S.シェフラー「自分のバッグは自分で運べ」

子どもたちにサインをするスコッティ・シェフラー
世界ランキング1位のスコッティ・シェフラー。圧倒的な強さを誇る彼だが、その両親は決して「ステージママ・パパ」ではなかった。両親は彼にゴルフの練習を強要したことは一度もなく、ただ「最高のバージョンの自分になりなさい」とだけ伝え続けていたという。
彼にとって、ゴルフのスコアよりも大切にされていたことがある。
「両親にとって、私のゴルフの成績よりも重要なことがありました。良い学生であり、良い人間であること以外を私に強要することはありませんでした。ゴルフがすべてではなかったのです」
特に母親のスタンスは徹底しており、ラウンドを終えた息子に対して決してその日の「スコア」を聞くことはなかった。
「もし私に知らせたければ、あなたのほうから言うはずだから」
結果ではなく、本人の主体性を何よりも重んじていたのだ。
また、幼少期から師事するコーチのランディ・スミスの教えも彼の自立心を養った。コーチはシェフラーの父に対し、彼がゴルフ場に着いたら親の手を借りるのではなく「自分のバッグは自分でカートから下ろし、自分で準備をさせること」を徹底させたという。世界最強のゴルファーの根底にあるのは、親の過度な期待やプレッシャーではなく、自分自身の足で歩む「自立心」だった。
C.モリカワとX.シャウフェレが語る「楽しさ」と「仲間」

ともに「楽しむ」ことの大事さを伝えたザンダー・シャウフェレ(左)とコリン・モリカワ(右)
まもなく一児の父親となるコリン・モリカワは、ジュニアゴルフ界の現状に優しく警鐘を鳴らす。
「今の親御さんたちは、子どもが10歳や13歳で一番にならなければいけないと考えがちです。でも、親にお願いしたいのは、子どもにはただスポーツを楽しませてほしいということです」
早すぎる結果の要求は、子どもからゴルフの楽しさを奪ってしまう。
「もし子どもが打ちっぱなし(ドライビングレンジ)を楽しんでいるならそこで打たせてあげればいいし、コースに出たいなら一緒にコースに出てあげればいいのです」
モリカワはさらに、子どもたちが成長するためには内発的なモチベーションが不可欠だと説く。
「情熱を注げるものを見つけること。それは決して『誰か他の人の理由(親の期待など)』であってはなりません。自分自身のものでなければならないのです」
親の期待という“他人の理由”ではなく、子ども自身がゴルフを愛する“自分の理由”を見つける手助けをしてほしい。それがメジャー覇者からの切実なメッセージだ。
同じくメジャーチャンピオンであるザンダー・シャウフェレは、記者の質問に対し「親と子ども、その2つにはおそらく異なるアドバイスになるでしょう」と冷静に前置きした上で語り始めた。
親に対しては「とにかく子どもにスポーツを楽しませてあげてほしい」とモリカワの意見に深く同意し、一方でジュニアゴルファーの少年少女に向けては、極めて実践的なアドバイスを送った。
「ゴルフは本質的に個人スポーツであり、孤独になりがちです。だからこそ、自分より上手い友達を見つけて一緒にプレーすることが良いことだと思います。頼りになり、自分をより良くしてくれる存在になりますから」
孤独な戦いだからこそ、ライバルであり仲間である存在が自らを高みに引き上げてくれる。親は結果を焦らず「楽しさ」を奪わないこと。子どもは自らの足で立ち、切磋琢磨できる「仲間」を見つけること。世界の頂点を極めた3人の王者が語る言葉には、ゴルフというスポーツの本質、そして豊かな人間形成のためのヒントが詰まっている。
写真提供/PGAオブ・アメリカ
