
プロ2年目でツアー初優勝を飾った吉田鈴。「思ったよりも早かった。(「全米女子オープン」が開催しているタイミングで)チャンスを掴めたのはすごい収穫」(吉田)
躍進を支えたパターと、追いつかれても揺るがないメンタル

15位タイでフィニッシュした「ドコモビジネスレディス」でパターを替えて以降、好調をキープ
吉田の強さが際立ったのは、猛チャージを見せた2日目だ。その躍進の裏には、パターの変更があった。
「今年のNTTドコモで初めてパターを替えて、そこからすごく良いです」(吉田・以下同)
その言葉通り、グリーン上での高い安定感が今大会の快進撃を力強く支えていた。
3打差のアドバンテージを持ってスタートした最終日。一つ前の組で回る木戸愛が、前半を3バーディ・ノーボギーで回る猛追を見せていた。しかし、吉田に焦りはなかった。
「自分が(スコアを)落としてなかったので、周りがどうっていうよりかは、自分が良いプレーさえすれば大丈夫だから、あまり気にしないようにはしてました。気持ちがざわざわしたというのも全然なかったです」

どんな結果でも表情を変えないのは昔からだと話す
その強い精神力を証明したのが、前半の窮地だった。6番(513ヤード・パー5)で痛恨のボギーを叩き一歩後退してしまう。しかし、今年の吉田はここからが違った。直後の7番(165ヤード・パー3)で、すぐさま取り返す起死回生のバウンスバックバーディ。瞬時に重圧を跳ね除けてみせたのだ。
さらに14番(174ヤード・パー3)では、アドレス中にギャラリーのベビーカーが倒れる音が響くアクシデントに見舞われた。それでも「そこでもう一回気持ちを入れ替えた」と動じず、5メートルのパーパットを見事に沈めてピンチを凌いだ。
高速グリーンを凌ぐ吉田鈴の精神力。18番は歓喜のバーディV

緊張感が漂った17番(403ヤード・パー4)
勝負のバックナイン、17番(403ヤード・パー4)で最大の試練が訪れる。しっかり振り切った2打目が風に流され、グリーン右のラフへ。奥には池が控え、硬く速いグリーンが立ちはだかる状況だったが、吉田は冷静なアプローチで最小限のボギーに凌ぎ、首位を死守した。
すでにホールアウトしている2位タイの木戸愛や倉林紅に1打リードで迎えた最終18番(512ヤード・パー5)。第2打はエッジまで211ヤードだったが、「ミスしたらバンカーだったと思うので、そういうことする場面じゃない」と冷静に刻む選択をした。狙い通り3打目を1メートル弱につけ、ウィニングパットを沈めた。

表情を変えなかった吉田だが、ウィニングパットを決めると、このガッツポーズ
普段から「アスリートとして私はあまり一喜一憂したくないし、バーディー決めても普通の顔してるほうが、相手としては気持ち悪いと思うから」と、あえて感情を隠してプレーするスタイルを貫いている吉田。しかし、最後のパットを決めると両手を挙げて満面の笑みでフィニッシュした。
初優勝の瞬間については「思ったより冷静だったなと思ってて。涙は全くなかったです」と振り返り、「だから初優勝だけじゃなくて、もっと勝ちたいっていう思いもあって、そういう風になってるんじゃないかなとは思います」と早くも次なる勝利を見据えた。
自分だけの「ブランド」を確立し、さらなる高みへ

“自分のブランド”を目指して、今後も歩んでいく
プロテストに4度挑戦し、苦労の末に掴んだ栄冠。アマチュア時代からエリートコースを歩んだ姉・優利と比較されることもあったが、「自分の中で姉のコピーはしたくないと思ってて、自分のブランドを確立することが大事だと思っている」と、自ら考え抜くゴルフを徹底してきた。
「1回勝って試したいことがもっと増えた」と語るニューヒロインは、自ら築き上げた確固たるプレースタイルを武器に、年間女王争い、そしてさらなる高みへと駆け上がっていく。
撮影/有原裕晶
