縁あって、今年から未来富山高校女子ゴルフ部の初代監督に就任させていただきました、中村修です。すでに活動はスタートしており、富山と東京を往復する慌ただしくも熱い日々がはじまっています。
これまでの私は、ツアーを目指す自身のプロ生活に区切りをつけた後、ゴルフメディアでの取材経験などを生かし、プロコーチとして桑木志帆選手の年間3勝などをサポートしてきました。トッププロの指導を行ってきた私が、なぜ縁もゆかりもない富山の、それも「できたばかりの高校のゴルフ部監督」を引き受けたのか。
そこには、この未来富山高校が掲げる、あまりにも型破りで、そして魅力的な「挑戦」があったからです。
才能の流出を防げ。富山に誕生した「通信制×労働型」ゴルフ部
現状の高校ゴルフ界は、一部の強豪校に強い選手が集まる傾向が年々高まっています。強豪校は練習環境も指導レベルも高く、周りにいる選手の実力も屈指。才能が伸びる環境が完璧に整っています。
一方、富山県内には強豪と呼べるゴルフ部がありません。だからといって有望なジュニアゴルファーがいないわけではなく、才能ある選手たちはみな、県外の強豪校の門を叩くのが自然な流れになっています。つまり、地元から才能が流出しているのです。富山県は森口祐子さんというレジェンドを輩出した地。「第二の森口祐子を」と望む声は、富山にいるとひしひしと感じます。
「未来富山高校野球部が2025年夏に甲子園に出場したとき、地元がものすごく盛り上がったんです。部活動を通じて地元を活性化できるということに大きな可能性を感じ、ゴルフ部にもチャレンジしようと思ったのが創部のきっかけです」
学校関係者の福俣慎一さんはそう語ります。しかし、強豪校と同じことをやっていては選手は集まりません。そこで未来富山高校が打ち出したのが「学費・寮費の免除」と「ゴルフ場での業務」を掛け合わせたハイブリッド型の育成システムでした。

未来富山高校女子ゴルフ部の監督に就任した中村修(左)と部員の杉崎希歩
遠征費も一部負担されるため、実質、家庭の持ち出しはほぼゼロでゴルフに没頭できます。その代わり、部員は拠点となる立山カントリークラブ(立山町)で、バッグの積み下ろしや繁忙期の食堂の手伝い、目土などの実務作業を行います。さらに、趣旨に賛同してくださる会員様との同伴プレーで社会性も学ぶ。まさに、研修生と高校生をミックスしたような前代未聞の環境です。
「急遽協力いただけるコースを探し、宿舎や制服を手配し……4月に一期生を無事迎えられたときは『ここからがスタートだ』と気が引き締まると同時に、ホッとしたのも事実です」(福俣さん)
周囲の大人たちが奔走し、なんとか立ち上がった手作りの舞台。そこに、素晴らしい才能を持った「たった1人の新入部員」がやってきました。
地元出身の少女の決断

未来富山高校女子ゴルフ部はたった一人の部員からスタートした
彼女の名前は、杉崎希歩。栄えある未来富山の「一期生」であり、現状、たった1人の女子ゴルフ部員です。
実は彼女、北陸圏ではトップクラスの実力を持つトップジュニア。本来なら強豪校のエリートコースを進んでもおかしくない才能の持ち主です。
しかし、同世代のライバルたちが最新設備と整った環境の強豪校へ進むなか、彼女が選んだのは、できたばかりの通信制高校で、メンバーさんのバッグを運び、目土作業で汗を流しながら上を目指す「泥臭い道」でした。
トッププロを指導してきた私の目に、たった1人でクラブを振る彼女の姿はどう映っているのか。そして、最新鋭のデータ計測器ではなく、ゴルフ場での「裏方労働」が、彼女のゴルフにどのような化学反応を起こすのか。
キャッチコピーは「富山から、世界へ。」。 高校ゴルフ界の常識に挑む、私たち師弟の挑戦にどうかご期待ください。次回は、たった1人の部員・杉崎希歩の素顔と、彼女に与えた「最初の課題」についてお話しします。
