポットが確実に広く、とても打ちやすくなっています。ミスヒットをしても距離が落ちないという安心感があり、精神的にもやさしく感じますね。それでいてスピン量に関しては以前のモデルから大きく変わらないので、グリーン上で止める性能も犠牲になっていません」
2013年からタイトリストを愛用し続ける彼女にとって、その魅力は「六角形のパラメーターが全てフルの状態」のような、欠点のない総合力にあるという。7番でキャリー145ヤード、そこから10ヤード刻みで正確に刻める安定感こそが、彼女のプレーを支えている。
同じく「T150」を武器にする肥後莉音も、その形状と性能のバランスを高く評価している。

ルーキーの肥後莉音。もともと「T100S」を愛用していたこともあり「T150」への変更はスムーズだった
「ヘッドサイズが大きすぎず、オフセットもあまり入っていないシャープな顔が気に入っています。フィッティングを重ねた結果、自分のスウィングに対して一番良い数値が出たのがこの『T150』でした。以前から『T100S』などを使用してきたので、長年使い慣れている形状に近いことも安心感につながっています。身長に合わせて、全番手のライ角を少しフラットに調整して使っています」
肥後は、タイトリストが重要視する「3D(Distance Control:番手間の飛距離差の均一化、Dispersion Control:左右のバラつきのなさ、Descent Angle:大きな落下角度)」のすべてに納得している。
「飛距離を均一に揃えられるディスタンスコントロールはもちろん、ハーフショットやスリークォーターショットでも距離を合わせやすいのが助かります。また、フィッティング時に実感した通り、バラつきが非常に少ない。ヘッドの大きさがちょうどよいので、ラフが厳しいセッティングでも抜けが良く、思い通りに球を曲げられる操作性もあります。『T100』よりロフトは立っていますが、落下角もしっかり出ている。飛距離と高さの両立ができている素晴らしいアイアンだと思っています」
「T250」は軟鉄と中空のいいとこ取り
一方、よりテクノロジーの恩恵を享受し、やさしくピンを狙う選択をしたのが永峰咲希だ。彼女はサロンパスの前週から「T250」を実戦投入した。

今年クラブ契約がフリーとなった永峰咲希。選んだのは寛容性にも優れる「T250」
「実はシャフトのテストをするときに新しく組んでもらったのが『T250』だったんです。それが抜群に良くて。球が上がり切ってくれるし、押せる手応えも十分。迷わずチェンジしました」
彼女にとって、「T250」はタイトリストのイメージを大きく変えるものだった。
「昔のマッスルバックのような難しいイメージとはまったく違います。ミスヒットに強く、ボールがとにかく高く上がってくれる。それでいてスピンも十分に入り、単に弾くだけではないアイアンらしい打感もあります。まさに軟鉄と中空の良いとこ取りですね。最高到達点が非常に高いので、風にあおられてしまわないか心配もありましたが、実際は風に押される感じがなく強い弾道が出ます。メジャートーナメントのようなタフな設定では、この高さは大きな武器になります」
続いて話を聞いたのは、ベテランのイ・ミニョン。彼女もまた、タイトリストに対する先入観を実戦で塗り替えてきた一人。選んだのは同じく「T250」だ。

長年タイトリストを使うイ・ミニョンは、年を追うごとに安心感のあるモデルへと移行。現在は「T250」
「昔は男子プロ専用の難しいクラブだと思っていました。でも、実際に使ってみると意外とシンプルで簡単。2、3年前から使い始め、最初は『T100』、次に『T150』、そして今はT250と、より安心感のあるモデルへ移行してきました。構えた時の顔に安心感があるのは、プレー中のメンタルにとても良い影響を与えてくれます」
彼女は4番アイアンからバッグに入れているが、4番でキャリー180ヤードを基準に正確な10ヤード刻みを維持している。
「身長に合わせてライ角を少しだけフラットにしていますが、それ以外のロフトなどは調整していません。調整していない状態でも十分に球が上がってくれますし、ラフからの抜けも“シュッ!”と心地よい。打ちやすいクラブを求める私にとって、今のベストな選択です」
そして、特定の番手でピンポイントに「T250」の性能を活かしているのが、飛ばし屋の神谷そらだ。彼女は今年の開幕戦から5番アイアンに「T250」を採用している。

5番アイアンを駆使する飛ばし屋の神谷そら。数ある候補から選んだのは「T250」
「以前は『大人の男性や男子プロが使うシビアなもの』というイメージがありましたが、打ってみるとイメージと正反対で、簡単に球が上がってミスに強いやさしさに驚きました。アイアンにはイメージ通りの“スピード”と“高さ”が出てくれることを求めていますが、『T250』はまさにその通りに応えてくれます」
神谷は5番アイアンでキャリー180ヤード程度を計算しているが、ロングアイアン特有の難しさを感じさせないこのモデルが、セカンドショットでの大きなアドバンテージになっているという。
かつては「憧れ」ではあっても「選択肢」に入りづらかったタイトリストのアイアン。しかし、女子プロたちの評価は、精密なコントロール性能という「らしさ」を守りつつ、現代のタフなツアーを戦い抜くための「圧倒的なやさしさ」と「高弾道」を手に入れた最新ギアというふうに変化していた。
彼女たちが信頼を寄せる「Tシリーズ」は、スコアメイクに悩む多くのアマチュアゴルファーにとっても、大きく結果を変える可能性を秘めている。
撮影/姉﨑正

