ミシガン州で開催される唯一のチーム戦「ダウ選手権」。畑岡奈紗とコ・ジンヨン組、西郷真央とミランダ・ワン組、岩井明愛・千怜の双子ペア、古江彩佳と西村優菜のミレニアム世代ペア、勝みなみと渋野日向子の黄金世代ペア、原英莉花と櫻井心那のルーキーペア、そして馬場咲希と吉田優利など、日本勢も多数のペアを組んで参戦する華やかな舞台だ。そんな中、大会を誰よりも心待ちにし、純粋に楽しんでいるペアがいる。ソルハイムカップで苦楽を共にしてきた、レキシー・トンプソンとミーガン・カンの親友コンビだ。プレースタイルも体格も全く異なる二人が織りなす絶妙な関係性は、熾烈な個人戦が続くツアーにおいて、一服の清涼剤のような温かい空気を生み出している。

チーム名「ビギー・スモールズ(大小)」と自虐ジョーク

圧倒的な飛距離を誇るレキシーと、正確性で勝負するミーガン。並んで歩けば身長差も際立つこの凸凹コンビのチーム名は、昨年から変わらず「Biggie Smalls(ビギー・スモールズ=大小)」である。

事前会見で「お互いのゲームがどう補完し合っているか?」と問われると、ミーガンはニヤリと笑い、自虐交じりのジョークで会場を沸かせた。

「ここ数試合、私はなぜかアプローチを完璧な“レキシーの距離(Lexi range)”に残しちゃってるの。つまり、ピンまで15から20フィート(約4.5〜6メートル)の微妙な距離を残してしまうってこと。でも今週は交互に打つルールだから、『ああ、このパットは全部レキシーが沈めてくれるから最高だわ!』ってね(笑)」

さらにミーガンは続ける。

「先週の全米女子オープンで予選落ちした時は本当に悔しかったけれど、すぐに気持ちを切り替えたわ。『心配ない、来週はレキシーがそのパットを全部決めてくれるから!』ってね。代わりばんこに打つオルタネート方式はストレスも多いけれど、彼女みたいなパートナーがいれば最高よ」

お互いの特徴を知り尽くしているからこそ言える軽快な掛け合いに、二人の深い信頼関係が透けて見える。

入場曲は「DMで募集」!? 軽快なやり取りに包まれるオフモード

今大会は、18番ホールで選手が自分たちで選んだ入場曲(ウォークアップ・ソング)を流しながらグリーンに向かう特有の演出がある。どんな曲を選んだのかと問われると、二人のオフモードな空気感がさらに弾けた。

「実はまだ決めていないの」と明かしたミーガンは、「曲名とか全然覚えられないから、ファンの皆さん、遠慮なく私たちにDMでメッセージしてね!」と会見の場で呼びかけた。するとすかさずレキシーが、「いや、それ(DM募集)は撤回したほうがいいかもよ」と笑いながらツッコミを入れる一幕も。緊張感に包まれた普段のトーナメントでは決して見られない、最高のリラックス状態だ。

しかし、ただ仲が良いだけではない。ミーガンはアスリートとしての葛藤も口にしている。

「楽しむことと、どうしても勝ちたいという気持ちのバランスを取るのは難しいわ。でも、ゴルフという孤独なスポーツにおいて、頼れる誰かが隣にいてくれるのは本当にポジティブになれるの」

「勝ちへの執念」と「楽しさ」の絶妙なバランスこそが、このペアの最大の武器なのだ。

12歳からの重圧と、親友がもたらす「心の平和」

このチーム戦の和やかな雰囲気は、レキシーにとって特別な意味を持っている。彼女はわずか12歳で全米女子オープンに最年少出場を果たし、常に世間からの高い期待と強烈なプレッシャーの矢面に立たされてきた。

「12歳の頃から常にスポットライトを浴び続けていれば、周囲からの期待が常について回るのは分かっていたわ。でも、一番大切なのは自分の心の声に耳を傾けること。私たちはいつも即座に結果を求めてしまうけれど、時には自分自身に猶予を与えて、楽にさせてあげることが大切なの」

個人戦という孤独な戦いの中で、自分自身を追い込み続けてきたレキシー。だからこそ、このダウ選手権でミーガンとペアを組み、ショットの合間にたくさん笑い合える時間は、「プレッシャーが少なく、個人戦とは違う本当に素晴らしい気分転換」になっているのだという。盟友の前で見せるレキシーの表情は、天才少女と呼ばれた頃の無邪気さを取り戻したかのように自然体だ。

共通の絆は「熱血な父親」、そして世界への影響力

二人がソルハイムカップやこのダブルス戦を通じてこれほどまでに深く結ばれた背景には、お互いのゴルフ人生において「熱血な父親」の存在が非常に大きいという共通点がある。幼い頃からコーチとして、時にはキャディとして二人三脚で歩んできた父親同士の絆も深く、娘たちもまた、その共通の境遇を通じて深く共鳴し合っているのだ。

会見の途中、直後に控える父の日に話題が及ぶと、二人はまるで打ち合わせたかのように声を揃え、笑顔で語りかけた。

「お父さん、愛しているよ! 少し早いけれど、父の日おめでとう!」

長年プレッシャーと闘ってきたレキシーは今、ゴルフの勝ち負け以上に大切にしている確固たる思いがある。

「私たちは一日中、この小さな白いボールを追いかけているだけかもしれない。でも、それよりも(子供たちへの支援など)もっと大きなインパクトを世界に与えることこそが重要なの」

画像: ミーガン・カン(左)とレキシー・トンプソン(右)は昨年同様、「ビギー・スモールズ(大小)」のチーム名でダウ選手権に挑む(写真は25年ダウ選手権)

ミーガン・カン(左)とレキシー・トンプソン(右)は昨年同様、「ビギー・スモールズ(大小)」のチーム名でダウ選手権に挑む(写真は25年ダウ選手権)

プレッシャーという重い鎧を脱ぎ捨て、心からゴルフを楽しむレキシー・トンプソンとミーガン・カン。凸凹コンビが魅せる特別な4日間の「心の平和」は、過酷なツアーを戦うすべての選手たちに、ゴルフというスポーツが持つ本来の温かさを教えてくれる。

注目組のスタート時間

【午前組】
7:26 AM (1番T):西郷真央 / ミランダ・ワン 組
7:26 AM (10番T):馬場咲希 / 吉田優利 組
7:59 AM (1番T):レキシー・トンプソン / ミーガン・カン 組 & リディア・コ / ダニエル・カン 組
8:10 AM (10番T):原英莉花 / 櫻井心那 組

【午後組】
12:03 PM (1番T):岩井明愛 / 岩井千怜 組& ネリー・コルダ / オリビア・カウアン 組
12:14 PM (1番T):畑岡奈紗 / コ・ジンヨン 組
12:36 PM (1番T):古江彩佳 / 西村優菜 組
12:36 PM (10番T):勝みなみ / 渋野日向子 組

写真/Getty Images


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