ミスを恐れない。世界1位を支える「忍耐力」と睡眠
コース上で一切の隙を見せない女王だが、彼女自身が考える最大の武器は、完璧な技術ではない。コルダは、現在の自身のゲームで最も優れている部分は「忍耐力」であると語っている。
いかに優れたトッププロであっても、ゴルフはミスのスポーツである。過去にはミスを恐れて萎縮してしまう時期もあったという彼女だが、世界を極めた今は違う。「ミスをしてもラウンドが台無しになるわけではない」「バウンスバックできる」と受け入れる精神的な余裕を持てているというのだ。 毎週スウィングが完璧になるわけではないと割り切り、メンタルをフレッシュに保つことを最優先している。

世界No.1のスウィングは子供のころに作られていた!?(写真は24年フォード選手権、撮影/岩本芳弘)
そのフレッシュなメンタルを維持するための究極の秘訣は、意外にもシンプルなものだった。彼女は「8時間から10時間の睡眠」を心がけていると明かしている。また、オフの最初の数日はジムにも行かず少し寝坊するなど、「ただ普通の生活を送って体を休ませる」ことを最優先しているという。技術的な理想を追い求めること以上に、まずは体を休め、心を健全に保つこと。それこそが、女王が辿り着いた「最強のメンタル」の土台なのである。
恩師との「ゴミ箱越えフロップショット」と忍者の教え
そんな彼女の豊かな感性とイマジネーションは、幼少期のユニークで自由な練習環境によって育まれた。子供の頃のコルダは、単調な基礎練習ばかりが続くと、すぐに集中力が切れてしまうタイプだったという。
そんな彼女に対し、当時のコーチであったトレイシー・ライザーは、型にはまったスパルタ指導を強要しなかった。むしろ、基礎練習で集中力が切れた際、ゴミ箱や木を越えるロブショット(フロップショット)など、クリエイティブな練習をして楽しませていたのだ。コース上での自由な発想力とリカバリー能力は、まさにこの「遊び」の中で磨き上げられたものだ。
幼少期にトレイシーからゴルフの純粋な楽しさを学んだ後、14歳のコルダは深刻な背中の痛みに苦しむことになる。そんな彼女にゴルフへの愛を取り戻させてくれたのが、新たにコーチとなったデビッド・ウィーランだった。
コルダは彼を「彼は忍者みたいだった。質問して振り返るとそこにいて、数球打って振り返るともういなかった」とユーモアを交えて振り返る。そして「今の私があるのは彼のおかげ。私のスウィングは文字通り彼が作り上げた」と、最大の賛辞と全幅の信頼を口にしている。寸分の狂いもない美しいスウィングは、この「忍者」の教えによって完成されたのだ。
ゴルフ特化型はNG?「シンメトリー」を求める独自のトレーニング論
コース上で最高のパフォーマンスを発揮するため、現代のトップアスリートたちは科学に基づいた過酷なトレーニングを積んでいる。しかし、ここでもコルダの考え方は極めて独自で興味深い。 彼女はジムでのトレーニングについて、「ゴルフ特化型のメニューは考えすぎてしまうからやりたくない」と明言しているのだ。
「自由にスウィングできる時が一番良い状態」と語る彼女は、ゴルフの動作に直結するような専門的なトレーニングは、かえってスウィングへの過度な意識を生み出し、自然な動きを阻害してしまうと考えている。 では、彼女はジムで何をしているのか。その答えは極めて論理的だ。
「ゴルフは片側だけのスポーツで、私たちの体はねじれている。だから、できるだけ体を左右対称(シンメトリー)にし、一直線に保つためにジムに行く」
ゴルフから離れた場所では、あえてゴルフの複雑な動きを忘れ、純粋なアスリートとして「体の構造を守る」ための基礎的な肉体を作る。過剰な情報や執着を手放し、本質だけを研ぎ澄ます、ネリー・コルダ独自のシンプルで力強いアスリート論である。


