大会史上2番目の珍事!「6人の首位タイ」とコースの罠
初日のリーダーボードの最上段には、ライアン・ジェラード、アンドリュー・パットナム、トム・キム、J・J・スポーン、マット・マッカーティ、リー・ホッジスと、実に6人が6アンダーの「64」で並んだ。
PGAツアーという最高峰の舞台において、初日とはいえ首位にこれだけの人数が並ぶのは極めて稀だ。18ホール終了時点での「6人の首位タイ」は、大会史上2番目となる記録であると同時に、今季のPGAツアー全体を通しても、先週のメジャー大会(全米プロゴルフ選手権)の7人に次ぐ多さだ。
この大混戦を生んだ背景には、コースコンディションと天候の妙がある。首位タイのトム・キムが「今日は無風でグリーンも柔らかかった」と語るように、事前の雨でグリーンが止まりやすく、テキサス特有の強風も吹かなかったことでバーディ合戦となった。
しかし、キムが「距離は長くないが、ポジション重視の非常にハードなコースだ」と警戒する通り、コロニアルCCは決して易しいコースではない。5アンダーの好スタートを切ったブライアン・ハーマンも、「今日はグリーンが柔らかくスコアが出たが、ひとたび風の向きが変わって吹き始めれば、いくつかのホールは『ほぼ不可能』な難易度に豹変する」と警告している。風が牙を剥く明日以降、真のサバイバルが始まるだろう。
完璧なキムと泥臭いパットナム。明暗分かれる首位タイの裏側
首位に並んだ6人のスコアメイクも、決して一様ではない。たとえばアンドリュー・パットナムは、自身のラウンドを「ショットが散らかっていて、非常に奇妙なラウンドだった」と振り返る。しかし、スクランブリング(グリーンを外した時のパーセーブ率)で7分の7という驚異的な粘りを見せ、最終9番ホールではグリーンエッジから約10メートル(33フィート)の距離をパターでねじ込み、見事に首位へ並んでみせた。

不調からの復活を期するトム・キム(写真は26年ソニーオープン・イン・ハワイ、撮影/岩本芳弘)
一方で、見違えるようなキレを取り戻したのが韓国の若きスター、トム・キムだ。今シーズンは不調(最高順位は5月初旬の6位タイ、フェデックスカップランキングは110位と出遅れ)が続いていたが、今大会の好調の裏には「同伴競技者との相乗効果」があったという。キムは「同伴競技者のエリック(・ファン・ローエン)が序盤からとても絶好調で、それに引っ張られるように自分もパットが入り始めた。グループ全体のリズムがとても良かった」と明かしている。
さらに彼は、新しいスウィングコーチとともに基礎を見直していることも好調の要因に挙げた。不調に陥ると大胆なスウィング改造に走りがちだが、キムのアプローチは異なる。スウィングを大きく変えるのではなく微調整を加えることで打球が良くなり、自信が高まっていると語り、自身の長所を再び磨き上げることで確かな手応えを掴みつつある。
不運を受け入れる器の大きさと、日本勢への期待
初日のラウンドは、キムにとって試練の連続でもあった。好調なプレーを続け、まさにリズムに乗っていた終盤、残り1ホールのところでホーンが鳴り、悪天候による一時中断を余儀なくされたのである。あと少しで最高のラウンドを終えられるタイミングでの水入りに対し、彼は「ただただ最悪」と素直な悔しさを口にした。
だが、ここでメンタルを崩さないのがトッププロの凄みである。感情を露わにした直後、彼は「それも一部」と現実を受け入れ、しっかり休んで明日に備える姿勢を見せた。ゴルフという自然を相手にするスポーツにおいて、不運を受け入れる器の大きさこそが、彼を再び勝利へと導く鍵となるだろう。
なお、日本のゴルフファンにとって見逃せないのが松山英樹、久常涼など日本人出場者の動向だ。松山は初日を4アンダーの「66」でラウンドし、首位とわずか2打差の19位タイと好位置につけている。また同順位には久常涼もいる。平田憲聖は「67」で32位タイ、金谷拓実、中島啓太は「69」で57位タイとまずまずのスタート。歴史的な大混戦の中、日本のエース、そして若手たちが明日以降、どのように順位を上げていくのか、こちらも熱い視線が注がれる。
