これまで世界中で数々のビッグタイトルを手にしてきた至宝、ローリー・マキロイ。しかし、輝かしいキャリアを誇る彼にも、喉から手が出るほど欲しい「未冠のタイトル」が存在する。それが今週開催される「メモリアルトーナメント by ワークデー」だ。

鬼門のコースと、ニクラスとの「夢の握手」

マキロイは、このメモリアルと、リビエラCCで開催されるタイガー・ウッズのホスト大会が「キャリアの中でどうしても勝ちたい2つの大会」だと明言してはばからない。今年の4月、彼はついにマスターズ連覇という歴史的偉業を成し遂げた。その際、ニクラスは「今や彼の履歴書に残された(手に入れるべき)タイトルは、ここで勝つことだけだ」と最大級の賛辞を贈っている。20年近く親交があり、自身や家族にも温かく接してくれた偉大なるホストに対する思い入れは人一倍強い。最終日の18番グリーンで、勝利の歓喜とともにニクラスと固い握手を交わすことを、彼は長年夢見ているという。

二人の親交の深さを示す、こんな微笑ましいエピソードがある。2年前のマスターズ前の昼食時、ニクラスが「どうやってオーガスタを攻略するつもりだ?」と聞くと、マキロイは自ら1ホールずつ攻め方を説明した。それを聞いたニクラスは「私なら何も変えない。完璧な戦略だ」と太鼓判を押したという。そして見事連覇を達成した今年のマスターズの開幕前、練習場にいたマキロイの肩に手を置いたニクラスは「絶対にダブルボギーを叩くな」と直接発破をかけ、連覇を後押しした。

しかし、今大会の開幕前会見で「このコース(ミュアフィールド・ビレッジ)についてもマキロイにアドバイスしたか?」と記者に聞かれたニクラスは、「いや、彼は私に聞いてこないからね(笑)」と冗談交じりに語り、笑いを誘っている。

そんなマキロイだが、ミュアフィールド・ビレッジではこれまで何度も苦い経験を味わってきた。実に過去13回出場して未勝利。これはマキロイのキャリアにおいて、最も多く出場しながら勝てていない「鬼門」の大会なのだ。

画像: 喉から手が出るほど欲しいタイトルでもある「メモリアルトーナメント by ワークデー」にローリー・マキロイはどう挑む!?(写真は26年トゥルーイスト選手権、撮影/岩本芳弘)

喉から手が出るほど欲しいタイトルでもある「メモリアルトーナメント by ワークデー」にローリー・マキロイはどう挑む!?(写真は26年トゥルーイスト選手権、撮影/岩本芳弘)

彼にとって最大の武器である豪快なドライバーショットが、コースのレイアウトによって度々制限され、フラストレーションを溜めることが多かった。事実、2024年以降のシグネチャーイベント(昇格大会)において、マキロイは「SG:オフ・ザ・ティー(ティーショットでの貢献度)」で1ラウンド平均「+0.82」を記録し、ツアー全選手中1位の圧倒的な数字を誇っている。この「最強の武器」をあえて封印しなければならない点に、ミュアフィールド・ビレッジの特異性と彼の葛藤があった。

しかし今回は違う。「規律を徹底して守り、決して攻撃的になりすぎない」という新たな戦略を掲げ、己の感情をコントロールしながら冷静に難コースに挑む決意を固めている。

オフの顔は映画スター? 飾らない素顔と人間的魅力

悲願達成に向けて静かに闘志を燃やすマキロイだが、オフコースではファンを驚かせるポップな話題を提供してくれた。ハリウッド映画への出演だ。

事の発端は、昨年の「ザ・プレーヤーズ選手権」優勝後の記者会見だった。リラックス方法を尋ねられた彼が、「前夜に映画『プラダを着た悪魔』を見て過ごしたんだ」と何気なく発言したことだった。これがデヴィッド・フランケル監督の耳に入り、現在制作が進められている続編へのカメオ出演のオファーが舞い込んだのだ。これには妻のエリカも「絶対にやるべきよ!」と大賛成。多忙なスケジュールの合間を縫って、夫婦揃ってニューヨークでの貴重な撮影を心から楽しんだという。

そしてもう一つ、マキロイの懐の深さと人間性を示す温かいエピソードがある。アダム・スコットが達成した「メジャー100試合連続出場」への熱い言及だ。

マキロイは「ただ100試合に出るだけでも信じられないが、連続というのは本当に驚異的だ」と手放しで最高の賛辞を送る。怪我なくトップレベルの技術を維持することはもちろん、子どもの誕生などプライベートのタイミングが完璧に合致しなければ、絶対に達成できない奇跡的な偉業だからだ。

彼がここまで驚嘆するのには、自身の苦い経験も関係している。マキロイは、2009年の「マスターズ」から26試合連続でメジャー大会に出場していたが、2015年にセントアンドリュース・オールドコースで開催された「全英オープン」を不意の事故で欠場している。大会直前に友人たちと興じたサッカーで、左足首の靭帯を断裂してしまったためだ。

もしこの欠場がなければ、彼は今月の「全米オープン」でメジャー70試合連続出場(2007年のアマチュア時代の全英出場を含めれば計71回目)という大記録に到達しているはずだった。実際には2015年の全英欠場を挟み、今年の「全米プロ」まで再び42試合連続で出場を続けている。記録を途切れさせず継続することがいかに困難であるか、身をもって知るマキロイだからこそ、その言葉には深い実感がこもっているのだ。

同世代の選手の多くがLIVゴルフなど別の道を選んでいった中で、PGAツアーで絶え間ない努力と節制を続けてきたスコットやジャスティン・ローズに対し、マキロイは深い敬意とリスペクトを払っている。

ゴルフへの真摯な姿勢と、仲間へのリスペクト、そして時折見せるお茶目な一面。人間的な魅力に満ち溢れるマキロイが、幾度となく跳ね返されてきたこの地で、今週こそニクラスとの夢の握手を果たすのか。彼のドラマチックな戦いから、ひとときも目が離せない。


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