5月28日から韓国釜山にあるアシアードCC(7024ヤード、パー70)で開催される「LIVゴルフ・コリア」の開幕前会見に臨んだブライソン・デシャンボー。彼は昨年の「LIVゴルフ・コリア(インチョン開催)」において、3日間トータルで19アンダー(3ラウンドすべてで66以下)という圧倒的なスコアを叩き出し、見事に個人優勝を果たしている。ゴルフ界屈指の「科学者」として知られる彼が、自身の奥深いゴルフ哲学からエンターテイナーとしての葛藤、そしてアンチからの痛烈な批判に対する向き合い方までを赤裸々に語った。冷静な顔の奥から浮かび上がってきたのは、規格外の飛距離以上に熱く、深いゴルフへの純粋な愛だった。

科学とフィーリングの融合。ベン・ホーガンから受け継ぐ「泥臭さ」

圧倒的な飛距離と物理学に基づくアプローチで知られるデシャンボーだが、彼の哲学の根底にあるのは意外にも泥臭い努力だ。自身の信念について問われると、伝説のゴルファー、ベン・ホーガンのように「泥の中から掘り出す」ような努力を挙げた。さらに、ゴルフスウィングを力学的に分析した名著『ザ・ゴルフィング・マシーン』や、モー・ノーマン、タイガー・ウッズ、ペイン・スチュワートといった偉大な先人たちからインスピレーションを受けていると語る。

一方で、科学的なデータやリサーチを重視しつつも、実は「非常にフィーリング重視のアスリート」であり、クラブヘッドの感覚を大切にしていると明かす。計算し尽くされたスウィングの裏で、データ分析とアスリートとしての感覚をすり合わせ、現実と認識を一致させることこそが自身の哲学なのだという。

その哲学は、今シーズンの圧倒的なスタッツによって証明されている。平均飛距離は319.4ヤードでリーグ2位(1位は324.6ヤードを記録しているホセレ・バレスター)、イーグル獲得数は9個で単独1位。しかし単なる飛ばし屋ではなく、パーオン率(GIR)はリーグ5位(75.51%)、スクランブリング(リカバリー率)は3位(70.59%)、平均パット数も4位タイ(平均1.57)と、あらゆる面でトップクラスの数字を残し、現在個人ポイントランキングで2位につけている。極限まで頭脳とデータを駆使しながらも、最後は自らのアスリートとしての感覚を信じ抜く。その絶妙なバランスこそが「科学者」の強さの真髄である。

「怒り」も道具の一つ。エンターテイナーと競技者の境界線

LIVゴルフの会場で、デシャンボーは誰よりもファンサービスに熱心な選手の一人として知られている。しかし、彼にとってエンターテイナーとコンペティター(競技者)のバランスをとるには、思考の「区別(コンパートメント化)」が重要なのだと語る。

プロとして常にファンを笑顔にしたいと願う一方で、彼は一人の勝負師でもある。良いプレーをしている時は自然にエンターテイナーになれるが、悪い時は偽りたくないため難しくなると、素直な人間らしい葛藤を告白した。最近のメジャー大会での不調についても自ら触れ、「メジャー大会ではプレッシャーをかけすぎてしまった。誰も完璧ではないし、できる限り良いプレーができるよう懸命に努力し続けている」と素直に認めつつ、「私の中に『諦め』という文字はない。 頭を下げて、前に進み続けるだけだ」と語気を強める。

さらに興味深いのは、彼の徹底したメンタルコントロール術だ。彼は自身の感情や側面を「ツールボックス(道具箱)」に例え、時には「怒り」すらも集中力を高めるためのツールとして意図的に使い分けているという。怒りをただ押し殺すのではなく、勝負に勝つための「道具」として引き出しから自由に取り出す。トッププロならではの恐るべき自己制御能力である。

アンチの批判もエネルギーに。彼を動かす“子供の笑顔”

常に注目の的となるデシャンボーは、熱狂的なファンを持つ一方で、時には厳しい批判に晒されることも少なくない。しかし、彼に悲壮感は全くない。

画像: LIVゴルフ・コリアの公式会見に出席したブライソン・デシャンボー

LIVゴルフ・コリアの公式会見に出席したブライソン・デシャンボー

自身に対する世間の賛否両論について、彼は「私がゴルフ界にとって最悪だと言う意見も、最高だと言う意見も尊重する」と達観している。彼が周囲の声に惑わされないのは、「毎週の試合で勝つこと」以上に、「ゴルフを通じて人々の人生を豊かにすること」を自らの大きな使命だと信じているからだ。会見では、その強い思いを裏付ける強烈な一言を放った。

「毎週勝ちたいか? 100%そうだ。では、自分の人生以上にゴルフというゲームを大切に思っているか? ああ、そうだよ。ゴルフが人々の人生に何をもたらすことができるかを知っているからね」

だからこそ、批判すらもポジティブなエネルギーに変え、前に進む原動力にしているのだ。周囲のノイズは、彼にとって自らを奮い立たせる燃料に過ぎない。

インタビューの最後、彼はゴルフの過酷な世界で戦い続ける本当の理由を語った。

「子供が笑顔で見上げてサインを求めてくれること。それこそが、私が毎日ここに戻ってくる理由だ」

科学と論理でゴルフの全てを解き明そうとする男の胸の奥には、どんな最新データでも測りきれないほど純粋で、温かいゴルフへの愛が燃え続けている。

写真/LIVゴルフ


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