お腹ペコペコのメジャーチャンピオン

今一番食べたい食べ物は「生姜焼き」(撮影/岡沢裕行)
栄冠を勝ち取った直後、今の心境を問われた岩田の口から最初に出てきたのは、至って無邪気な本音だった。
「決まった瞬間は『やっと終わった……』という感じでした。今はもう、本当にお腹が空いています。2024年に優勝した時もお腹が減っていた記憶があります」
フラッシュインタビューでは「緊張で気持ち悪い」と漏らしていた岩田だが、試合中の一番の緊張のピークは、プレーオフ突入直前、正規の18番ホールで迎えたパーパットの瞬間だったと明かす。しかし、そんな極限状態を乗り越えた後の優勝スピーチで飛び出した「毎日が全盛期です」という名言については、「あれは半分ふざけて言っただけなので、あまり気にしないでください(笑)」とシャイな一面を見せて記者席を笑わせた。

あまり表情を変えない岩田だが、話せばウィットに富んだ表現で周囲を和やかにさせる(撮影/岡沢裕行)
その素朴なキャラクターとは裏腹に、自己管理は超一流だ。
コロナ禍以降、大好きなラーメンを週1回までに制限し、お菓子を食べたい衝動を我慢するなど、地道な食事管理を徹底。45歳となった今でも「体の痛いところは全くない。痛かったらゴルフはもうやらない」と言い切る背景には、YouTubeの動画を自ら検索して研究し、お風呂場で行う独自のウォーミングアップや、目的別に細分化された筋力トレーニングを継続しているからにほかならない。
2番ホールで4番アイアンが破損──「もうチャンスはない」からの奇跡

木の根っこからのショットで、アイアンが曲がってしまうアクシデント(撮影/岡沢裕行)
今大会、岩田のバッグには縦の距離感を合わせるために3番ウッド型UTを抜き、あえてロフト違いの「4番アイアン2本」を投入するという強いこだわりが隠されていた。しかし、最終日の序盤、想定外のトラブルが岩田を襲う。
なんと、2番ホールでその生命線である4番アイアンが曲がって壊れてしまったのだ。前半からゴルフの状態が良くない上に、主要ギアの破損というアクシデントも重なり、4番ホールの時点では「今週はもうチャンスがないな」と自暴自棄になりかけていたという。
「前半は本当にひどい内容でした。僕はゴルフの状態が悪いとき、結果ばかり考えてしまってミスを重ねる癖があります。だから『とりあえず今、目の前の1打に集中しよう。これ以上はボギーを打ちたくない』と思ってプレーしていました」
このトラブルをきっかけに、過剰な期待を捨てて「目の前の1打」へと完全に腹を括ったことが、後半のサンデーバックナインにおける神がかり的な4つのバーディ、そして大逆転劇を呼び込むトリガーとなった。
「心の中でめちゃくちゃ応援していた」──若き同組2人への本音

ラウンド中優勝をあきらめていたわけではないが、片岡、出利葉を応援していたという岩田(撮影/岡沢裕行)
最終日最終組で共に回ったのは、首位を走る片岡尚之と出利葉太一郎という勢いのある2人の若手だった。後半、宍戸のプレッシャーに飲まれて崩れていく2人の姿を、岩田は冷徹な勝負師としてではなく、一人の先輩プロとして見つめていた。
「その時はもう、心の中で2人をめちゃくちゃ応援していました。尚之が1番でOBを打ったときは『助かって』と思っていましたし、出利葉くんは9番のセカンドショットを曲げて球が消えてしまって……。とにかく、お互いに頑張ろうと応援する気持ちでした」
ライバルのミスを単なる好機として喜ぶのではなく、過酷な宍戸と戦う「戦友」としてリスペクトし、応援する。最終組の引き締まった、かつ温かい空気感は、この岩田の密かな眼差しが作り出していたものだった。
5年シード獲得も尽きぬ探求心──「もっと飛ばしたい、上手くなりたい」
45歳とは思えない迫力のあるスウィングは、20代の男子プロと全く引けを取らない飛距離を誇る(撮影/岡沢裕行)
今回の優勝により、5年間の長期シードと、秋のPGAツアー「ベイカレントクラシック by レクサス」への出場権を手にした岩田。
「普段はなかなか会えない海外拠点の選手たちに、久しぶりに会えるのがとても楽しみ」と目を輝かせる。また、昨シーズン経験した欧州(DPワールド)ツアーへの想いも未だ色褪せていない。
「海外といえばPGAツアーばかりと思っていましたが、去年ヨーロッパの試合に出させてもらった時はすごく楽しかった。あの道へも、また行きたいなという気持ちはあります」と話す。
50代も見えてくる今後のレギュラーツアーでの目標を問われると、岩田は力強くこう締めくくった。
「ドライバーの飛距離を伸ばしたいですし、もっとゴルフが上手くなりたい。その気持ちは変わりません」
日々全盛期を更新し続けるベテランの進化は、まだまだ止まる気配がない。

