想定外の苦戦と反省を経て、母国の「最も困難な舞台」へ
先週の「LIVゴルフ・コリア」について、ラームは事前のコースチェックから「20アンダー前後までスコアが伸びる」と予想していた。しかし、実際の優勝スコアはホアキン・ニーマンの通算12アンダー。思ったよりスコアが伸びず、全員が衝撃を受けたと振り返る。
その最大の理由は特殊な芝にあった。フェアウェイを外すとグリーンに止めることが極めて難しく、ウェッジのスピンが全く効かない特殊な芝の反応にアジャストするまで時間を要したと、技術的な苦悩を明かしている。しかし、彼はそれを環境のせいにするだけではない。「(大会の)最初の数日は、十分な数のフェアウェイをキープできなかった」と、自らのショット精度への反省も口にしている。常に自身の技術へベクトルを向ける、この求道者としてのスタンスこそが彼の強さを支えているのだ。

先週の「LIVゴルフ・コリア」では最終日までウェッジが合わず首位と8打差の16位タイでフィニッシュしたジョン・ラーム(写真/LIVゴルフ)
そして今週の舞台は、勝手知ったる母国スペインのレアル・クラブ・バルデラマ(7010ヤード・パー71)。ラームにとってこの大会は「今年の一番のハイライト」であり、極めて困難なコースと評しつつも、並々ならぬモチベーションを燃やしている。
「本業に専念する」レジェンドへの敬意と、王者の圧倒的なスタッツ
この難コースを攻略する上で、ラームは同郷の先輩を最高の手本としている。同コースで過去に4回の優勝実績を持つセルヒオ・ガルシアを引き合いに出し、卓越したボールストライキング能力と風のなかでボールを操る技術を「マスター」と称賛した。実際、名手ガルシアのショット力は健在であり、今季のパーオン率(Greens in Regulation)においても全体5位タイ(74.48%)という非常に高い精度を誇っている。
一方で、ゴルフ以外の話題、とりわけLIVゴルフのビジネス面について、ラームは明確な線引きを行っている。ともにLIVゴルフをけん引するブライソン・デシャンボーが、投資獲得のためのビジネスプレゼンテーションに奔走している件について問われると、ラームは「自分の領域(本業)にとどまる」という立場をとった。
「自分はビジネスについては何も知らない。もし会議に出ても何を言えばいいか分からないだろう。私の仕事はゴルフをプレーすることであり、それだけで十分に困難だ」
しかし、これはリーグへの無関心ではない。彼は「何をすべきか分かっている適任の選手が知見をもたらしてくれるなら、それは助けになる」と、デシャンボーらの活動を歓迎する「適材適所」の考えを示している。
この「本業に徹する」という言葉には、揺るぎない絶対的な説得力がある。現在ラームはLIVゴルフにおいて、年間個人ポイントランキング1位(815.58ポイント)、獲得賞金ランキング1位(約1628万ドル/約26億円)、パーオン率1位(79.51%)、バーディ数1位(174個)、平均飛距離3位(315.8ヤード)と、他を寄せ付けない圧倒的なスタッツを残しているのだ。
ビジネス面でも精力的に奔走しながらポイント2位につけるデシャンボーと、自身の役割を見極め、本業のゴルフのみに徹してポイント1位に君臨するラーム。アプローチが全く異なる2人がトップを争う構図は、LIVゴルフの奥深さを示している。
ゴルファーである前に、一人の父親として
ラームがビジネスの喧騒から距離を置くのには、もう一つ明確な理由がある。デシャンボーの精力的な活動に対し、ラームは「自分には彼のように国中を飛び回る自由な時間はない」と語る。彼には現在3人の小さな子供がおり、さらにまもなくもう1人が生まれる予定なのだ。そこにあるのは、何よりも家族との時間を最優先にする等身大の父親としての姿だ。
その温かな人間性は、周囲との関係にも表れている。親友であるティレル・ハットンが父親になることについて問われると、「彼が父親になって何かを学び、人として成長するなら素晴らしいことだ」としつつも、「でも、彼にはそのままでいてほしい。彼はありのままで特別な存在だから」と語った。友人の本質を深く愛し、全肯定する変わらぬ絆が垣間見える。
ビジネスの喧騒や周囲の劇的な変化に流されることなく、家族を愛し、純粋にゴルフの技術を追求するジョン・ラーム。母国の難コースで、孤高の王者は己のクラブだけでその絶対的な存在価値を証明する。
