カリフォルニア州の名門、リビエラ・カントリークラブを舞台に開幕した「全米女子オープン」。世界最高峰の女子ゴルファーたちが集結した今大会の初日は、海沿い特有の風と硬いグリーンが選手たちを容赦なく苦しめ、アンダーパーで回ったのは全体で28人しかいない過酷な初日となった。しかし、そのサバイバルにおいて5人の日本勢がアンダーパーに食い込んでいる。渋野日向子が日本人トップの3位タイスタートを切ったのは既報の通りだが、パワーだけではねじ伏せられない難コースで光ったのは、悲願のメジャータイトルを狙う畑岡奈紗の「極限の集中力」と、古江彩佳、吉田優利らが見せた「クレバーな頭脳戦」だった。重圧と自然の脅威に立ち向かう、日本のヒロインたちの初日を紐解く。

メジャーの重圧と「震える手」。畑岡奈紗が極度の緊張を力に変えた好発進

悲願のメジャー初制覇に向けて、今年もまた大舞台に立った畑岡奈紗。確かな手応えとともに、初日を2アンダーの8位タイで終えた彼女だが、ティーオフを迎えるまでの道のりは決して平坦ではなかった。

画像: 悲願のメジャー初制覇へ、好調なスタートを切った畑岡奈紗(写真/USGA)

悲願のメジャー初制覇へ、好調なスタートを切った畑岡奈紗(写真/USGA)

世界最高峰の舞台が放つ独特の雰囲気は、幾多の修羅場を潜り抜けてきた彼女でさえも飲み込もうとする。ラウンド後、彼女はスタート前には「少し手が震えていた」という、トッププロらしからぬ極度の緊張状態にあったことを赤裸々に告白した。

しかし、ここからがメジャーの頂点を狙う彼女の真骨頂である。震えるほどに高まった重圧を前にして、彼女は決して萎縮しなかった。そのプレッシャーを自らの内へと取り込み、「いい集中に変えられた」のである。恐怖を闘志へと変換するこの精神的なタフさこそが、激しいスコアの変動が起きやすいメジャー大会において、彼女が上位に踏みとどまれる最大の理由だ。

極限の集中力は、彼女の強みであるショットメーカーとしての精度をさらに研ぎ澄ませた。畑岡は初日を振り返り、「ショットが割とチャンスについていたほうかなと思うので、そこが良かった」と語っている。

事実、この日のパーオン率は14/18(78%)で全体2位タイ。さらにグリーンを狙うショットの貢献度を示す「SG:アプローチ」も+1.8と、アイアンショットのキレがデータにも明確に表れている。今大会は「パー71」であるため、3つあるパー5で確実にスコアを伸ばすという明確なマネジメントを掲げており、出だしの1番と後半の11番のパー5でしっかりとバーディを奪う冷静なコース攻略が光った。

難攻不落のリビエラで輝く「日本の頭脳戦」。古江彩佳&吉田優利の完璧なマネジメント

メジャーの過酷なセッティングに対し、持ち前の「頭脳戦」で挑み、見事な結果を出した若き実力者たちもいる。

1アンダーの14位タイにつけた古江彩佳は、名門リビエラを「頭の使うコース」と表現し、そこを落ち着いて集中してラウンドできたと自身のマネジメント力を高く評価した。特に彼女が警戒しているのが、西海岸特有の不規則な転がりを見せるポアナ芝(ポアナグリーン)のショートパットである。 一瞬の気の緩みが命取りになるグリーン上において、ラインとタッチを慎重に読み切った。その結果、パット数はわずか26(全体6位タイ)、パットの貢献度を示す「SG: パッティング」に至っては+3.33で全体6位という素晴らしい数字を叩き出し、クレバーな頭脳戦が数字に直結していることを証明した。さらに「まだショットでたまに曲げてしまうことがあるので、曲がり幅を抑えたショットができるようにしたい」と、ミスをした場合のリスクを最小限に抑えるリスク管理の徹底も誓っている。

画像: グリーン上は好調! ドライバーのフェアウェイキープ率を上げて最上段を目指す吉田優利(写真/USGA)

グリーン上は好調! ドライバーのフェアウェイキープ率を上げて最上段を目指す吉田優利(写真/USGA)

同じく1アンダーの14位タイ発進となった吉田優利も、自身が立てた戦略の遂行に力強い手応えを感じている。ショットの精度に加え、「パッティングの距離感が抜群に合っていた」という言葉通り、彼女もパット数26(全体6位タイ)、「SG: パッティング」は+2.54(全体8位)を記録。グリーン上での圧倒的な安定感を見せつけた。

「今日はほぼパーフェクトと言ってもいいんじゃないかなと思うくらい、良く回れた」と充実感に満ちた表情で語る一方で、「ラフにドライバーが少し入っていたので、そこを14分の14でフェアウェイヒットできるように修正したい」と、全ホールでのフェアウェイキープという極めて高い精度を自らに課している。

2日目、自然の脅威を味方につけるメンタリティ

彼女たちが迎える2日目の午後は、さらなる試練が予想されている。大会の気象予報データによると、金曜日の午後は風速が上がり、最大で16〜24mph(秒速約7〜10メートル)の突風が吹くタフなコンディションとなる見込みだ。

画像: 2日目は今日以上の風が吹く予報で冷静な畑岡、前向きな吉田がどう攻略するのか注目(写真/USGA)

2日目は今日以上の風が吹く予報で冷静な畑岡、前向きな吉田がどう攻略するのか注目(写真/USGA)

午後スタートの畑岡は、「海風で少し重く感じる」「海に向かって打つ方はアゲインストが強くなる」と冷静に分析し、縦距離をしっかり合わせるという次なる戦略的思考をすでに整えている。

さらに頼もしいのは、吉田がこの強風予想に対して「風に助けてもらいながら頑張りたい」と前向きに捉えていることだ。強風を恐れるのではなく、自らのショットの力学に組み込み、味方につけようというポジティブなメンタリティ。これこそが、メジャーの大舞台で躍動するための欠かせない要素である。

パワー全盛の現代ゴルフにおいて、緻密なマネジメントと揺るぎない精神力で世界に立ち向かう日本のヒロインたち。難攻不落のリビエラで繰り広げられる彼女たちの「頭脳戦」は、今大会の最もエキサイティングな見どころの一つとなっている。

大舞台に強い渋野日向子は3位タイ発進!


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