「ショップライトLPGAクラシック」の舞台となるニュージャージー州のシービュー・ベイコース(6263ヤード・パー71)。現代のツアー基準からすれば非常に距離が短く、一見すると「飛ばし屋」が力任せにスコアを伸ばせそうに思える。しかし、この歴史あるリンクススタイルの名コースは、そんな単純なパワーゲームを許さない緻密な罠を張り巡らせている。トッププロたちの証言から、この異色のコースの真の攻略法を紐解いていく。

変幻自在の海風と、伸びたラフの罠

このコースが持つ最大の防御壁、それは海沿い特有の海風だ。大会の顔とも言えるベテランのアサハラ・ムニョスは、「ツアーの中でも距離が短いコースの一つだが、風が吹くと非常にトリッキーになる」と警戒を促す。

一般的なニュージャージーのコースと言えば木々に囲まれた林間コースだが、シービュー・ベイコースはその趣が異なる。彼女が指摘するように、吹き晒しのフェアウェイでは風のジャッジが命取りとなるのだ。

さらに今年は、深く伸びた芝が選手たちを苦しめる。レイチェル・キーンは「ラフが数年前の記憶よりも長く、深くなっている」と指摘。フェアウェイを外せば、飛距離が計算できないフライヤーや、脱出困難なライに直面することになる。彼女によれば、「パー5はスコアを伸ばすチャンスだが、2番や6番などはパーで上がれれば御の字」だという。ホールごとの難易度を見極めた、メリハリのあるマネジメントが不可欠だ。

その象徴が最終18番(パー5)である。ここはツアーが選定する「Aon Risk Reward Hole」に指定されており、フェアウェイを捉えれば高確率で2オンを狙えるが、ラフやバンカーに落とせば途端にスコアメイクが苦しくなる。まさにハイリスク・ハイリターンの罠が最後まで選手を待ち受けているのだ。

実際、大会期間中の予報では連日約7〜11m/sの突風や、不安定な雨が警戒されている。雨を含んで重くなった深いラフと海風のコンボは、選手たちのマネジメントを極限まで狂わせるだろう。

極小グリーンが要求する「ウェッジとパター」の精度

そして、スコアメイクの最大の鍵を握るのが、砲台状に設置された極小のグリーンである。

ムニョスは、「グリーンが小さいためセカンドショットの精度が重要になる。パットを決めるのも容易ではないので、チャンスを多く作らなければならない」と分析する。短いパー4が多いからといって、無造作にグリーンを狙えるわけではない。

「グリーンを外せば、パーセーブのために難しい5〜6フィートのパットを残すことになり、そのペナルティは大きい」

アプローチのミスが即座にボギーへ直結するプレッシャーの重さを、彼女はそう語る。

だからこそ、このコースでは100ヤード以内の精度が勝敗を分ける。「グリーンを狙うウェッジショットを打つ機会が多いため、事前のウェッジ練習が非常に有効だ」と、ムニョスは自身の攻略メソッドを明かした。スピンコントロールと弾道の高さを完璧に操れなければ、この小さなグリーンにボールを止めることはできない。

前回覇者のジェニファー・クプチョも、「コースが短い分、ウェッジを打つ機会が多いので精度の高さが必須」と同調する。さらに彼女は「ここのポアナ芝のグリーンは(特に濡れると)バンピー(でこぼこ)になりやすく、パットを決めるのが一層難しくなる」と警戒を強めており、ムニョスが語る「5〜6フィートのパーパットの重圧」を裏付けている。

「25アンダーといった極端な伸ばし合いのスコアにはならないだろう」と予測するムニョスの言葉通り、今大会で問われるのはパワーではなく、卓越したアイアンショットとショートゲームの技術である。

過酷なショートゲーム戦を制する、注目の日本人選手たち

風を読む高いゴルフIQと玄人好みの緻密な戦いが予想されるなか、海風が吹き抜けるシービューで最も切れ味鋭い小技を持つ者は誰か。日本人選手で特に期待したいのが、吉田優利と渋野日向子だ。

画像: SG:アラウンド・ザ・グリーンは+0.57で全体の9位と上々だが、SG:パッティングは-1.27で140位と課題が残る渋野日向子。パッティングが上向けば上位争いも期待できる(写真は26年富士フイルム・スタジオアリス、撮影/大澤進二)

SG:アラウンド・ザ・グリーンは+0.57で全体の9位と上々だが、SG:パッティングは-1.27で140位と課題が残る渋野日向子。パッティングが上向けば上位争いも期待できる(写真は26年富士フイルム・スタジオアリス、撮影/大澤進二)

グリーンを外したピンチの状況から、アプローチ(ウェッジ)とパターでパーを拾う確率を示す「スクランブル率」において、吉田はツアー全体9位(62.96%)、渋野は10位(62.93%)と、揃って極めて高いリカバリー能力を誇示している。小さなグリーンを外した際、彼女たちの巧みなウェッジワークは強力な武器となるはずだ。

さらに、ひとたびグリーンに乗せれば、ラウンド平均パット数で上位につける馬場咲希(18位タイ)や、パーオン時の平均パット数で高水準をマークする岩井明愛(14位タイ)のパッティングセンスにも注目したい。

パワー全盛の現代ツアーにおいて、あえて緻密な技術が問われる今大会。世界屈指のショートゲームを持つ日本勢が、この難コースをどう攻略するのか大いに注目したい。


This article is a sponsored article by
''.