畑岡奈紗や岩井姉妹(明愛・千怜)をはじめとする日本勢も、リビエラCCでの全米女子オープンの過酷な死闘を終え、次なる戦いへと気持ちを切り替えている。そんな中、先週のメジャーという極限の舞台で劇的な優勝を飾った絶対女王ネリー・コルダの姿は、今週の「ダウ選手権(ミシガン州)」の会場にあった。メジャーの熱狂からわずか数日。しかし、チーム戦で行われる今大会の事前会見に登場した世界ランク1位の表情は、先週とはまるで別人のような、驚くべき“オフモード”全開だった。

涙の全米制覇から一転。「練習は5ホールだけ(笑)」

画像: 大会中にグリップの握りを変更するという荒業をするほど不調だったが見事メジャー2連勝を果たしたネリー・コルダ

大会中にグリップの握りを変更するという荒業をするほど不調だったが見事メジャー2連勝を果たしたネリー・コルダ

コルダにとって先週の全米女子オープン制覇は、歴史的な偉業だった。現役の世界ランク1位として全米女子オープンを制したのは、アニカ・ソレンスタム、パク・インビに次ぐ史上3人目の快挙。さらに、同シーズンにシェブロン選手権と全米女子オープンの「最初のメジャー2大会」を制したのは、2013年以来のことだ。

しかし、その栄光の裏で彼女は極限状態にあった。ティーショットの不調から「自分のB級のプレーすらできていない」と頭を抱え、メジャー大会の真っ只中にグリップの握りを変更するという禁じ手にまで打って出た。そして死闘の末にトロフィーを掲げ、グリーン上で歓喜の涙を流したのである。

ところが今週、親友であるオリビア・カウアンとペアを組んで挑むダウ選手権の会見では、打って変わってリラックスした笑顔を弾けさせた。コースでの調整状況を問われると、2人は顔を見合わせて「練習は5ホールしかやってないわ(笑)」とあっけらかんと答えた。

コース戦略についても、「ゴルフの話はほとんどしていない。チーム名の発表に向けたSNSのコンテンツ戦略や、18番ホールの入場曲(ウォークアップ・ソング)をどうするかで頭がいっぱいだった」と語り、張り詰めていたメジャーの緊張感から見事なまでの切り替えを見せている。

【動画】ネリー・コルダが頭を悩ませたという“SNSコンテンツ”はこちら【LPGA公式インスタグラム】

チーム「キューティ・ブロンド」結成と、親友との絆

今週、彼女たちが掲げたチーム名は映画のタイトルから取った「Legally Blond(キューティ・ブロンド)」。それに合わせて、ウェアも全身ピンクで統一するという。普段は洗練されたスポーティなウェアが多いコルダだが、「私に全身ピンクを着させることができるのは、世界中で彼女(オリビア)だけよ」と笑い、2人の仲の良さをうかがわせた。

2人は数年前のスペインでの大会で出会って意気投合し、特にアジアでのツアー中、「大のコーヒー好きという共通点から、一緒に最高のコーヒースポットとクロワッサンを探し回った」ことで絆を深めたとオリビアが語っている。こうした気心の知れた親友との時間が、女王を完全にオフモードへと導いているのだ。

さらに、交互にボールを打つフォアサム形式でのコース戦略について問われると、驚きの答えが返ってきた。

「キャディのジェイがコースを分析して、どちらがティーショットを多く打つべきか、どちらが長い距離を残すべきかを決めてくれる。私たちは彼が与えてくれる情報に従うだけよ」

先週の全米女子オープンで「数え切れないほどの励ましをくれた」と涙ながらに感謝した相棒のジェイに、今週は戦略を一存しているのだ。これぞ究極の信頼関係であり、究極のオフモードと言えるだろう。

メジャー連戦を乗り切る「究極のバッテリー充電法」と魔法のルール

しかし、もちろんただ遊んでいるわけではない。この極端なまでの「オフモード」への切り替えこそが、絶対女王の強さを支える秘密なのだ。女子ツアーは全米女子オープンを皮切りに、アムンディ・エビアン選手権、AIG女子オープン(全英)と、この先も息つく暇なく過酷なメジャー大会が続く。コルダは語る。

「メジャーの連戦が続くと、AIGの頃には精神的に燃え尽きてしまう。だからこそ、こうした大会で笑顔を増やし、ゴルフを楽しむことで、空っぽになったバッテリーを充電できるの」

ダウ選手権というチーム戦の舞台を、彼女は単なる息抜きではなく、過酷なシーズンを戦い抜くための「究極のメンタル・リセットの場」として戦略的に活用しているのだ。

今大会は18番ホールがパー3でフィニッシュとなっており、選手が自分たちで選んだ「ウォークアップ・ソング」を流しながらグリーンに向かい、観客がそれを取り囲むという特有のお祭り感がある。そんな熱狂の中で、今週のチームの絶対的なルールは「絶対に『ごめんね』とは言わないこと」だという。

実はこの「ごめんね禁止ルール」は、他チームの選手(ガーリーン・カウルら)も目標として掲げており、個人競技であるゴルフにおいて「チーム戦ならではのメンタルケア」として選手間で共通認識になっている点が非常に興味深い。

メジャー通算4勝、今季すでに4勝を挙げ、圧倒的な無双状態にある女王ネリー・コルダ。彼女の強さの根底には、完璧なスウィングだけでなく、極限の「オン」と究極の「オフ」を自在に行き来する一流のメンタル・マネジメント術が隠されている。全身ピンクに身を包んだ女王は、親友との笑い声とともに次なるメジャーへのエネルギーを蓄えていく。

写真/USGA


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